あたまを使う/からだを動かす/教育を考える/音楽をたのしむ/体験/本・絵本/楽器 2018.7.5

“親の愛情” で子どもの海馬が大きくなる!? 子どもの脳を育てる5つのヒント

編集部
“親の愛情” で子どもの海馬が大きくなる!? 子どもの脳を育てる5つのヒント

「賢い子どもに育ってほしい」
多くの親御さまが、こう考えていることと思います。

その “賢さ” をつくるのが脳。脳が発達する幼少期に、親はどんなことをしてあげればよいのでしょうか?

今回は、さまざまな脳科学の研究成果に基づいて、子どもの脳を鍛えるための5つのヒントをご紹介します。

楽器の演奏

子どもの習い事ランキングでも常に上位に入るピアノ。その他、エレクトーンやバイオリンなど、子どもに楽器を習わせたいと考えている(あるいは、すでに習わせている)親御さんも多いはず。

自分で楽器を奏でられるのは、教養としても非常に魅力的ですよね。加えて、楽器演奏が子どもの脳の発達に寄与することも、世界各地の研究で明らかにされています。

アメリカのバーモント大学は、200人超の子どもを対象に実施した調査で、楽器演奏により運動機能を司る運動野が活性化することを突き止めました。16万人の脳画像を見てきたという脳科学者の瀧靖之さんも、自身の著書で次のように書いています。

楽器の演奏自体、脳の活性化にきわめて有効です。まず指先をはじめ、肘、肩、体幹、それに脚まで動かす全身運動なので、脳のさまざまな領域を同時に刺激します。さらに譜面を見ながら演奏するとなると、脳の認知機能までフル稼働します。

(引用元:瀧靖之 (2016),『本当は脳に悪い習慣、やっぱり脳にいい習慣』, PHP研究所)

さらに瀧さんは、音を司る脳の領域と言語を司る脳の領域は非常に近いところにあるため、言語能力の発達や、将来的に外国語を習得する際にも、幼少期の楽器演奏の経験は役立つのではないかと述べています。まさに良いこと尽くめですね!

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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運動

学業成績と学力の関連性について調べるために、アメリカのカリフォルニア州教育局は、90万人超もの子どもを対象に大規模な調査を実施しました。そこで判明したのは、下図の相関関係(※横軸が体力スコア、縦軸が学力テスト平均点)です。体力スコアが高いほど学力も高いことが顕著に表れています。

体力と学力の相関関係
(画像引用元:PRESIDENT Online|脳細胞が増える運動「3つの条件」

文部科学省も、平成24年に発表した「幼児期運動指針」で次のような声明を発表しています。やっぱり、運動って脳に良いのですね。

運動を行うときは状況判断から運動の実行まで、脳の多くの領域を使用する。すばやい方向転換などの敏捷な身のこなしや状況判断・予測などの思考判断を要する全身運動は、脳の運動制御機能や知的機能の発達促進に有効であると考えられる。

(引用元:文部科学省|幼児期運動指針

ちなみに、ここでいう運動とは、なにも野球やサッカーといったスポーツに限った話ではありません。鬼ごっこ(歩く、走る、よける)など、動きに多様性がある “体を動かす遊び” でも充分なのだそう。

親御さん自身もちょっとだけ “童心” に立ち返り、お子さまと一緒に外で運動してみては?

