教育を考える 2019.12.21

放課後や長期休みに「非認知能力」を高めよう。学童でさまざまな経験を

放課後や長期休みに「非認知能力」を高めよう。学童でさまざまな経験を

共働き世帯なら、子どもをいわゆる「学童」に通わせている家庭も多いでしょう。そんな学童について、ただ子どもを預かってもらうサービスのように考えている人もいるかもしれません。でも、民間学童であるアフタースクール久我山キッズの運営に携わる一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事の野上美希先生は、「子どもの成長にとって、学童で過ごす時間は非常に重要」だといいます。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

小学校で過ごす時間以上に長い放課後と長期休みをどう過ごすか

一般的に、子どもが小学校で過ごす時間は年間1,200時間くらいです。一方で、子どもが主に「学童」で過ごす放課後と長期休みを合わせた時間は約1,600時間。そう考えると、この1,600時間をどのように過ごすかは、子どもの成長にとって非常に重要だといえます。

しかも、小学生の時期は、自分の強みを発揮する力や自発性、主体性など、いわゆる「非認知能力」に磨きをかける時期でもあります。でも、小学校でやっている勉強はどういうものかといえば、知識を得て、教えられたことをテストで再現する認知能力を高めるというものですよね。つまり、それこそ放課後や長期休みをどのように過ごして非認知能力を高めるかがとても大切だといえるのです。

とはいえ、学童とひとことでいってもさまざまなタイプがあるのが現実です。わたしたちが運営する学童では、アフタースクールという呼称を使っていますが、学童保育や放課後児童クラブと呼んでいる自治体も。また、その内容もまちまち。その中には、非認知能力を高めるためのさまざまなイベントを行なっている民間の学童もあります。

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子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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視野が狭い子どもだからこそ、さまざまな経験が必要

ここでは、わたしたちが運営するアフタースクールで、子どもたちがどのような活動をしているのかをご紹介しましょう。たとえば、外国人の講師を招いてその時間は英語だけを使う活動や、料理体験、科学実験、造形教室、プログラミング教室、茶道など。

3、4年生くらいになると、子ども新聞をスクラップして、その記事に対して自分がどう感じたのかをみんなの前でプレゼンテーションしたり、友だち同士でディベートをしたりすることもあります。そのテーマは本当に身近なもの。たとえば、「『ドラえもん』の主人公は、のび太君かドラえもんか」というものとか(笑)。そのテーマに対して、2チームに分かれて議論をするのです。

子どもは、大人に比べると視野が狭いものです。だからこそ、たくさんのさまざまな経験をする必要がある。ですから、ここで紹介したようなイベントは、なにか特別なときに行なうものではなく、「今日は科学実験、明日は造形教室」というふうに、じつは毎日行なっているものなのです。

とはいっても、そういったカリキュラムで子どもたちを縛りつけているわけではありません。子どもたちがアフタースクールで過ごす時間は、それらのイベント活動をする時間学校の宿題をやる時間、自由に過ごす時間の大きく3パターンに分けられます。

その自由時間には、元気にひたすら遊び回っている子どももいれば、テラスに椅子を持ち出して風を感じながら読書をしている子どももいます。そのように、自分が快適に過ごせるようにそれぞれが工夫をしているのです。

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学童の縦割り社会が子どもに与えるメリット

また、学童のメリットという点でいうと、縦割りというところも大きなものだと考えています。時期によって組み合わせを変えていくのですが、いま、わたしたちのアフタースクールでは、1、2年生と5、6年生が一緒に活動するようにしています。

上の子たちは、下の子に遊びを教えてお膳立てをしてくれたり、ひとりでいる下の子に話しかけてくれたりします。季節の大きなパーティーのときには、上の子たちがダンスを披露しようと考えたのですが、すると、下の子たちも「わたしたちもやりたい」といって一緒に取り組むことになりました。そういったシナジーが起きて新しいイベントが生まれることもあるのです。

いまはひとりっ子がとても多いですから、年齢がちがう子ども同士のかかわりが希薄です。でも、学童でなら、年齢がちがう相手とのコミュニケーションをしっかり学ぶことができるのです。また、大事に育てられている子はわがままがいえる環境にあることも多いのですが、自分の思いが必ず通るわけではないのが実際の社会です。そういった現実を小学生のときから学べるメリットもあるでしょう。

学童に限らず、もっとさまざまな経験ができる放課後の居場所が増えて、そのなかで子どもたちが生き生き、伸び伸びと過ごせるようになることが理想です。いずれにせよ、小学生のときに小学校以外で過ごす時間の大切さ、その時間をどのように過ごさせるべきかということを、保護者のみなさんにはいま一度考えてほしいと思います。

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一般社団法人キッズコンサルタント協会

■ 一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事・野上美希先生インタビュー一覧
第1回:子どもの順応性は親が思う以上に高い。「申し訳ない」という気持ちは不要です
第2回:「小1の壁」を乗り越えるために――子どもの言葉の裏にある本心とは?
第3回:放課後や長期休みに「非認知能力」を高めよう。学童でさまざまな経験を
第4回:自己肯定感も勉強への姿勢も“熱中体験”の先で生まれる

【プロフィール】
野上美希(のがみ・みき)
1977年3月21日、千葉県出身。一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事。東北大学工学部卒業後、日本総合研究所にてコンサルティング、事業企画、採用、営業と多岐にわたる経験をした後、株式会社マイナビで人材紹介事業部の立ち上げに従事。営業部長として複数の部下をマネジメント。その後、自身の妊娠を機に久我山幼稚園の運営に携わり、産後母の孤独を解消すべく、子育てひろば開設を皮切りに、働く母の支援のため、幼児教育をベースとした民間学童や6つの認可保育園を開設。また、民間学童指導員資格であるキッズコンサルタント資格を認定する一般社団法人キッズコンサルタント協会を立ち上げ、代表理事を務めている。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。