からだを動かす/武道 2018.2.28

脳に“刺激”を与えて集中力をキープする『東京空手倶楽部』のトレーニング! 瀧川英治先生インタビュー

編集部
脳に“刺激”を与えて集中力をキープする『東京空手倶楽部』のトレーニング! 瀧川英治先生インタビュー

2020年の東京オリンピックより正式種目となった空手。オリンピック公式HPでは、「流れるような美しい演武。電光石火の攻撃。静と動を感じる格闘技。」と紹介されています。全国各地の空手キッズたちも、稽古に力が入っているに違いありません。

そこで今回は、全てのコースに脳科学理論を取り入れ、画期的な練習メニューを提供している『東京空手倶楽部』代表の瀧川英治先生に、お話をうかがいました。

“ゴールデンエイジ”の時期に行う効果的なトレーニング

——本日はよろしくお願いいたします。脳科学を取り入れた空手教室ということですが、具体的にどんな練習をしているのでしょう?

瀧川先生:
その前に、運動神経ってそもそもなんだと思います? よく「運動神経がいいね」と言ったりしますけど、それは神経伝達速度が速いということではないでしょうか。中枢神経と末梢神経が刺激を双方でやり取りする速さということです。

その能力が高い人は足が速いんです。体を速く動かせるし、思ったことをすぐに手先足先で表せるんですよね。そして一定の範囲内で刺激に変化をつけながら、その伝達行為が行われれば行われるほど神経線維が増えて、運動神経が発達するのだと思います。

ちょっとゲームをしましょうか。ジャンケンをして勝った人が出した手を言葉にしてください。自分がチョキで負けたとしても、勝った人の手である「グー」と言ってくださいね。あいこのときは、両手で口元をおさえてくださいね。せーの、ジャンケンポン!(ジャンケンゲームを繰り返す)

——まだ3回しかジャンケンをしていないのに体温が上がってきました。

瀧川先生:
ははは、脳がウォーミングアップをしてるんですよ。脳は先ほどお話しした神経線維の塊ですからね。当会では神経線維の中で伝達物質を双方向に行き来させることがウォーミングアップのひとつと考えていますので、瞬時に判断を下しながら体を動かす「ジャンケン」と、空手技である「突き」「蹴り」「受け」の動作を組み合わせて行っています

このウォーミングアップで子どもたちは、頭をフル回転させながら体を動かします。でもね、できなくてもいいんです。できなくても、「頭を使った」ということが脳を刺激することになりますからね。これを幼稚園~小学校くらいまでのいわゆる“ゴールデンエイジ”と言われる時期に取り入れることで、ものすごく効果が上がるんです

それに空手は、動きひとつにしても両手両足を全部使うスポーツです。その動きに合わせて声も出します。だから、空手そのものが脳を刺激する身体活動と考えることもできるでしょう。

その効果をどれだけ引き出せるかは、指導者の持つ知識の運用しだいかもしれません。なにより大切なコツは常に新しい刺激を与え続けること、簡単に言うと、子どもたちを飽きさせず、集中させ続けるということです。

私は子どもたちの健全な発育のため、体を使った遊びやスポーツ競技をとおして、脳の刺激を得るということが大切だと思っています。それなのに今の時代は、走ったり飛び跳ねたりする場所が限られていますよね。だから私が出前持ちさんのように、さまざまな施設で東京空手倶楽部スタイルの空手を教えてまわっているんです。

「東京空手倶楽部」で子どもたちに空手を教える瀧川英治先生

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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伸びる子は、相手の言葉も自分自身も「信じられる」

——瀧川先生は指導の道に入られてどのくらいですか?

瀧川先生:
大学を卒業して2、3年してからだから……もう30年ですね。

——昔の子どもと今の子どもたちを比べて、なにか変化はありますか?