自然体験

下は、自然体験の有無と理科テストの正答率の相関を表した図です。「自然の中で遊んだことや自然観察をしたことがある」と回答している子どものほうが、理科の正答率が高いことがわかります。

自然体験と理科の正答率
(画像引用元:内閣府|平成26年版 子ども・若者白書(全体版)|第2節 体験活動

この傾向は、理科以外の国語や算数といった科目でも同様に見られたのだそう。自然体験もまた、学力向上にひと役買ってくれるのですね。

信州大学の平野吉直教授らが行なった「30泊31日の長期キャンプ」での実験でも、自然体験が脳の前頭葉機能を改善してくれることが示唆されたのだそう。

キャンプ活動は、子どもたちに自然の中での活発な身体活動の機会、人間同士の密接なふれ合いの機会、さらには未来に挑戦できる自己を発見する機会を提供する。こうした機会が、脳機能、特に前頭連合野の抑制機能の発達に寄与し、さらに前頭連合野に何らかの構造的な望ましい変化を生み出す可能性を示している。

(引用元:平野吉直 (2001),「長期キャンプ体験が子どもの大脳活動に与える影響」, 国立オリンピック記念青少年総合センター研究紀要)

休日には遠方までちょっとだけ足を伸ばし、川遊びやキャンプなど、豊かな自然のなかでお子さまを思う存分遊ばせてみたいものですね。

子どもの脳を育てる5つのヒント2

絵本の読み聞かせ

東京医科歯科大学の故・泰羅雅登教授は、世界で初めて読み聞かせを脳科学的に研究された先生です。泰羅教授は、読み聞かせにより、感情や情動にかかわる「大脳辺縁系」が活発化することを突き止めました。

この大脳辺縁系を、泰羅教授は “心の脳” と名付けています。嬉しいことが「嬉しい」とわかる、悲しいことが「悲しい」とわかる。こういった “感情認識” の役割を、心の脳は担っています。絵本を使えば、いろいろな感情を疑似体験させてあげることができ、心の脳が鍛えられていくというわけですね。

また、読み聞かせ中には “親の” 前頭前野が活発化するという嬉しい効果も報告されています。

ちなみに、読み聞かせの際には、言葉を指さしてあげたり、子どもに何か質問をしてあげたりするのが良いのだそうですよ。夜寝る前に、親子でからだを寄せ合いながら、絵本の読み聞かせをしてあげてみてはいかがでしょうか。

親の愛情

最後にご紹介するのは、ウソみたいなホントの話、“親の愛情” です。

ワシントン医科大学のJoan Luby博士らの研究グループは、MRIを用いて92人の子どもの脳をスキャンしました。その結果、親からの愛情(※ここでいう「愛情」とは、親が子育てに積極的で、子どもとコミュニケーションをしっかりとっていることを指します)を充分に浴びて育った子どもは、そうでない子どもに比べて、脳の海馬の大きさが10%近くも大きかったそうです。

Joan Luby博士は、「人間の脳が発達していくうえで、心理的環境は非常に大きな影響を及ぼす」と述べています。“虐待を受けた子どもの脳が委縮していた” なんて悲しいニュースも耳にするくらいですからね。

大きな海馬のためには、大きな愛情を。お子さまの教育のうえで、最も大事にしたい基本です。

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「朝ごはん(※特にお米)をしっかり食べる」「充分な睡眠をとる」といったことも、子どもの脳の発達には必要不可欠です。良質な生活習慣を維持しつつ、今回ご紹介した内容を、これからぜひ役立ててくださいね。

(参考)
The Washington Post|Music lessons spur emotional and behavioral growth in children, new study says
瀧靖之 (2016),『本当は脳に悪い習慣、やっぱり脳にいい習慣』, PHP研究所.
瀧靖之 (2016),『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える 「賢い子」に育てる究極のコツ』, 文響社.
PRESIDENT Online|脳細胞が増える運動「3つの条件」
文部科学省|幼児期運動指針
内閣府|平成26年版 子ども・若者白書(全体版)|第2節 体験活動
平野吉直 (2001),「長期キャンプ体験が子どもの大脳活動に与える影響」, 国立オリンピック記念青少年総合センター研究紀要
mi:te|東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授 泰羅雅登教授スペシャルインタビュー
朝日新聞デジタル|絵本の読み聞かせ 「心の脳」に働きかける
EurekAlert!|New studies measure screen-based media use in children
LIVE SCIENCE|How a Mother’s Love Changes a Child’s Brain