こんにちは。life styleに「絵本の力」を取り入れ、楽に成果を出し、楽しい未来の選択ができるようになる方法をご提案している、絵本スタイリスト®景山聖子です。
「春眠暁を覚えず」と言いますね。陽気な春になると、夜の眠りに入ったり朝目覚めたりするときのウトウトする時間が、暖かい空気に包まれます。
さらに、春の日差しは心地よく、電車に揺られる午後の時間も、居眠りをしている人を多く見かけるようになりました。
ぽかぽか心地よくて、いつまでもこのまままどろんでいたい……。そう感じる方も多いでしょう。
さて、なんとなく過ごしてしまう、この「ウトウト時間」。実は、人生をやり直したい人へのチャンスの時間でもあることをご存知でしょうか?
幼児はもちろんのこと、自分の考えがしっかりしてきて大人びた発言をするようになる小学3年生以上の子どもも、大人になるにつれて特定の価値観や固定された考え方に縛られるようになってしまった親御さんも……。
ウトウト時間に絵本を読み聞かせると、誰でも「なりたい自分」になれる可能性があるとしたら? 今日は、お子さんにも親御さんにも役立つ、自己実現を叶えるための絵本の使い方についてのお話です。
ウトウト時間に現れる「θ波」の魔法
α(アルファ)波という言葉を耳にしたことはありますか? これは、心も体もとてもリラックスしている状態のときに生じる脳波のこと。
一方、緊張したり、イライラしたりするときに現れるのが、β(ベータ)波。そして、熟睡すると人の脳波はδ(デルタ)波になります。
注目したいのは、熟睡する前に生じるθ(シータ)波。例えば、夜の眠りに入る、朝目覚める、電車やソファでのうたたねをするなど、人がまどろむときに現れる脳波です。
最近、大企業の社内研修に取り入れられるようになった瞑想にも、θ波は関係しています。
θ波が生じるとき、色々なメッセージを、心の深い所へ届けることができるといわれています。
人の心には「顕在意識」と「顕在意識」があることを、連載第一回『私たちが知らなかった、幼少期に絵本の読み聞かせをするべき”本当の理由”』でお話ししました。
理性による判断や意思によるコントロールができるのが「顕在意識」。一方、自覚も制御もできないのが「潜在意識」(無意識)。
そしてこの「潜在意識」が、知らず知らずに人の性格や行動の根本を決めてしまうのでしたね。意志によってどんなに努力しても打ち勝つことのできない、人生を左右するほど重要なものといっても過言ではありません。
多くの小児行動心理学者は、6歳までに個人の性格や振る舞いの基礎に一定の傾向が形成されるといいます。それ以降は残念ながら、普段の生活では、潜在意識の奥深くまでたどり着くことは難しいもの。
しかし実は、脳がθ波のときだけ、ある魔法が起こります。
なんと、普段は到達できないこの「無意識」の領域へ新しいメッセージを届け、自分の性格や行動の根本を変えることができるようになるというのです。
まるでパソコンのデータを一から「書き換える」ように、自分の根本となる潜在意識を「書き換える」ことができる、夢のような時間帯。
それが「ウトウト時間」なのです。
絵本の読み聞かせで「心の原風景」を書き換えられる
「子は親の鏡」という詩をご存知でしょうか。
けなされて育つと、子どもは人をけなすようになる
とげとげした家庭で育つと、子どもは、乱暴になる
不安な気持ちで育てると、子どもも不安になる
(中略)
励ましてあげれば、子どもは自信を持つようになる
広い心で接すれば、キレる子にはならない
誉めてあげれば、子どもは、明るい子に育つ
(引用:ドロシー・ロー・ノルト, レイチャル・ハリス 著, 石井千春 訳(2003),「子どもが育つ魔法の言葉」,PHP研究所.)
