教育に敏感な親御さまの中には、「自己肯定感」という言葉を耳にしたことがある方も多いかもしれません。実際に自己肯定感は子供の成長にどのような影響を与えているのでしょう――。
この記事では、自己肯定感とはそもそもどのような概念なのか、親と子の自己肯定感の関係、そして自己肯定感の高い親の特徴とそのために普段から気をつけるべきことをご紹介します。
自己肯定感は子どもに「立ち上がる力」を与えてくれる
平成26年に内閣府が行った意識調査によると、諸外国に比べた際の日本の若者の自己肯定感は有意に低いことがわかっています。
しかし、ここでいわれる自己肯定感とは一体どのような感覚を指しているのでしょうか。心理学、教育学、といった複数の辞典からその定義を調査した研究では次のような定義が紹介されています。
「自分の可能性を信じ, 自分はできるんだという自信をもち,肯定的に自己を認識すること」
「ありのままの自分を受け止め、自己の否定的な側面もふくめて、自分が自分であっても大丈夫という感覚である」
(引用元:田島賢侍, 奥住秀之(2013),「子どもの自尊感情・自己肯定感等についての定義及び尺 度に関する文献検討 : 肢体不自由児を対象とした予備的 調査も含めて」, 東京学芸大学紀要. 総合教育科学系 64(2): 19-30.)
これは「過去から未来に至るありのままの自分を肯定的に受け入れている感覚」ということです。そんな自己肯定感ですが子どもの成長とはどのように関係しているのでしょうか。
国立青少年教育振興機構 理事長を務める鈴木みゆきさんは、『子どもの人生を充実させる前向き思考の「自己肯定感」――体験によって養う「自信」と「立ち上がる力」』という記事の中で、日本の子どもの自己肯定感について以下のように述べています。
「わたしが一番!」というものではなく、自分が好きだとか、なにかに挑戦するときに「わたしにはできる!」と思うだとか、そういう前向き思考につながる自己肯定感は、子どもにとってすごく重要なものですよね。他人と比べるのではなく、「自分が大事な存在だ」「自分はここにいていいんだ」と自分を認める意識——。(中略)自己肯定感が子どもに与えてくれる力にはさまざまなものがありますが、なかでもわたしは「立ち上がる力」がもっとも重要だと考えています。
(引用元:こどもまなび☆ラボ|子どもの人生を充実させる前向き思考の「自己肯定感」――体験によって養う「自信」と「立ち上がる力」)
たしかに、長い人生に失敗はつきものです。ですが、その失敗から自ら立ち上がることができたなら、その子はきっと大きく成長するでしょう。
そんなふうに子どもが失敗を糧にして成長できるように、小さいうちから自己肯定感を高めてあげたいものです。
親の自己肯定感の低さは子どもに影響する?
では、子どもの自己肯定感を高めるためには、どのようなことが必要なのでしょう。
鈴木さんは、まず子どもが「誰かから愛されること」であると述べています。そのためには親自身の自己肯定感を高めることが重要なのだそう。
同様の指摘を、行動科学に詳しい永谷研一さんがしています。
「実は、自己肯定感は親子セットではぐくむものなのです。『親自身の自己肯定感が低いので、せめて子どもだけでも高くしたい』というお話をよく伺うのですが、それは難しい」
(引用元:AERA dot.|親の「自己肯定感」が低いと子どもも低くなる? 簡単にアップする方法とは)
永谷さんは、子どもは親の言動から影響を受けるので、親の自己肯定感が低いと、自身や他者のマイナス面ばかり見るよう習慣づけられてしまうと話します。
逆に、自己肯定感の高い親は、子どもの自己肯定感を高く評価しているということもわかっています。
- 我が子は「自分自身のことを好きだ」と考えているだろう。
- 我が子は「自分はとても大切にされている」と感じているだろう。
もし子どもが何か難しい目標を立てたときでも、「この子なら、きっとやりとげられるはず!」と親が強く思うことで、子どもにもそれが伝わり、結果的に目標を達成できてしまうのです。
自己肯定感の高い親の2つの特徴
では、具体的にどのような場合に親の自己肯定感は高くなるのでしょうか。次の2つの特徴が見えてきました。
【1】生活が充実している
友人とのつきあい、ショッピング、スポーツ、仕事など、育児以外に夢中になれることがある親は、生活が充実しているため自己肯定感が高いといえるでしょう。
また、子育てや子どもの教育に関しても自分一人で抱え込みすぎず、周囲を頼ることができます。自分の気持ちを周りに開示できるので、その分、周りからのアドバイスも受けやすいのです。
そして楽観的に考えることもできるため、「全部できなくても仕方ない! とりあえず、できることからやってみるか」と、少々の不安を抱えながらも、前向きな行動をとることができるようです。そうすることで、心にゆとりが生まれ、育児以外の趣味を楽しむ時間が生まれるのでしょう。
【2】夫婦関係が良好である
お互いを認め合い、ときには納得するまで話し合うような、対等で風通しのよい夫婦関係を築いています。
相手の「良い」と思ったところは素直にほめる。ほめられたら、「ありがとう」と素直に受け取る。夫婦間でこの関係ができている家庭は、子どもに対しても同じことが自然にできるのだそう。
男子学生の自己肯定感についての研究では、「父との関係」「夫婦関係への認識」の影響が大きいことがわかっているそうです。また女子学生については、「仕事をしている父親に認められ評価されることで自信を感じ、積極的な自己主張につながる」とのこと。相手を認めることの大切さが伺えますね。
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今回わかったことは、家族も家族以外も頼り、自分の幸せも追い求めたほうが、子供の自己肯定感の向上につながるということでした。自らの自己肯定感も高めると、子どもの自己肯定感もアップする――。家族みんながハッピーになれる法則ですね!
(参考)
田島賢侍, 奥住秀之(2013),「子どもの自尊感情・自己肯定感等についての定義及び尺 度に関する文献検討 : 肢体不自由児を対象とした予備的 調査も含めて」, 東京学芸大学紀要. 総合教育科学系 64(2): 19-30.
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