教育を考える/体験 2019.7.16

カブトムシやクワガタが採り放題! 夏休みに親子で作る“スーパーバナナトラップ”

カブトムシやクワガタが採り放題! 夏休みに親子で作る“スーパーバナナトラップ”

ひとことで自然体験といっても、その種類はさまざま。1年を通じてできるものもあれば、季節によって特徴的な自然体験もあります。後者について、「プロの自然解説者」であるプロ・ナチュラリストの佐々木洋さんは、「ものごとを大きくとらえる視点を育ててくれる」と語ります。そこで、佐々木さんがおすすめする季節ごとの自然体験を教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

カブトムシが採り放題の「スーパーバナナトラップ」

四季の移ろいがはっきりしている日本でなら、ぜひ、季節ごとに特徴的な自然体験をしてもらいたいですね。自然観察というと、ひとつの花や虫を観察するということをイメージしがちです。でも、自然には季節による変化というものもある。双方を感じるということは、ミクロの視点に加えて、ものごとを大きくとらえるマクロの視点を育てることにもつながるはずです。

そこで、季節ごとにわたしがおすすめする自然体験をお伝えします。春におすすめするのは、わたしが春のパレットと呼んでいる遊びです。紙をパレットに見立てて、花や草などをこすりつけて色をつけていくのです。タンポポなら黄色、ヨモギなら緑という具合です。ヨモギは渋くていい緑色を出してくれますよ。茶色なら土でOK。スペシャルなのがカラスノエンドウの花です。花自体は赤みが強いのですが、これを紙にこすりつけるとなんと濃い紫になる。わたしは、「魔法の絵の具」と呼んでいます。

夏休みに親子で作る“スーパーバナナトラップ”2

もちろん、これは季節を問わずにできるものです。でも、花を咲かせる草木が多くて、植物が元気でみずみずしい春にやるのがやっぱりおすすめですね。ただ、花壇や畑など、草木を自由に摘んではいけないところではNGですから、そこは注意してください。

それから、夏はやっぱり「カブトムシ採り」でしょう。ここで、わたしが長年かけて開発した「スーパーバナナトラップ」をお教えしましょう。これは、とにかくカブトムシやクワガタをめちゃくちゃ集められるという黄金比率の餌です。バナナを使ったただの「バナナトラップ」なら知っている人もいるかもしれませんが、わたしのスーパーバナナトラップはその改良版です。

まず、女性が使うストッキングに皮をむいたバナナを入れます。シュガースポットと呼ばれる斑点がたくさん出た完熟のものがベストです。それを木に引っ掛けて石などでバナナをつぶします。ここまでが普通のバナナトラップですが、ここでわたしはふたつの隠し味を使います。ひとつは泡盛など度数の高いお酒。ちょっともったいないですが、つぶしたバナナにドボドボとたくさんかけましょう。それから、黒酢を大さじ1杯ほど加えます。そうすると、カブトムシやクワガタが餌とする樹液とほとんど同じ匂いが出るようになる。これでもうカブトムシやクワガタが採り放題です。

夏休みに親子で作る“スーパーバナナトラップ”3

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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自然の圧倒的な美しさを味わう「落ち葉並べ」

秋におすすめするのは「落ち葉並べ」です。まずは幼稚園や小学校のグラウンド、近所の公園などで落ち葉を集めます。落ち葉といっても、色はさまざま。緑色のままで落ちてしまった葉に、種類のちがいによって黄色や赤に変わった葉。それから、完全に枯れて茶色になった葉。それらを10枚ずつくらい集めて色ごとに並べるのです。できれば、黒い模造紙の上に並べるのがいいですね。そうすると、大人でも思わず「うわーっ!」と声を漏らすほど見事なグラデーションを落ち葉が見せてくれます

もちろん、黄色いイチョウや赤いカエデなど植物の種類や、虫に食われた跡などについての会話で子どもとのコミュニケーションを膨らませることもできます。また、本当に美しい「インスタ映え」する写真が撮れますから、SNSをやっている親御さんにもおすすめですね(笑)。

冬には「その木になろう」というゲームをやってみてください。これは「その気になろう」という意味も含んだゲームです。芝生広場の周囲にたくさんの木が生えているような広い公園に行ってみましょう。すると、冬ですから葉が落ちて、木の幹や枝のかたちがよくわかるようになっているはずです。その木になったつもりで真似をして、「どの木でしょう?」と親子であて合うのです。けっこう体を動かしますから、体が温かくなるという点でも冬におすすめです。

夏休みに親子で作る“スーパーバナナトラップ”4

「定点撮影」で自然記録と子どもの成長記録をする

先に、季節の移ろいを感じさせることで子どものマクロの視点を育てられるとお伝えしました。その狙いという点でおすすめできることも最後にお伝えしておきましょう。

それは、定点撮影です。たとえば、ある公園に行ったときには必ず同じ木の前で親子の写真を撮るようにするのです。季節の移ろいがわからなければなりませんから、常緑樹では駄目ですよ。おすすめはやっぱり桜。1年を通じて見た目が劇的に変化しますからね。

それを2年でも3年でも続けてみてください。春には桜が花を咲かせるといった変化の他、親子それぞれの服装も変化していく。また、子どもがちょっとずつ大きくなっていくということもわかるでしょう。自然記録と同時に子どもの成長記録をするというわけです。

小さいうちは、子どもはその記録の貴重さには気づかないかもしれません。でも、そうしてたくさんの愛情を注がれ、自分が成長していくことを親が心からよろこんでくれたという経験は、その子どもが大人になって子どもを持つようになったときに、きっと親への感謝の気持ちにつながるのではないでしょうか。

夏休みに親子で作る“スーパーバナナトラップ”5

ナンコレ生物図鑑 あなたの隣にきっといる
佐々木洋 著/旬報社(2015)
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■ プロ・ナチュラリスト 佐々木洋さん インタビュー一覧
第1回:「自然だし、仕方ない」現代の恵まれた子どもたちが“自然体験”から学ぶ重要なこと
第2回:「虫が怖い」はこうして克服。ダンゴムシすら触れない子に、親は何をすればいい?
第3回:自然観察=現場検証!? 生き物の“痕跡”探しから始まる、都会でもできる自然体験
第4回:カブトムシやクワガタが採り放題! 夏休みに親子で作る“スーパーバナナトラップ”

【プロフィール】
佐々木洋(ささき・ひろし)
1961年9月30日生まれ、東京都出身。プロ・ナチュラリスト。公益財団法人日本自然保護協会自然観察指導員、東京都鳥獣保護員などさまざまな立ち場で自然解説活動をしたあと、「プロ・ナチュラリスト 佐々木洋事務所」を設立。「自然の面白さや大切さを多くの人とわかち合い、そのことを通じて自然を守っていきたい」という思いのもとに、25年以上にわたって、自然観察指導、自然に関する執筆・写真撮影、講演、テレビ・ラジオ番組の出演・企画・監修、エコロジーツアーの企画・ガイド等の活動をおこなう。著書に『ぼくはプロ・ナチュラリスト 「自然へのとびら」をひらく仕事』(旬報社)、『モリゾー・キッコロ 森へいこうよ! 会える! 虫図鑑』(宝島社)、『「調べ学習」に役立つ水辺の生きもの』(実業之日本社)、『よるの えんてい』(講談社)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。