教育を考える/体験 2018.6.8

子どもと自然体験活動をしよう! おすすめプログラムを一挙紹介

編集部
子どもと自然体験活動をしよう! おすすめプログラムを一挙紹介

自然体験は、子どもの発達にポジティブな影響を与えます。自然体験活動の経験が多い子どもほど正義感や自己肯定感が強い、とする調査や、脳機能を成長させるという専門家の意見は、よく知られていますね。

そこで今回は、自然体験の意義を確認したあと、自然体験ができる施設や、おすすめの自然体験プログラムをご紹介します。初めての人でも参加しやすいキャンプや、身近な自然に親しむ遊びも。

豊かな自然に囲まれれば、子どもたちだけでなく、大人たちも楽しくなってしまうこと請け合いです。ぜひ、興味を持てる自然体験の方法を見つけてみてください。【最終更新日:2020年2月27日】

自然体験が子どもにもたらす影響

まずは、幼児期に自然体験をさせる必要性を確認しておきましょう。自然体験は、子どもにどのような影響をもたらすのでしょうか?

正義感が強くなる

2015年、独立行政法人・国立青少年教育振興機構が公立学校の小学4~6年生・中学2年生・高校2年生を対象に実施した調査では、「自然体験が豊富な子ほど正義感が強い」という興味深い結果が確認されました。「野鳥を観察する」「貝を採ったり魚を釣ったりする」「大きな木に登る」といった経験を多くした子どもは、「友だちが悪いことをしていたら、やめさせる」「バスや電車のなかで、体の不自由な人などに席を譲る」などの行動をとりやすい傾向があったのです。

正義感とは、「正義」を重視する感覚のこと。そして、「正義」とは……難しいですが、小学館の「デジタル大辞泉」において「人の道にかなっていて正しいこと」とされています。つまり、「正義感が強い」とは、「やりたいか、やりたくないか」という自分の気持ちだけでなく、「正しいか、正しくないか」という道徳的な基準で行動できることを指すといえるでしょう。

小学校の学習指導要領によると、「道徳」の教科では、以下をはじめとする要素が扱われます。

  • 節度・節制:自分でできることは自分でやる
  • 友情・信頼:友だちと信頼し合い、助け合う
  • 規則の尊重:決まりの意義を理解し、決まりを守る
  • 自然愛護:自然のすばらしさを感じ取り、自然を大切にする

 
自然体験や大勢でのキャンプを通して、上記のような価値観が育まれることで、子どもの正義感が強くなるのかもしれないですね。

自己肯定感が高まる

また、自然体験の多い子どもは自己肯定感が強いことも判明しました。同調査では、自然体験の豊富な子ほど、自身について「勉強は得意な方だ」「今の自分が好きだ」と考えている傾向が見られたそうです。

一般社団法人・日本セルフエスティーム普及協会によると、自己肯定感とは「人と比べて優れているかどうかで自分を評価するのではなく、そのままの自分を認める感覚」。自己肯定感が強いと、自分を尊重するのと同様に他者を尊重できるため、尊重し合える関係が築けるとのこと。自己肯定感が高い人には、以下をはじめとする特徴があるそうです。

  • 能動的である
  • 物事をポジティブに受け入れられる
  • 感情が安定している
  • 問題解決能力が高い
  • 自分の意見を伝えられる

 
自然体験プログラムを提供しているNPO法人・国際自然大学校の代表である佐藤初雄氏いわく、子どもは自然体験を通じて、困難に立ち向かう能力や、困ったときに助けを求められるコミュニケーション能力を伸ばせるのだそう。都市での日常生活では得られない経験が、自己肯定感を高めるきっかけになるのですね。

脳機能が向上する

自然体験には、子どもの脳機能を向上させる効果も期待できます。脳科学者の篠原菊紀教授(公立諏訪東京理科大学)らの論文「go/no-go課題による夏キャンプの抑制機能への影響の検討」(2002年)によると、キャンプに参加した小学3~4年生を被験者とし、脳の行動抑制機能を測定する課題を行なわせたところ、キャンプ前と比べてキャンプ後の成績が有意に向上したのだそう。実験の結果は、「キャンプ活動によって、参加者の抑制機能が改善する可能性」を示唆するものだと解釈されました。

