「ちょっとしたことですぐに泣いてしまう」「ほかの子に比べて傷つきやすく、落ち込むことが多い」と、子どもの繊細さにお悩みではありませんか?
もしかしたら、お子さんは「HSC(ひといちばい敏感な子)」かもしれません。簡単なチェックリストを用意したので、対処法も含めてぜひ参考にしてください。
HSCの子どもは毎日しんどい?
最近よく耳にする「繊細さん」、いわゆる「HSP(Highly Sensitive Person)」とは、感受性がきわめて強く敏感な気質をもった人のこと。HSPの人は、学校生活や社会生活で苦労することが多く、生きづらさを感じる人も少なくないそうです。
そして子どもたちのなかにも、ひといちばい敏感な子(Highly Sensitive Child=HSC)は存在します。しかもその割合は5人に1人と非常に多く、「もしかしてうちの子はHSCかも……」と心配する親御さんもたくさんいるようです。
この概念を見いだしたのは、アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士。HSCは生まれついた気質であり、決して性格の問題ではないこと、脳の神経システムに違いがあるということなどもわかっており、やみくもに「気にしすぎじゃない?」「気のせいだよ」と励ますことは逆効果になってしまうことも。
特にまだ小さい子どもの場合、敏感に反応する五感の不快さをうまく言葉で表現できないことが多いので、大人よりも何倍も「しんどい」と感じているはずです。
お子さんはHSC? この質問で診断
以下は、アーロン博士らが開発したチェックリストをもとに幼児用に作成された質問項目です。質問を読んでYesと答えた数をカウントしましょう。子ども向けに編集部がアレンジしているので、気軽にお試しくださいね。
- 【すぐにビクッとする?】:突然声をかけられたり、人がふいに現れたりするとすぐに驚く
- 【サプライズをしてあげてもあまり喜ぶことがない?】:喜ぶと思ってサプライズを仕掛けても反応が薄い
- 【相手の気持ちをよく察する?】:親のちょっとした表情の変化を見て「悲しいの?」と心配する
- 【年齢よりも大人っぽい言葉づかいをすることがある?】:教えたわけではないのに、大人びた言葉づかいをして周囲を驚かせる
- 【においに敏感?】:いつもとは違うにおいがしたら、誰よりも敏感に察知する
- 【ユーモアのセンスがある?】:ぼそっと発したひとことでまわりを笑わせる
- 【優れた直感力をもっている?】:「○○な気がする」と言ったことはだいたい当たっている
- 【興奮した日はなかなか寝つけない?】:遊園地や動物園に行った日や、入園式・入学式など多くの刺激を感じた日は寝つきが悪い
- 【大きな変化に対応するのが苦手?】:引越しや転校など、周囲の環境ががらりと変わるような変化に慣れるのに時間がかかる
- 【着ているものが濡れたり汚れたりすると着替えたがる?】:水遊びは好きだけど服が濡れるのはいや、砂遊びは好きだけど服が汚れるのはいや、など気にしやすい
- 【四六時中質問をしてくる?】:ちょっとでも疑問に感じたことは質問しないと気がすまない
- 【完璧主義のように見える?】:「もうそれくらいにしておけば?」と言っても、納得できるまでやろうとする
- 【他人の痛みや苦しみによく気がつく?】:テレビを見たり本を読んだりしていても、登場人物が悲しんでいたら自分のことのように感じて泣いてしまう
- 【静かでおとなしい遊びが好き?】:外で大勢の友だちと鬼ごっこするよりも、積み木遊びやおままごとで遊ぶのが好き
- 【ハッとするような深い質問をしてくることがある?】:「死んだらどうなっちゃうの?」など深い質問をしてくる
- 【痛みに敏感?】:ちょっと大げさなくらい痛がる傾向がある
- 【騒がしい場所が苦手?】:人混みなどうるさくて雑然とした場所にいると機嫌が悪くなる
- 【ほかの人が気づかないような微妙なことによく気づく?】:人の外見がちょっとだけ変わったり、いつも置いてある場所になかったりと、人が気づかない微妙な変化を見逃さない
- 【安全かどうか確かめてから行動を起こす?】:高いところに登る前に友だちが登る様子をよく観察して、安全だとわかってから登る
- 【自分の知らない人がいると実力を発揮できない?】:発表会などで知らない人がいると不安になり、いい結果が出せなくなる
- 【子どものわりに物事を深く感じとっている?】:ほかの子どもが軽く聞き流すようなことをいつまでも覚えている
- 【服のタグやチクチクする肌触りなどを嫌がる?】:肌触りの悪い生地の洋服を着せるとすぐに脱ぎたがる
- 【叱るよりも優しく間違いを正したほうが理解してくれる?】:叱るといつまでも引きずり、優しく諭すとすぐにわかってくれる
質問は以上です。いくつの項目に当てはまりましたか?