瀧川先生:
私たちが育ったころは高度成長期という特殊な時期だったこともあり、なんの裏付けもなく大きな希望を持つことができたように記憶しています。だけど、今の子たちは「だいたいここら辺だよね」と育てられている気がしますね。もしかしたら保護者の方自身が、将来への不安を打ち消すことができないために、「〇〇しなければ~~になりませんよ」みたいに言ってしまっているのかもしれません。

子どもの本質は変わらないのに、世の中や大人が諦めている気がしますね。今は「努力してもダメなものはダメ」なんていう情報が色んなところから入ってきてしまいますし。

だからこそ、トップアスリートレベルのオリンピック競技を観るべきだと思います。私たちの時代には想像もできなかった“ウルトラC”をバンバン連発してるし、まだまだ進化している。それを観ながら教えてあげるべきなんです。「人間が想像できることは、いつか必ず実現するんだよ」と。それを信じられる子は、勉強でも空手でもポーンと伸びていきますよ。

——勉強もですか?

瀧川先生:
そう、勉強も。当会には超名門大学の学生がたくさん会員でいてくれます。現役生だったり、卒業生だったり。

東大に空手を教えに行ったこともありますが、東大生って、気持ちがいいくらい頭が良いんです。私が一言ったら十は理解してくれるので、言葉をかみ砕かなくていい分、教えるのが本当に楽でしたね。

だから、子どもと接しているとき、なんとなく「この子は東大生っぽいな」とか「この子は東大に行けるんじゃないか?」とか感じるときがあるんです。そういう子に「文武両道めざして東大で空手をやったら?」なんて言ってみると、もうね、本人がとにかくやる気になっちゃって、どんどん勉強を始めるんです(笑)

これはちょっと極端な例ですが、こういう、相手の言葉も自分自身も「信じられる」というのも、ひとつの力ですよね。怖いくらいに心が素直なんです。

でもね、子どもってみんな基本的に素直なんですよ。だから「素直なことって気持ちがいいんだ」ということを教えてあげて、本来の素直な姿を引き出してあげるのが、僕たち大人の仕事なんですよね。

——そのとおりだと思います。空手が伸びる子もやはりわかるものですか?

瀧川先生:
それはもちろんわかりますよ、プロですから。伸びる子はね、勝手に伸びていきますよ。一生懸命練習して、どんどん伸びていきます。100人いたら2、3人はいますよ。やらせたらすぐにできちゃう子。そんな子を伸ばすのは手取り足取り教えることじゃなく、伸びる環境作りをしてあげることなんです。

だけど私は、チャンピオンになることが大切だとは思っていません。空手の場合は、昇級審査、昇段審査っていうのがあって、そこを目指して頑張ることによって、様々なことに気づいて、自分の経験値が増えていくんです。だから(一部を除いて)そこに重きを置いてほしいと思っています。そういう指導をしているつもりです。

「東京空手倶楽部」での指導について語る瀧川英治先生

「学ぶ」は「真似ぶ」、集中力を研ぎ澄ませ!

——そうなんですね。瀧川先生のお稽古は何歳から参加できますか?

瀧川先生:
もうすぐ3歳って子もいますね。そんな小さい子でも空手はできますよ! コツはね、無理にやらせようとしないことなんです。子どもが自発的に学ぼうとする、いわゆる「真似ぼう」とするところ、そこだけにフォーカスすればいいんです

だからね、うちは教えません!(笑)。

——えー! 教えないんですか?

瀧川先生:
そうです、一方的には教えません。たとえば、空手には「形」があるんですけど、その「形」をまず(東京空手倶楽部制作の)DVDで覚えてこさせるんです。「次の昇級審査はこれだから、順番だけでも覚えてきなさい」と。そうするとね、覚えてくる子と覚えてこない子に分かれますよね。

でね、覚えてこない子は、次の「形」の練習でやることがわからないんです。そしてしばらく様子を見てると、「教えてほしいな~」って顔をしだすんですよね。友だちの「形」をチラチラ見たりして。

そのタイミングで「形」を見せてあげるんです。そうすると、今度はかぶりつくように「真似ぼう」としますよ。一生懸命練習しますね。

子どもにもよるけれど、今の子は教えられ慣れちゃってるんですよ。お腹いっぱいなのに、まだ食べろ食べろと言われているのと同じじゃないですか? 僕も最初は手取り足取り教えてたんですけど、帯の結び方すら覚えようとしないから……教えないことにしたの。お母さんたちのギラギラした視線に困るときもありますけど。

——空手に限らずですが、保護者がお稽古の内容に口を出すことについて、どう思いますか?