行動抑制とは、脳の発達過程を研究する森口佑介・准教授(京都大学)によると、「習慣等によって誘発されやすい行動を抑止し、セルフコントロールを可能にする」能力。行動抑制能力は、注意欠陥多動性障害(ADHD)やパーキンソン病において低くなるとされています。

行動抑制能力が低いと、感情や欲求を抑えられなくなります。行動抑制能力が低い例としては、以下のようなものが挙げられるでしょう。

  • 自分の意見と違うことを言われると、怒りを爆発させてしまう
  • 座っていないといけない状況でも、気分しだいで立ち上がったり歩き回ったりしてしまう

 
行動抑制能力が低いと、円滑な人間関係を築いたり、目標達成のために努力を続けたりすることが難しくなります。しかし、キャンプを通じて行動抑制能力が向上する可能性が示唆されたのです。

篠原教授らの論文によると、キャンプ活動には「外遊び・群れ遊び」の要素があり、「自発的なチャレンジ体験」が組み込まれているため、子どもの社会性・道徳性が育まれると考えられるのだそう。「キャンプによって行動抑制能力が高まる」というのは、上で挙げた「自然体験が豊富な子ほど正義感が強い」という傾向とも関係していそうですね。

自然体験とは、子どもの教育において重大な意義を有しているのですね。

キャンプなどの自然体験によって、子どもは成長する。

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学校における自然体験活動

上で紹介したような自然体験活動の学習効果はよく知られているため、学校では自然体験学習の機会が設けられています。学校教育法第31条では、小学校において「自然体験活動その他の体験活動の充実に努めるものとする」と定められていますし、学習指導要領では「遠足・集団宿泊的行事」のねらいが以下のように説明されています。

自然の中での集団宿泊活動などの平素と異なる生活環境にあって、見聞を広め、自然や文化などに親しむとともに、よりよい人間関係を築くなどの集団生活の在り方や公衆道徳などについての体験を積むことができるようにすること。

(引用元:文部科学省|小学校学習指導要領(平成29年告示) 太字による強調は編集部が施した)

皆さんの多くは、林間学校の経験があるかと思います。自然に親しむだけでなく、便利な道具がそろった自宅から離れ、ふだんとは違った環境で不便を感じながらも生活を送り、仲間たちと協力し合ったりケンカしたりして過ごした数日間は、貴重な経験となったはずです。

文部科学省のWebサイトには、自然体験活動の事例として、以下のようなアクティビティが掲載されています。

  • 手こぎボートに乗る
  • 砂浜の砂や流木で作品を作る
  • 星空観察
  • 魚釣り
  • 野外炊飯
  • テント設営
  • 登山

 
小学校で自然体験活動に参加したときは、ただ「楽しい」「面倒くさい」と感じていただけだったかもしれません。しかし、親になってから振り返ってみると、自然体験活動の教育的意義を強く感じるのではないでしょうか。

学校教育には自然体験活動が組み込まれている。

保育園・幼稚園での自然体験

上で見たように、小学校に入ると、ある程度の自然体験活動をすることができます。では、未就学の子どもに自然体験をさせたいと思ったとき、どうすればよいのでしょう?

方法のひとつとしては、自然体験の機会を多く提供してくれる保育園や幼稚園に子どもを入れることです。2つの施設をご紹介しますね。

どろんこ保育園

社会福祉法人どろんこ会が運営するどろんこ保育園は、さまざまな体験を通じて「自分でできることを自分でする」「すべての人との関わりから判断・行動を身につける」などの力を育むことを掲げています。2020年2月現在、関東を中心に東北から沖縄まで40箇所以上で開園中です。

