教育を考える/食育 2020.5.15

日本で流通する約8割の大豆が遺伝子組み換え!? 「表示トリック」を解き明かす

編集部
日本で流通する約8割の大豆が遺伝子組み換え!? 「表示トリック」を解き明かす

「子どもにはできるだけ体にいいものを食べさせたい」と願う親御さんは、なるべく自然のままの安全な食品を選ぶように心がけているのではないでしょうか。ただし、「無農薬」「有機農法」「自然栽培」という言葉はなんとなく知っていても、実際にはどのような手法を用いているのか、また私たちの体にどのような影響を及ぼしているかについて、きちんと理解できている人はあまり多くはないはず。

今回は、私たちが普段食べている農産物がいかにして作られているか、また遺伝子組み換え作物についても詳しく解説していきます。

日本は農薬大国!?

全国各地で豊かな農作物が収穫されている日本ですが、一方で、単位面積あたりの農薬使用量が世界1位であることはご存じですか? 高温多湿の環境はもとより、農地に段差があったり土地が狭かったりなど、じつは日本の自然環境は、農作物を育てるにはあまり恵まれていないのです。そのため、ほかの国よりも多くの農薬を必要としているというわけです。

日本において、主に使用されている農薬は次の3種類と言われています。

  1. 有機リン系農薬
  2. ネオニコチノイド系農薬
  3. グリホサホート

 
なかでも、1の「有機リン系農薬」は、その使用が問題視されています。2010年には、米ハーバード大学の研究者らによって「有機リン系殺虫剤に曝露した子どもは、脳の発達の遅れやADHDなどの発達障害を起こしやすい」といった研究結果が出されており、WHO食糧農業機関からも人間の健康に対して中程度または高度に有害であると報告されているほどです。

3の「グリホサホート」は、世界中で最も売れている除草剤「ラウンドアップ」の主成分です。これまでは、動物やヒトには影響がないとされていましたが、さまざまな毒性が報告されるようになり、現在では全世界で使用を禁止する流れになっています。

もちろん農薬には、防虫や成長促進などの必要な役割があります。ただし、長年にわたって、農薬が含まれた農作物を摂取することで有害な物質が体内に蓄積されてしまうと、体や脳に悪影響を与える可能性もあるので注意が必要です。

農薬・遺伝子組み換え食品の危険性02

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「遺伝子組み換えではない」という表示の真実

次に「遺伝子組み換え食品」について、詳しく見ていきましょう。じつは日本では、スーパーで売られている食材の約7割に遺伝子組み換え作物由来の材料が使われています。そもそも、「遺伝子組み換え」とはどのようなものなのでしょうか。

■遺伝子組み換え作物とは?

優れた品種を作り出すために、植物や動物の品種を交配させて品種改良をすることは古くから行なわれてきました。しかし、それらは従来、同じ種や近い種同士の掛け合わせに限っていました。一方で、種の垣根を超えて掛け合わせるのが「遺伝子組み換え」の特徴です。つまり、利用できそうな性質を持った遺伝子を、別の生物のDNAの中に組み込むことを意味します。

■たとえ「遺伝子組み換え」の表示がなくても……

食品のパッケージを見ると、「遺伝子組み換え」「遺伝子組み換えでない」といった表記を見かけますよね。でも、ここに“あるトリック”が隠されていることに注意しなければなりません。大豆を例に説明しましょう。

日本で流通している大豆の94%は輸入品であり、うち7割はアメリカからの輸入だといわれています。さらに、アメリカで栽培される大豆の94%は遺伝子組み換え。結論として、日本で流通する大豆の約8割は遺伝子組み換えであるといえます。一方で、「遺伝子組み換え」の表示はあまり見かけません。なぜなのでしょうか。

理由として考えられるのは、「原材料の重量に占める割合が上位3番目以内で、原材料に占める重量の割合が5%以上である“主な原材料”以外には表示義務がない」こと。つまり、「遺伝子組み換え」の表記がなく安心して口にしている食品も、じつはごく微量でも遺伝子組換え作物が使われている可能性があるのです。

■遺伝子組み換え食品を避けるには

遺伝子組み換え食品は、添加物の原材料として使われていることが多いので、まずは加工食品やインスタント食品、コンビニ食などをできるだけ避けるようにするといいでしょう。

日本で大量に流通している遺伝子組み換え作物は、「とうもろこし、大豆、菜種、綿実」の4種類。これらはすべて油の原料になっています。原材料欄に「植物油脂、油脂、マーガリン、ショートニング、ホイップクリーム」などの表記を見つけたら、遺伝子組み換え作物から作られた油の加工品だと思ったほうがいいでしょう。

農薬・遺伝子組み換え食品の危険性03

安全な食品を選ぶ目と正しい知識を養うために

「安いから」「いつでも手に入るから」という理由だけで食品を選ぶことが、いかに大きな代償を払うことにつながるかを忘れないようにしたいものです。特に、これからの未来を生きる子どもたちには、より安全で安心できる食品を摂取する習慣をつけ、正しい目で食品選びができる知識を身につけてもらうべきでしょう。

その判断基準のひとつとして、有機JASマークがあります。このマークは、遺伝子組み換えを使用していないという目印になるので、食品選びの際にはチェックすることをおすすめします。

有機農産物とは、科学肥料・農薬等の合成化合物質や生物薬剤、放射性物質(遺伝子組み換え種子及び生産物)などを全く使用せずに生産されたものを指し、農林水産大臣に登録された第三者機関である「登録認証機関」に認められれば、有機JASマークを表示することができます。

ほかにも「無農薬栽培」や「自然栽培(自然農法)」があり、いずれも農薬などを使わずに、より自然に近い状態で作物を育てているので安心です。最近では自然食品を取り扱うお店も増えて、手に入りやすくなっているものの、一方であまり神経質になりすぎると「何を食べたらいいかわからない……」という状態に陥ってしまうことも。

まずは、これまでなんとなく選んでいた食品の表示をよく見てみること、そしてたくさんの種類から選べるときは、できるだけ自然に近いものを選ぶように心がけることから始めましょう。

私たちの体は、私たちが食べたものでできています。そして、子どもたちの体は、親である私たちが選び、食べさせたものでできています。子どもたちの体と心、そして脳の健やかな成長のためにも、普段の食事に潜んでいる危険を少しでも取り除くことが大事です。

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私たちは無意識のうちに、普段口にしているものは安全であると思い込んでいます。しかし、すぐには体の不調として表れなくても、長い年月をかけて蓄積された成分は、確実に私たちの体を蝕みます。だからこそ、できるだけ正しい知識を身につけて、安心・安全なものを選ぶ目を養う必要があるのです。

監修:井手啓貴(医師)

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(参考)
西日本新聞|新農薬ネオニコチノイドを考える<下>脳科学者 黒田洋一郎さん 子どもの脳に影響か「予防原則」の適用を