Yesの数が13、もしくはそれ以上だった場合、子どもはHSCである可能性が高いといわれています。もしくは、当てはまる項目が1つか2つくらいだとしても、「非常に強く当てはまる」と感じた場合、HSCの可能性は高まります。ただし、これは厳密な診断ではないので、あくまでも参考程度にとどめておきましょう。
大事なのは、親御さんから見て子どもがどのような気質を備えているか、困りごとにはどのように対処すべきかを知ることです。
わが子がHSCだったら? その対処法と心構え
最後に、「うちの子、もしかしたらHSCかも」と気づいた親御さんに向けて、基本の対処法を紹介します。
■「いつでも味方だよ」と安心感を与える声かけを
敏感すぎる子は常に不安を抱えています。日常の何気ないシーンでも、「いつも見守っているよ」「どんなときでもあなたの味方だからね」というメッセージを伝え続けて。たとえお母さんやお父さんがそばにいなくても、「いつも見守ってくれてる」という安心感が不安をかき消してくれるはずです。
■ありのままのお子さんを認めてあげて
子育てカウンセラーで心療内科医の明橋大二先生は、HSCの子をもつ親御さんに向けて、「お子さんが『おかしい』と思っていることを『そうだね』と認めることや、その感性のすばらしさをぜひ本人に伝えて」とアドバイスしています。HSCの子は、親が気づかないあいだに自己肯定感が低下する傾向があるそう。ありのままの自分を認められたら、自己肯定感がはぐんぐん伸びていきます。
■親が肩の力を抜いて接することが大事
親が強迫観念から「ちゃんとしつけなきゃ」と思えば思うほど、できないことを叱りがちになります。これでは自己肯定感がどんどん低下して悪循環に陥ってしまうでしょう。明橋先生によれば、「HSCの子はそこまでしつけする必要はない」「生活習慣でいえば、睡眠だけしっかりしていればOK」「勉強したり生活習慣を身につけたりということは、自己肯定感の上に積み上がっていく」ときっぱり述べています。
HSCの子は、一見普通のように見えても、内側では不安や恐怖、不快感を人一倍感じています。親だからこそ「この子は大丈夫かしら?」と心配になるかもしれませんが、優しく見守って温かく包んであげることで、自己肯定感の土台が築かれ、自分の「敏感さ」とも上手に付き合っていけるようになるはずです。
もっと詳しくHSCについて知りたい方は、こちらのコラムも読んでみてくださいね。
■『5人に1人が「HSC」。繊細で共感性の高い「ひといちばい敏感な子ども」の特徴とは?』
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HSCの子どもをもつ親御さんのなかには、「私の育て方が悪いのかも……」と自分を責めてしまう人もたくさんいます。しかし、HSCはもって生まれた気質です。まわりの人たちから余計なことを言われても、毅然とした態度でわが子とだけ向き合うことを心がけましょう。
(参考)
STUDY HACKER|HSP気質とは? 特徴と付き合い方まとめ
日本教育心理学会第59回総会発表論文集(2017年)|幼児用 High Sensitive Child Scale 日本語版作成の試み
The Highly Sensitive Person|Is Your Child Highly Sensitive?
MAZECOZE 研究所|ひといちばい敏感な特性をもつ子供「HSC」を伸び伸び育むためにできること。子育てカウンセラー・診療内科の明橋大二先生にききました!