どろんこ保育園の大きな特徴は、畑仕事や田植えを体験できること。畑を耕したり作物を収穫したりといった仕事を毎日行ない、収穫物で料理をするそう。

それに、園で飼っているヤギやニワトリの世話もあります。生き物を飼うのは、楽しいことばかりではありません。大人でも、動物のフンの始末は嫌だという人はいるでしょう。しかし、排せつ物の処理まで責任をもって行なうのが、生き物を飼うということ。フンの掃除を含めて世話することにより、動物はぬいぐるみとは違うのだと実感できそうです。

どろんこ保育園は、都市部で暮らす子どもにとって、貴重な経験ができる場所なのですね。

みその幼稚園

みその幼稚園は、2,000坪もの敷地を誇る、板橋区の私立幼稚園です。特徴は、はだしで走り回れる芝生の園庭。板橋区だけでなく、隣の練馬区や埼玉県和光市などから集まった大勢の子どもたちが活発に遊んでいるそう。

みその幼稚園は自然体験活動を重視しているため、花や野菜・果物の観察や収穫ができる自然観察園および果樹園が併設されています。収穫物は、「クッキングパーティー」で子どもが自ら調理し、おでんやカレーライスになるそう。自然体験だけでなく、食育の機会も豊富に用意されているのです。

自然体験に力を入れている保育園・幼稚園を選んでみては?

自然体験教室に参加する

子どもに自然体験をさせたい、と思い立ったとき手軽にできるのが、各種団体が開催している自然体験教室に参加することです。インターネットで調べ、子どもと相談しながら選んでみてはいかがでしょうか。幼児でも参加できる自然体験プログラムはたくさんありますよ。

早稲田こどもフィールドサイエンス教室

早稲田こどもフィールドサイエンス教室」は、初等理科教育を研究する露木和男教授(早稲田大学)によって監修された、フィールドワーク重視の自然体験教室。季節によって異なる自然の姿に触れるため、1年単位で申し込みます。

「早稲田こどもフィールドサイエンス教室」が対象とするのは年長~小学校5年生。「食物連鎖」「化石」「昆虫採集」など、好きなテーマを選んで参加します。実物に触れながら地球の仕組みを学ぶことで、理科が大好きになりそうですね。

国際自然大学校

国際自然大学校は、自然体験活動の提供や、野外教育施設の運営を手がけるNPO法人。東京・山梨・栃木・神戸・京都・福岡・沖縄に拠点を持ち、「アウトフィッター(自然や人とのかかわりの中で、人生を前向きに生きている人)」の育成を掲げています。

国際自然大学校の自然体験プログラムは、初めての子にもぴったりな初心者向けキャンプや、親子で参加できる登山など、さまざま。最後に自然のなかを歩いたのは、高校での体験学習の時間……という親御さんもいるのではないでしょうか? 子どもといっしょに自分も楽しめるプログラムを探してみてください。

また、国際自然大学校は、春と秋に「自然体験フェスタ」を開催しています。火起こしやまき割りを体験したり、自然の材料で工作をしたりと、気軽に自然体験ができます。最新の開催情報は、公式サイトをご覧ください。

コールマン

キャンプ用品メーカーであるコールマンジャパン株式会社は、年間を通じてキャンプイベントを開催しています。子ども限定のプログラムや、家族で参加できるプログラム、会員限定のイベント、大型キャンプフェスまで。

特に、「キャンプ用品は買いそろえたけれど、キャンプのやり方がわからない」「自分はキャンプが好きだけれど、パートナーや子どもにうまく魅力を伝えられない」という人におすすめです。プログラムに参加して、キャンプの基本や魅力を知れば、自然体験がもっと身近になりますよ。

自然体験教室に参加すれば、気軽に自然体験できる。

自然体験ツアーに参加する

「いかにも勉強」「いかにも教育目的」といった雰囲気ではなく、旅行のように自然体験させたい……という人もいるはず。そんなときは、旅行会社が提供する「自然体験ツアー」に参加してみてはいかがでしょう?

近畿日本ツーリストのWebサイトでは、自然体験ツアーの一覧を見ることができます。フライトとホテルがセットになっているのはもちろん、現地を案内してくれるガイドさんがついてくれる場合も。あまりにも自然が豊かな場所だと、どこを歩けばよいのかわからなくなってしまうこともあるので、見どころを教えてくれるガイドさんの存在は心強いですね。

それに、旅行会社のツアーを利用すれば、自分で手配するにはちょっと面倒な場所にも行きやすくなります。たとえば、世界自然遺産の屋久島。教科書で写真を見たことはあっても、実際に行ったことがない人は多いのでは?

