教育を考える/食育 2021.2.26

食育を家庭でやってみない? まずは「カルピスづくり」!

食育を家庭でやってみない? まずは「カルピスづくり」!

栄養バランスや食材・食習慣の知識、食卓におけるマナーなどを教育する「食育」は、特に家庭において重要です。食育は学校や保育園で取り入れられていますが、家庭でも実践したいとお考えの親御さんは多いのではないでしょうか。

子どもたちの食生活は、家庭から大きな影響を受けています。今回は、食育の基本知識や家庭における重要性を解説しつつ、家庭でできる食育の具体例や食べ物に関する知識を深める方法をご紹介しましょう。

食育とは

かつて食育は、家庭生活のなかで自然に行なわれていました。しかし、家庭で食について学べる機会が減り、生活習慣病や食の安全をめぐるさまざまな問題が生じたため、意識して食を教育する必要が生まれたのです。

2005年、食育に関する施策を国として推進するため、「食育基本法」が施行されました。施策の実施を担当する農林水産省は、食育を次のように説明しています。食について理解を深めることで、心身を健やかに保つ食習慣を身につけてもらうのが目的なのです。

食育は、生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるものであり、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実現することができる人間を育てることです。

(引用元:農林水産省|食育の推進 太字による強調は編集部が施した)

食育を通して、具体的に何が身につくのでしょう? 食育基本法の成立に関わった、服部栄養専門学校の校長・服部幸應氏によると、食育には「三つの柱」があるそうです。

  1. 「選食力」が身につく
  2. 食卓での一般常識が身につく
  3. 地球規模で食を考える力が身につく

選食力とは、健康的で安全な食べ物を選ぶスキルのこと。食育によって、選食力や食事のマナー、資源や自然環境への配慮を習得できるのです。

服部氏によると、核家族や共働き家庭の増加で難しくなっているものの、子どもの食育は本来、家庭で行なわれるのが望ましいそうですよ。

家庭でできる食育2

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家庭での食育が大事な理由

なぜ家庭の食育が大事とされているのでしょうか? 理由をくわしく説明していきますね。

食習慣は家庭で形成されるから

子どもは多くの時間を家庭で過ごすため、家庭環境は食習慣に大きく影響します。家庭の大人が食育に無関心で、子どもが不健康な食習慣を身につけてしまったら、生活習慣病のリスクが高まりかねないのです。

公衆衛生看護学が専門の中堀伸枝氏(敦賀市立看護大学講師)らは2014年、小学生と保護者を対象にアンケート調査を行ない、結果をふまえて以下のように結論づけました。

子どもの食行動の良さ、生活習慣の良さおよび健康には、良い家庭環境が関連していた。子どもの食行動や生活習慣、健康を良くするためには、保護者の食意識を高め、親子の会話を増やし、子に家事手伝いをさせるなどの家庭環境を整えていくことが重要である。

(引用元:中堀伸枝・関根道和・山田正明・立瀬剛志(2016),「子どもの食行動・生活習慣・健康と家庭環境との関連:文部科学省スーパー食育スクール事業の結果から」, 日本公衆衛生雑誌, 63巻, 4号, pp.190-201. 太字による強調は編集部が施した)

子どもの食育には、保護者の意識が大切だとされているのです。

朝は家で食べるから

三食のなかでも、朝ごはんは特に大切です。文部科学省による2018年度の「全国学力・学習状況調査」によると、朝食を毎日とる小学生は84.8%、中学生は79.7%。毎日朝食をとる子どもほど、学力も体力も高い傾向があったそうです。

必要な栄養を十分に摂取できれば、脳の働きがよくなり、体が丈夫になります。家庭で朝ごはんをしっかり食べさせることで、子どもの成長をサポートしてあげられるのです。

6つの「こ食」を防げるから

子どもと食卓を囲んで食育をすれば、心身に悪影響を与えるという6つの「こ食」を防ぐことができます。前出の服部氏が語る、それぞれの「こ食」の意味と問題点をご紹介しましょう。

【孤食】
家族がいない食卓で、子どもだけで食べること

  • 好きなものだけ食べるようになる
  • 栄養バランスが悪くなる
  • 食事のマナーが身につかない
【個食】
家族で食卓を囲んでいるが、各自で好きなものを食べること

