教育を考える/体験 2019.10.20

「頭がいい子」の定義は変わる。いま必要な「HQ」を伸ばす秘訣、教えます

編集部
「頭がいい子」の定義は変わる。いま必要な「HQ」を伸ばす秘訣、教えます

「頭がいい子」といえばどんな子を思い浮かべますか? 算数の計算が早くて正確、言葉の意味をたくさん知っていて物知り、テストではいつも100点……別の言い方をすれば、「情報の処理に優れていて、与えられた知識や情報をまんべんなく身につけている子」を思い浮かべる人も多いと思います。

しかしながら、これからの時代において「頭がいい子」に、迅速で正確な情報処理や、豊富な知識量は問われなくなってきます。これからの「頭がいい子」とは、どのような子のことでしょうか。新しい時代の「頭がいい子」を育てるには、私たち保護者はどんなことに気をつけたらいいのか考えてみましょう。

大きく変わりつつある「頭がいい子」の定義

「頭がいい子」という言葉からみなさんが思い浮かべる人物像は、「勉強が得意」「成績が良い」「偏差値が高い」などではないでしょうか?

しかしながら、ITの発展やAIの登場によって「計算が早く正確にできる」「知識が豊富にある」という「頭がいい子」の特徴は、コンピューターが代わりに担うことができる時代になりました。学校教育の現場でも、「詰め込み型」の学習から「主体的・対話的で深い学び」へと、子どもたちに求める「学び」の形が変わっていることはよく知られているでしょう。

社会学者で関西学院大学社会学部准教授の鈴木謙介氏は、「頭の良さを判断する基準は、社会の必要性によって変わる」と述べています。

(前略)たとえば狩猟社会であったなら、その社会での『頭の良さ』は、おそらく計算能力などではないことは想像できるでしょう。つまり、『頭の良さ』というのは、人間にもともと備わっている知能ではなく、その社会で必要とされている知性のあり方によって変わると考えるべきなのです

(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|“頭が良い”の定義とは? 子どもの知性を伸ばすために親が知っておくべき2つのこと

そのときの社会において、何が必要とされているかによって、「頭の良さ」の基準は変わってくるのです。では、これからの社会において必要とされている力は何なのでしょうか。

いま、注目されているのは「HQ」です。

いま必要な「HQ」を伸ばす秘訣2

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IQやEQの次に注目されているHQ=「人間力指数」

「HQ」とは、昔からあるIQ(知能指数)や、世界的なベストセラーで話題になったEQ(心の知能指数)に続いて、ここ数年で注目されている指数のひとつです。HQは「Human Quotient」、つまり「人間性知能」を意味します。

脳科学者の澤口俊之氏いわく、HQは「目的・夢に向かって、社会の中で協調的に生きるための脳力」。HQは、あらゆる脳領域の力をうまくコントロールする役割を持っていると言います。

澤口氏が所長をつとめる人間性脳科学研究所によると、HQが発達すると以下のようなメリットが表れるそう。

  • 目的をもち、未来志向的で計画的に
  • 学力と学習意欲が高い
  • 問題解決能力が高い
  • 個性的で、独創的に
  • 理性的で、協調的・利他主義
  • 優しく思いやりがある
  • 社会的に成功する

 
また、教育評論家の尾木ママこと尾木直樹氏いわく、HQは「社会の中で生きていくための能力」だそう。同氏は、HQを以下のように述べています。

社会性や創造性、企画力、決断力などの能力に優れていて、相手の気持ちを汲んだ行動ができたり、諦めずに未来を切り拓く意志をもっていたりする。「未来型学力」とも言われていて、世界の教育者はこれを伸ばそうと言っているんです。

(引用元:Coleman|尾木ママが語る、家族キャンプの“すごい力”

いわゆる「地頭がいい」といわれる、直面した状況にあわせてあらゆる能力を使いこなすことができる人も、「HQが高い」と言えますね。この未来型学力HQを伸ばせた子が、これからの「頭がいい子」と言えるでしょう。

いま必要な「HQ」を伸ばす秘訣3

HQを伸ばすのは、五感を使った「原体験」

「HQを高める」といっても、特別な教育を施さなければならないわけではありません。前出の尾木氏いわく、HQを伸ばして「頭がいい子」を育てるには、自然のなかで五感をフルに使った直接体験、すなわち「原体験」を多く経験させるのが良いのだとか。