独身の頃はあまり旅行をしなかった人も、子どもが生まれてからすっかり旅行には行かなくなった人も、子どもがある程度大きくなった今、自然体験として離島を訪れてみてはいかがでしょう。近畿日本ツーリストの特集コーナー「日本の島たび」では、「島」に特化したツアーがまとめて紹介されています。

気軽に自然体験できる方法として、旅行会社のツアーも検討してみてください。夏休みの家族旅行としてもぴったりです。

自然体験として、世界自然遺産を訪れてみよう。

目的地別・おすすめ自然体験

最後に、目的地別のおすすめ自然体験スポットをご紹介します。行き先に迷ったときの参考になれば幸いです。

北海道

やはり、自然といえば北海道をイメージしますよね。スノースポーツが楽しめるだけでなく、北海道では雄大な自然を味わえます。

まずは、世界自然遺産の知床。知床とは、北海道の東端から突き出ている半島。アイヌ語では「シリエトク」と呼ばれ、「地の果て」を意味しているそうです。知床半島のほとんどは、林。生態系は豊かで、ヒグマやシマフクロウなどの動物が有名ですね。冬には流氷、夏には登山と、季節によって違った顔を楽しむことができます。

スノースポーツで知られる富良野も、おすすめの目的地です。夏はカヌーや釣り、トレッキングといった、アウトドアも楽しめます。どこに行くか迷ったら、「富良野ネイチャークラブ」はいかがでしょう。冬はスノートレッキングや氷上釣り、夏はボートや木登りなど、さまざまなアクティビティが待ち受けていますよ。特に、ロープとハーネスを使って木に登る「ツリーイング」は、なかなかできない体験です。

札幌の西に位置するニセコも、自然豊かな場所。遠くにそびえ立つ山々や湖沼の風景を楽しむには、レンタカーでの移動がおすすめです。民泊の多いエリアでもあるので、宿泊先の候補に加えてみてください。美しい風景に囲まれて過ごす数日間は、忘れられない思い出になるはず。

沖縄

自然体験といえば、沖縄も外せません。南国の自然やマリンスポーツを楽しめる沖縄は、自然体験の場所としてぴったりだといえます。

那覇から車で約1時間の「ふくらしゃや自然体験塾」は、沖縄ならではの体験ができる定番施設。水牛車に乗ったり、サトウキビを絞ったり、マングローブでカヌーに乗ったり。カヌーは2歳から乗れるので、小さい子連れでも楽しめますね。

「リゾートホテルは飽きた……」という人なら、民泊はどうでしょう? 米国風のお屋敷や、沖縄独自の様式の古民家など、本州とは異なる雰囲気です。農業体験ができる民泊もあるので、自然体験がしたいなら、普通のホテルより民泊を選んでみましょう。

***
子どもの心身の発達には欠かせない、自然体験。子どもの成長につながるだけでなく、大人になったあとでも素敵な思い出になることでしょう。親子で楽しみながら、好きなタイプの自然体験をしてみてくださいね。

(参考)
独立行政法人 国立青少年教育振興機構|「青少年の体験活動等に関する実態調査(平成26年度調査)」結果の概要・集計表
どろんこ会
東京都板橋区 みその幼稚園
早稲田こどもフィールドサイエンス教室
NPO法人国際自然大学校
コールマン|イベント・キャンプ開催情報
J-STAGE|go/no-go課題による夏キャンプの抑制機能への影響の検討
脳科学辞典|行動の抑制
筑波大学|不適切な行動を抑制する脳のメカニズムを発見
e-ヘルスネット|脱抑制
一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会|自己肯定感とは
StudyHacker こどもまなび☆ラボ|“日常的に”自然で遊ぶメリット。「感性で動く」幼少期に多くの自然体験をすべき理由
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