  • 好き嫌いが増える
  • 栄養バランスが悪くなる
  • 協調性が育たない
【粉食】
小麦粉を原料とした、パンやうどんばかりを食べること

  • 摂取エネルギーが多すぎる
  • やわらかいものが多いので、かむ力が弱くなる
【小食】
いつも食欲がなく、少ししか食べないこと

  • 発育に必要な栄養素が不足する
  • 無気力になる
【固食】
自分の好きな、決まったものしか食べないこと

  • 栄養バランスが悪くなる
  • 肥満や生活習慣病になりやすい
【濃食】
味の濃いものを好んで食べること

  • 味覚が鈍くなる
  • 肥満や生活習慣病になりやすい

「こ食」が習慣になるのは、心身の健康にとって大きなリスク。子どもに食事マナーや食べ物の選び方を教えるには、家族で食卓を囲んだり、一緒に買い物や料理をしたりといった機会が必要なのです。

偏食を防げるから

子どもがもつ食の知識は不十分なので、放っておけば偏食になりがち。とくに野菜は、青くさいにおいや、苦味、緑色の見ためのせいか、嫌う子が多いですよね。

栄養をバランスよく摂取してもらうには、なぜ苦手なのかを突き止め、調理法を工夫するのが効果的です。子どもと一緒に、苦手な野菜をおいしく食べられるレシピを考えてみるなど、実験感覚で食育を楽しんでみましょう。

ちなみに、野菜を食べてもらうコツは、加熱調理。カサが減り、量が多くても無理なく食べられます。お子さんの野菜嫌いでお困りなら、「家庭でできる『野菜の食育』3選」もチェックしてみてくださいね。

それでは、家庭でできる食育を具体的にご紹介していきましょう。

家庭でできる食育3

家庭でできる食育1:料理をつくった人にお礼を言う

家庭の食育は、料理をつくることだけではありません。料理をつくってくれた人に、親が率先して「ありがとう!」と声をかけ、おいしそうに食べる姿を子どもに見せることも、立派な食育です。感謝の言葉を伝えることなら、料理が苦手な人にもできますね。

「子どもは親の鏡」と言われるように、子どもは親の態度をまねるもの。「いただきます」「おいしいね」「ありがとう」といった、家庭の食事にふさわしい言葉が飛び交うだけで、子どもは正しいマナーを意識し、食に感謝する気持ちを育んでいくでしょう。

家族社会学を専門とする松島悦子博士によると、親が「おいしい」と言いながら食べるものは、子どもにとっておいしく見え、おいしく感じられるそうです。家庭で親が子どもにお手本を示すだけですから、すぐに実践できる食育として、ぜひお試しください。

家庭でできる食育4

家庭でできる食育2:食べ物について話す

食事中に食べ物を話題にすることも、家庭で手軽にできる食育です。とはいえ、小さい子に「ごはんは炭水化物」「みかんはビタミン豊富」と専門用語を使う必要はありません。以下のように、わかりやすい言葉で話してみましょう。

  • 「お肉を食べるとパワーアップするよ!」
  • 「春にはタケノコごはんがおいしいね!」
  • 「お正月といえば、おせち料理だね」

知識が増えるだけでなく、食事の場にふさわしいコミュニケーション術も身につくので、家庭の食育として一石二鳥です。

家庭でできる食育5

家庭でできる食育3:カルピスをつくる

家庭の食育としては、子どもと一緒に料理するのも効果的。料理といっても、包丁や火を使う必要はありません。原液を水で薄めるだけの「カルピスづくり」なら、子どもがひとりでできますね。

アサヒ飲料と慶應大学による2018年の共同研究では、5~6歳の子ども12人にカルピスをつくってもらい、唾液中のホルモン濃度や脳波を測定。カルピスづくりにより、家族への愛情が育まれるほか、達成感が高まると示唆されたそうです。パパやママのためにおいしいカルピスをつくろうと工夫する経験を通して、自分で考える力や人を思いやる心が育つのですね。

教育心理学者の田島信元氏は、「入門的な、しかし、しっかりと子どもの成⻑・発達に貢献できる稀有な親子共同調理活動」として、親子でのカルピスづくりを推奨しています。家庭での食育の一環として、お子さんにカルピスづくりをお願いしたり、一緒につくったりしてはいかがでしょう?