学力の基礎となる五感を磨き、探求心を高めるには、自然の中でさまざまな体験をすることが効果的です。原体験教育研究会では、原体験の対象を動物ゼロの8つで定義しています。

  • の体験:煙や熱さから、火のありがたみと怖さを知る
  • の体験:石を手に取る場所によって形や色などが違うことに気づく
  • の体験:どろ遊びをして手触りや匂いを感じる
  • の体験:水たまり、川、滝、自然の中にある水の状態を五感で知る
  • の体験:木の幹に触れ、木のぼりを楽しむ。木の芽、若葉、枯れ葉などの違いや、年輪の意味を知る
  • の体験:草の匂いをかぐ、草船を作って遊ぶ、実を食べてみるなどの体験
  • 動物の体験:鳴き声を聞く、手で触れる、匂いを嗅ぐ、命の尊さを知る
  • ゼロの体験:夜の暗さ、暑さや寒さなど、人間の力ではコントロールできない自然の脅威とありがたみを知る

 
しかし、原体験教育研究会の泉伸一氏いわく、「必ずこれらを学ばせよう」というスタンスで原体験をさせるのはNG。

たとえば、同じ土を見ても、泥の匂いに興味を持つ子もいれば、泥団子を作ることに熱心になる子もいるでしょうし、土から出てくる虫の生態に興味を持つ子もいるでしょう。子どもが何に興味を示そうと、「××なんか見てないでもっと○○しなさい」などと口出しすることなく、子どもの興味が広がるように見守ることが大切です。

いま必要な「HQ」を伸ばす秘訣4

おすすめは「キャンプ」。あれこれ制約せずに色々な経験をさせよう

休日には「家族キャンプ」はいかが

お子さんに原体験をさせるには、「家族キャンプ」がおすすめです。家族とともに、大自然のなかでテントを張り、食事の準備をして、夜には暗闇のなかで星の輝きやたき火を楽しむ……という普段はなかなかできない活動を楽しく体験できます。また、キャンプには予期せぬハプニングもつきもの。突然雨が降り出したときや、キャンプ道具の一部を持ってくるのを忘れてしまったときなどの対処法も、HQを育んでくれる大切な教材になります。

家族キャンプについて、NPO法人国際自然大学校の佐藤初雄理事長は、「子どもに『家の延長』と思わせないことが大切」だと述べています。普段はできない経験をすることで、子どもは「やればできる」と自信をつけるもの。もちろん、あまりにも危険なことをしていたら、きちんと教えなくてはなりませんが、「あれもダメ」「これもダメ」と制限するのはNGです。

また、「もたもたしないの」「早くしなさい」といった日常で言いがちな言葉も控えましょう。キャンプ中は、習い事や学校に遅刻する心配もなければ、電車に乗り遅れることもありません。日常とは違うところに来たんだと自覚をもち、親自身も精神的に余裕を持つことが大切です。

「キャンププログラム」もおすすめ

もちろん家族で行くことができれば良いですが、親子でスケジュールを合わせるのが難しい場合もありますよね。その場合は、子どもだけのキャンププログラムに参加させてみてはいかがでしょうか。学校の長期休暇に合わせて各地で開催されていますから、お子様が興味をもったら申し込んでみるのがおすすめです。

社会とのつながりがある大人と違って、狭いコミュニティで生活している子どもたちにとって、初めて会う子たちと協力してキャンプ生活を営むのは、なかなかハードルが高いもの。しかし、前出の佐藤理事長いわく、知らない子たちと協力して生活することによって、子どもたちは人との関わり方にも大きな自信を得るのだそう。すると、学校行事や私生活など、友だちと協力して何かを成し遂げる場面で、積極的に動けるようになるのだとか。

***
大自然のなかでたっぷり遊んで、テントで眠るキャンプは、子どもの心身をたくましく成長させてくれますし、良い思い出にもなります。「家族キャンプ」にも、「子どもだけのキャンププログラム」にも、どちらにもメリットがあるので、家族の都合やお子さんの希望にあわせて選んでくださいね。

(参考)
澤口俊之 公式サイト 人間性脳科学研究所|子どもでのHQ向上サービス
Coleman|尾木ママが語る、家族キャンプの“すごい力”
株式会社あーぷ|その50 「頭がいい」とは、どういうこと?
原体験教育研究会|原体験ってなあに?
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|“頭が良い”の定義とは? 子どもの知性を伸ばすために親が知っておくべき2つのこと
いこーよ|子供の生きる力が育つ「原体験」とは? 学び&体験場所も紹介!
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