男の子を育ているお母さんから、このような言葉を聞くことはありませんか?
「うちの息子、宇宙人みたい」
これは男の子の言動が女性であるお母さんから見たら理解不能という意味であり、そこには「やんちゃだけど可愛くてたまらない」という愛情も見え隠れしますよね。
一般的に、女の子は育てやすいと言われることがありますが、それは育児を中心的に担うお母さんの性別が女性だから、ということにもつながります。つまり、女の子の言動はなんとなく理解できる、でも男の子はさっぱりわからないという意味でもあるのです。
今回は、男の子と女の子の脳の違いを理解することで、子どもの生活面や学習面にまつわる悩みがぐっと軽減されるお話です。
男脳・女脳の違い
最近書店で育児本のコーナーを見ていると、「男の子(女の子)の育て方・叱り方」や「男の子(女の子)用ドリル」と男女別で分けられている様子を目にします。
インターネットやテレビでも「男脳」「女脳」の違いをよく取り上げられていますよね。代表的なものとしては次の特徴が挙げられます。
<男脳の特徴>
空間認知をつかさどる頭頂葉が大きいため、方向感覚がよくて空間把握や論理的思考が得意。また「選択的注意」といって、ひとつのことに集中するのが得意。<女脳の特徴>
言語野が大きく、言語能力と共感性が高い。話好きでコミュニケーション能力が高い。また「分散的注意」といって、同時並行で目配りするのが得意。
(引用:「子どもの脳を伸ばす最高の勉強法」,洋泉社,2017年5月,p100-101)
このように男女の脳の仕組みの違いは明らかなのに、同じ接し方で育て、同じ学習方法で教えることは果たして正しいのでしょうか?
もちろん「男の子だから言語能力が低い」「女の子だから論理的ではなく感情的」とは一概には言えません。しかし個人差はあるものの、私たちが日常で感じている男女の差というものに目を向けてみると、我が子への接し方のコツがつかめてくるかもしれません。
男子と女子はこんなにも学習への向き合い方が違う!?
では具体的に、学習面での違いについて考えていきましょう。かえつ有明中・高等学校の前副校長である石川一郎氏は、男女の成長速度の違いや特質に注目し、共学でありながらも男女別学授業を積極的に推進してきたひとりです。石川氏は以前インタビューで次のように述べていました。
まず一般論から申し上げますと、女子は先生の細かい指示に従いながら、梯子を一つひとつ昇っていくタイプが多いですね。指導者によって飛躍的な変化を遂げたなでしこジャパンの例をみてもお分かりだと思います。これに対し、男子は途中で何かと指示されるのを敬遠しがちですが、ヒントを与えると果敢にチャレンジしていく子が多い。ロジカルな考え方をするのも男子の特色です。
(引用:YOMIURI ONLINE|KODOMO|共学だけど、授業は別学…副校長に聞く)
また教科によっても男女の違いは顕著にあらわれるそう。
男子の場合、英語や国語では文法を重要視し、関係代名詞などにこだわる傾向にあります。一方、女子には情緒的な面があり、ストーリーを楽しむ子が多い。算数では、丁寧な指導が効果を発揮する女子に対し、男子には的確なタイミングでヒントを与える方法が効きますね。社会科では、男子は戦国時代など歴史を好み、女子は登場人物のキャラクターに関心を示す傾向がみられます
(引用:同上)
親御さんご自身の学生時代を振り返ってみても、この特色に当てはまると感じる部分があるのではないでしょうか?
母親目線では理解することが難しい男の子の性質ですが、学習面でのクセがわかれば、よりスムーズに勉強に取り組ませることができるはずです。
たとえば「指示されることが嫌い」「タイミングを見てヒントを与えると伸びる」という特色を理解したうえで、口出ししたい気持ちをグッと抑えて見守るなど、我が子に合った接し方を意識してみるといいでしょう。
ちょっとのコツで男の子はどんどん伸びる
Z会で数学科講師として働く石田浩一先生は、開成中学・高等学校で10年勤めた後、Z会で女の子を教えるようになって非常に驚きます。なぜなら「彼女たちは男の子とはまったく違う感覚で算数や数学に取り組む」ことがわかったからです。
具体的には、男子は公式などをゲームの攻略法のようにとらえているので、抽象的な数式への抵抗感が少ない。一方女子は、感覚的に理解ができないと不安が強くなり、前に進めなくなってしまう。
また、周りの目を気にする女子はノートをきちんととり、課題もしっかりと提出する。反対に周りの目を気にしない男子は、ノートは汚く課題提出にも無頓着、しかしミスすることへの抵抗感は女子に比べて低いそう。
これらの学習に対する姿勢や取り組み方、実は理由があります。
それは男子が、自分が間違うとはあまり思っていない「根拠のない自信」に満ちているからなのです。もちろん個人差はありますが、「自分はできる」と思い込んでいる男子って意外と多いと思いませんか?
そんな男の子たちに効果的なのは、チャレンジ精神をくすぐること。少し難しめのドリルを与えるなど、闘争心や挑戦心を刺激することでグンと伸びるのです。
そこで注意したいのは、難しい問題に直面して頭を悩ませている男の子に対して、良かれと思って「わからないなら教えてあげようか?」と言ってしまうことです。自立心が強く、自分で解決して達成感を得たい男の子にとって、この言葉はプライドを傷つけたりやる気を削いでしまったりする恐れがあります。
そのかわり、自分で壁を乗り越えて問題を解決したときには「すごいね!」「かっこいいね!」と言ってあげましょう。男の子はとっても素直。褒められることで「次も頑張ろう」という意欲に直接結びつくのです。
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男の子の育児や学習でお悩みの親御さん(とくにお母さん)はとても多いですが、「男の子ってこういうものなんだ」と理解することで気持ちが楽になるのではないでしょうか。我が子をよく観察して、集中しているときや声かけが必要なときなどのタイミングを見極めることで、可愛い宇宙人とうまく付き合っていけるはずですよ。
(参考)
「子どもの脳を伸ばす最高の勉強法」,洋泉社,2017年5月,p100-101
YOMIURI ONLINE|KODOMO|共学だけど、授業は別学…副校長に聞く
「プレジデントFamily」,プレジデント社.2018年冬号,p48-51