家庭でできる食育7

家庭でできる食育4:サラダをつくる

家庭での食育としては、サラダづくりもおすすめ。食材を選ぶ段階から、お子さんにすべて任せてみてはいかがでしょう。子ども料理教室「サカモトキッチンスタジオ」を創設した料理研究家・坂本廣子氏によると、「自分でできた!」という達成感を味わえるようにすれば、子どもの「料理したい気持ち」を引き出せるそうです。

リーフレタスを洗ってちぎり、ミニトマトと合わせて器に盛るだけでもOK。ハムをきれいに飾りつければ、レストランで出てくるような見栄えのよいサラダになります。

子どもに包丁を使わせるのが心配なら、カトラリーナイフを与えるのも手。ハムやキュウリをカトラリーナイフで切る練習をさせ、様子を見てみましょう。

また、ドレッシングをつくるなら、「なぜサラダにドレッシングをかけるのか知ってる?」と質問してみてください。当たり前の組み合わせについて深く考えるきっかけになるほか、「生野菜を油やお酢と一緒に食べると、栄養がしっかりとれて、殺菌効果で安全に食べられるよ」と、食べ物の知恵を伝えることができます。

家庭の食育としては、料理中にダメ出しせず、子どもの気持ちを大切にして温かく見守ってあげたいですね。

家庭でできる食育6

家庭でできる食育5:野菜を育てる

野菜を育てることも、家庭でできる食育の代表格。上述したサラダづくりのとき、子どもが自分でお世話した野菜を使えば、食べ物の大切さをよりいっそう感じられます。

広いお庭や大きなプランターがなくても、コップで育てられますよ。以下は、ガーデニングカウンセラーの岡井路子氏が「初心者向け」として紹介している、リーフレタスのつくり方です。

【用意するもの】

  • 紙もしくはプラスチックのカップ
  • リーフレタスの種
  • 千枚通し
  • 鉢底石
  • 霧吹き・ジョウロ
  • トレイ
  • スプーン
  • ネームプレート
【手順】

  1. カップの底に千枚通しで穴を5、6個開ける
  2. カップの底に鉢底石を敷く
  3. 土をカップのフチから1~2cm下まで入れる
  4. トレイの上にカップを置く
  5. スプーンの裏を使い、土の表面を平らにする
  6. 水で土を湿らせる
  7. 親指とひとさし指で種をつまみ、重ならないよう全体に植える
  8. 種に土を薄くかぶせる
  9. 霧吹きなどで水をやる
  10. ネームプレートを差す
  11. 湿度を保つため、紙をかぶせる。洗濯ばさみなどでフチを留めるとよい
  12. 土が乾いたら、底穴から流れるまでしっかり水をやる
  13. 発芽したら紙をとり、日当たりのよい場所に置く
  14. 葉が重なったり黄色くなったりしたら抜く

岡井氏によると、リーフレタスは1年中育てられ、およそ1カ月でベビーリーフとして収穫できるそう。根っこを残して収穫すれば、また芽が出るので、何回も収穫できるとのこと。子どもと一緒に野菜を育て、料理に使うのは、家庭でできる最高の食育になりそうですね。

食育をもっと知るために

家庭での食育をもっと充実させたい方は、ヒューマンアカデミーの「食育スペシャリストパーフェクト講座」を受講されてはいかがでしょう? 最短3日で、家庭の食育でも使える、以下をはじめとした知識やスキルを効率よく習得できますよ。

  • 箸の使い方
  • 食事マナーの教え方
  • 免疫力を高める野菜メニュー
  • 集中力・記憶力を高める魚メニュー
  • ストレスを軽減する果物メニュー
  • 信頼できる食育情報の探し方

「食育スペシャリスト」とともに、食材別の「フード・インストラクター」資格も取得できるのも、嬉しいポイントです。まずは、資料請求してみてはいかがでしょう。「食育スペシャリストパーフェクト講座」で得た知識を使い、家庭の食育をより楽しく豊かにしてみませんか?

***
家庭の食育は、子どもが心身ともに健康に過ごせる習慣を身につけるため、とても大事なものです。今回ご紹介した食育法や、食育を学ぶ方法を、ぜひ試してみてくださいね。

文/上川万葉

(参考)
服部幸應(2018),『服部幸應の食育読本』, シーアンドアール研究所.
岡井路子(2010),『カップde野菜:おすすめ野菜&ハーブの簡単育て方 おいしくて簡単な野菜レシピ付き』, 東京地図出版.
坂本廣子(2012),『子どもがつくるほんものごはん 生きる力がつく「食育」レシピ』, クレヨンハウス.
中堀伸枝・関根道和・山田正明・立瀬剛志(2016),「子どもの食行動・生活習慣・健康と家庭環境との関連:文部科学省スーパー食育スクール事業の結果から」, 日本公衆衛生雑誌, 63巻, 4号, pp.190-201.
文部科学省|食育って何?
政府広報オンライン|「食べる力」=「生きる力」を育む 食育 実践の環(わ)を広げよう
農林水産省|食育の推進
農林水産省|平成30年度 食育白書 第1章 家庭における食育の推進
松島悦子(2009),「家庭における食育とは――親と子どもの調理態度の関係について(特集 生活の中の食)」, 家計経済研究, 83巻, pp.36-47.
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