この詩が掲載されている『子どもが育つ魔法の言葉』は、世界22カ国で愛読され、120万部を超えるベストセラー。子育てにおいて大切なことを教えてくれる本として、多くの人の心に響いた一冊です。
「子どもの心の原風景は6歳頃までに形成される」。
生後6年間は人生の中で唯一、潜在意識の扉が大きく開く黄金期ということでしたね。
そう聞いて、中には、お子さんが6歳になるまでに、自分としてはあまり良い子育てができなかったと心配している方もいらっしゃるかもしれません。
この詩のように子どもに対して「広い心で接する」ことができなかった、「励まし」たり「誉め」たりしてあげられなかった、「不安な気持ち」を抱えていたなど、時には後悔が残ることもあるでしょう。
そんなときは、θ波が現れる時間帯に読み聞かせをすることで、子どもの心の奥底に、絵本の温かいメッセージを届けてあげてください。
もちろん、その恩恵を受けられるのは、幼い子どもに限りません。6歳をすぎた小学生の子どもでも、大人でも、効果は抜群。
θ波による魔法で、誰に対しても「潜在意識」の扉が開かれる、特別な瞬間が訪れるのです。
その瞬間にメッセージを的確に届けることで、たとえ親御さん自身が、和気あいあいとした家庭で育っていなかったとしても、その影響下にある潜在意識をいつでも改めることができるでしょう。
何度でも、親子はやり直せます。
そして、あなた自身の人生も、ここから、やり直すことができます。
励ます内容の絵本、広い心で接する絵本、愛情いっぱいの絵本など、心に響く良書はたくさんあるのですから。
「ウトウト時間」の絵本の読み聞かせによって、親子共に心の原風景を書き換えることができるのです。
絵本で、子供だけでなく大人も変われる
30代の男性Sさんのお話です。
幼少期に親に読み聞かせをしてもらったことがなく、今まで絵本に無関心だったSさん。しかし、自身の子どもが生まれたのをきっかけに、絵本を手にとってみました。
3歳の息子は「ラチとらいおん」という絵本が大好き。毎晩毎晩この絵本をせがまれ、繰り返し読み聞かせをしました。
他の絵本を開くことはあっても、最後は必ずお気に入りのこの絵本。ウトウトしながら読み聞かせ、子どもより自分が先に寝てしまうこともしばしば。いつも読みながら寝落ちするほどでした。
数か月後、職場での様子に変化が訪れます。
営業職をしているSさん。しかし実は、幼いときにいじめられた経験があり、今でもそのつらい過去を引きずっていました。そのため、いじめっこを連想させる、上から目線の人や、語気の強い人の前に行くと、体が震えてほとんど話せなくなるのです。
ところが、なぜだか次第に勇気が湧いてくるではありませんか。心に「きみは、できる」というポジティブな言葉が浮かんできて、Sさんを励ましてくれるのです。
なぜでしょうか。その答えは、ウトウト時間に繰り返し行った、絵本の読み聞かせにありました。息子さんの大好きな絵本「ラチとらいおん」は、こんなストーリー。
Sさんは、毎晩θ波が現れたときに、この絵本を読み聞かせていました。そのため、幼い頃の潜在意識に潜んでいた「いじめによる対人恐怖」が書き換えられたのでしょう。
その結果、恐怖心を克服し、高圧的な態度の人や語勢の荒い人とでも、普段通りに接することができるようになったのかもしれません。
子どもに読み聞かせをする親への「贈り物」
子育ては、日々の負担が増えると思われがち。でもこのように、子どもへの読み聞かせを通して、親御さんはたくさんのものを得られます。
我が子なしでは描けなかった、今まで以上に輝く未来。
絵本なしでは変わることのなかった、自分の性格や行動の根本となる潜在意識。
絵本の読み聞かせとの出逢い、そしてそこから得られる素敵な変化は、まさに子どもからの「贈り物」なのです。
あなたはこの先、どんな人生を送りたいですか?
温かいメッセージがいっぱいの絵本を、ぜひこれらの「ウトウト時間」に読んでみてください。
- 夜、眠りに入るとき
- 朝、目覚めるとき
- ソファでまどろむとき、電車でうたたねをするとき
θ波の力で、お子さんだけでなく、親御さん自身も「自分の育て直し」ができることでしょう。
先ほどご紹介した詩「子は親の鏡」を締めくくるのは、こんな言葉。
和気あいあいとした家庭で育てば、
子どもは、
この世はいいところだと思えるようになる
(引用:同上)
あなたはこの先、どのような人生を送りたいですか?
「この世はいいところ」だと、思い続けていたいものです。
「生き方・育て方」に良い変化をもたらす参考絵本
親も子も「正直に生きたい」と思ったら
4歳位~
くすのきしげのり 作, 長野ヒデ子 絵(2015),「しょうじき50円ぶん」,廣済堂あかつき.
「親子で愛するとは?」を学び直したいと思ったら
3歳位~
サム・マクブラットニイ 作, アニタ・ジェラーム 絵, 小川仁央 訳(1995),「どんなにきみがすきだかあててごらん」,評論社.
親が子を見つめることで、頑張り屋さんになる育て方を知りたいと思ったら
6・7歳位~
八島太郎(1979),「からすたろう」,偕成社.
和気あいあいとした家庭を味わうことで、この世がいいところだと思えるように
2・3歳~
いわむらかずお(1983),「14ひきのあさごはん」,童心社.
3・4歳~
アネット・チゾン・タラス・テイラー 著, 山下明生 訳(1972)「おばけのバーバパパ」,偕成社.
(参考)
ドロシー・ロー・ノルト, レイチャル・ハリス 著, 石井千春 訳(2003),「子どもが育つ魔法の言葉」,PHP研究所.
池谷裕二,糸井重里(2005),「『海馬』脳は疲れない」,新潮社.
串田剛(2011),「脳外科医がやさしく教える!誰でわかる!脳波にはたらきかけて健康になる シーターヒーリング」,BABジャパン.
マレーク・ベロニカ 著, 徳永康元 訳(1965),「ラチとらいおん」,福音館書店.
くすのきしげのり 作, 長野ヒデ子 絵(2015),「しょうじき50円ぶん」,廣済堂あかつき.
サム・マクブラットニイ 作, アニタ・ジェラーム 絵, 小川仁央 訳(1995),「どんなにきみがすきだかあててごらん」,評論社.
八島太郎(1979),「からすたろう」,偕成社.
いわむらかずお(1983),「14ひきのあさごはん」,童心社.
アネット・チゾン・タラス・テイラー 著, 山下明生 訳(1972)「おばけのバーバパパ」,偕成社.