瀧川先生:
もちろん子どもの心内には親に認められたいという欲求がありますから、親が見ていてくれるのは嬉しいはずなんです。でも上手にできる子はいいのですが、そのとき上手にできなかった子の親は、子どもができなかったことに対してストレスをためる。それで家に帰ってから子どもを怒るんですよ。それでは空手が嫌いになってしまいます。

だから僕は、いつも「自分がやってごらん」って言います。空手がどれだけ難しいか、お母さん自身がやってみたらわかるはずだからと。でもやったらやったでハマって、黒帯になったお母さんもいますけどね(笑)。

「東京空手倶楽部」で礼をする一同

——親子空手のクラスもありますよね。

瀧川先生:
親子空手のコンセプトは都心のキャッチボールなんですよ。親子のコミュニケーションを取るのに素晴らしい機会だと思いませんか?

たとえば、キックミットをお母さんに持ってもらって、子どもに蹴らせる。(お母さんが思うより)意外と力強いはずですよ。あとは逆に、お父さんにキックミットを蹴ってもらったり。お父さんのキックが少々下手くそでも、「ドーン!」ってなる。子どもはお父さんの強さがわかります。そしてお互いに初心者だからこそ、昇級審査に向けて向上心を共有できる。子どもは親をますます身近な存在に感じますよね。

それから、保護者の方に当会の空手を理解してもらえたこともよかったと思っています。荒事はほとんどないんですよと伝えたかったんです。

僕も3人の子どもの親ですから、親がどれだけ自分の子どもが可愛いか、よくわかります。宝物以上じゃないですか、子どもって。だから、そんな可愛い子どもたちに怪我なんてさせられないですよ。

私の自慢は、今まで子どもたちに一度も怪我をさせたことがないということ。だって、自分の子どもが怪我なんかしたらいやじゃないですか! 顔にかすり傷でもついたら跡が残らないか本当に不安になります(笑)。

——子どもたちへの愛が溢れていますね。最後に子どもたちが空手をとおして学ぶことを教えていただけますか?

瀧川先生:
当会の場合は、武道が持つ「厳かさ」を子どもなりに感じて、大切にしようという気持ちを学んでもらえることだと思ってます。

稽古の最初に復唱させる、「礼は未然の前に禁じ、法は已然の後に施す」という言葉があるんですけど、それを意味もわからないけど復唱して、いかにも「僕は空手をやってるんだ!」「まじめな気持ちで正座をして礼もしたんだ!」「礼を尽くして相手を大切に思うことを学んでいるんだ」って感じてほしいです。「なんだかわからないけど、最後は気持ちが落ち着くんだ!」とか、そういう気持ちを感じてもらうのが、うちの空手の良さだと思っているし、そういう気持ちを教えたいです。

実は子どもたちに関して、空手が上手になってほしいというのは、ほとんど思っていなくて……。昇級審査も、合格すればいい、というわけではないんです。それよりも、「自分は修行を乗り越えたんだ、それはすごいことなんだ!」ということを、子どもなりに感じてほしいんですよね

そういう自分自身に対し「厳か」な気持ちを身につけられたら一生の宝物になりますし、「集中力」「心の整え方」も体で学ぶことができるのではないでしょうか。

【プロフィール】
瀧川英治(たきがわ・えいじ)
大阪体育大学空手道部総監督、深大寺(調布市)空手の会師範など幅広い年齢層に日常生活を豊かにする空手の普及につとめている。日本体育協会公認空手道上級コーチ。

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