凧揚げ、羽根つき、こままわし、かるた……。
伝統的なお正月遊びは、日本文化に親しむことに加えて、子どものさまざまな能力を伸ばす効果も期待できます。
今回は、代表的なお正月遊びがもたらす脳や運動能力への影響について詳しく解説していきます。
日本ならではのお正月遊びで子どもの能力を上げる!
スポーツや遊びの要素を取り入れたトレーニング・プログラムとして注目されている『コーディネーション運動』の教室「アープスコーディネーションスタジオ」によると、お正月の伝統的な遊びには、運動能力を伸ばす要素がたくさん含まれているとのこと。また運動能力以外にも、頭を使う遊びも多いため、知育の面からも非常に役立つようですよ。
また、子育てに行事文化を取り入れた「行事育」を提唱している和文化研究家の三浦康子氏は、お正月の伝統的な遊びの成り立ちや意味を教えてあげることで、子どもたちはより日本の文化に親しみを覚えると述べます。
『こどもまなび☆ラボ』の読者である親御さんたち世代ですと、さらに上の年代の方に教えてもらう機会も減ってきましたよね。今回は代表的なお正月遊びにまつわる意味や成り立ちも解説しています。ぜひ参考にしてください。
せっかくのお正月。おじいちゃんやおばあちゃん、普段めったに会えないたくさんの親戚が集まるときこそ、特別な遊びで忘れられない思い出づくりをしたいものですね。
体力アップと調整能力が身につく『凧揚げ』
■凧揚げの成り立ち
もともとは中国で占いや戦いに使われていた凧。平安時代ごろに日本に伝わり、江戸時代には男の子の誕生を祝って凧揚げするようになりました。その後、庶民の遊びとして広まり、お正月の風物詩としてたくさんの子どもたちに親しまれるようになったのです。凧が高く揚がるほど神様に近づくので、願い事が叶い、元気に育つと言われています。
■遊び方
糸を引いて揚力(ようりょく)をおこし、空中に飛ばします。和凧、洋たこ(カイト)と色々な種類があり、今では100円ショップなどでも簡単に手に入るようになりました。土手や原っぱなど、思い切り走り回れる広い場所さえあれば、ぜひ家族で一緒に挑戦したいですね
「昔は敵陣までの距離を測ったり、遠方へ放火したりする兵器としても凧を使ったんだよ」などと話せば、ゲームとは違う凧の操縦に興味を持つかもしれません。
■凧揚げによって伸びる能力
- まず、うまく上がるまでひたすら走ることになるので、いつのまにかかなりの運動量になり体力がつきます。
- ただ走るだけではなく、凧を揚げるという目的のため、試行錯誤することで創意工夫する力も養われます。
- 風をつかんで凧糸を出したり引いたりする微調整が必要とされるので、調整能力が鍛えられます。
相手を打ち負かすのはダメ。長く続けて邪気を払う『羽根つき』
■羽根つきの成り立ち
室町時代に中国から伝わり、邪気を払うために行われていました。羽根に使うムクロジ(の種)は「無患子」=患わない子と書きます。昔は蚊が媒介する病気で子どもが亡くなることが多かったため、羽根を“蚊を食べてくれるトンボ”に見立てて打って飛ばしました。
■遊び方
健やかな健康を願って一年の厄をたくさん払いのけたいため、羽根つきは相手を打ち負かすのではなく、長く続けた方がいいと言われています。打ち損じたときに顔に墨を塗るのは、魔除けのおまじない。罰ゲームではなく、羽根を落としても守ってあげるよという優しさなのです。
■羽根つきによって伸びる能力
- 見た目も動きもラケットスポーツに共通するものなので、テニスやバドミントンなどと同様の能力を必要とする遊びです。
- 自分と物体との距離感を調整する「定位能力」と、羽子板を操作する「識別能力」が鍛えられます。
手首の柔らかさやコントロール力が必要な『こま回し』
■こままわしの成り立ち
その歴史は古く、平安時代にはすでにこまを使って遊んでいたという記録が残っています。こままわしは、「物事や人生が円満にまわる」「子どもが早く独り立ちできる」ことを願ったものだと言われています。
■遊び方
こまに紐を巻きつけ、指でひねって回します。胴体の底面の逆円錐の部分に下から紐を巻きつけ、紐の片方を持って胴体を投げ出して、紐を引くことで回転をつけます。
■こままわしによって伸びる能力
- こまを地面と水平にするために投げる角度を調整したり、手首を柔らかく使い、最後には紐を引くという動作が加わったりするため、テクニックが必要とされます。
- タイミングを計ったりコントロールしたりする力が養われます。
記憶能力と反応能力が試される『かるた・百人一首』
■かるた・百人一首の成り立ち
ポルトガル語で「カード」という意味の「カルタ」が元だと言われています。一方、百人一首は宮中の遊びだったものが庶民に広まったものです。
■遊び方
読み札を聞いて取り札を取ります。
■かるた・百人一首によって伸びる能力
- まさに「反応能力」が試される遊びです。
- 取り札の位置を記憶すると有利になるので、「記憶能力」と「空間把握」のトレーニングになります。
◉おすすめはいもとようこさんのかるた!
リズミカルな文章で、「あいうえお」がすいすい覚えられる! と評判の『あいうえおかるた』(金の星社)。いもとようこさんが描く可愛らしいイラストが小さな子どもの心をつかみます。絵札の裏にはひらがなの書き方も載っているので、文字を書く練習にも◎。
また、「ありがとう」や「ごめんなさい」など、大切なことばを取り上げているので、遊びながら挨拶や礼儀も身につきます。おじいちゃんやおばあちゃん、普段会わない親戚が集まった時でも、「うさぎさん うとうと うっかり ひるね」なんて可愛らしいことばと絵柄できっと会話も弾むはずです。
◉「かるた」と「百人一首」ってどう違うの?
百人一首とは、100人の歌人の歌を、ひとりにつき1首ずつ選んだ歌集のこと。読み手が読み札を読んで、読まれた札と合ったものを取るのは、かるたも百人一首も一緒です。ただし、百人一首の場合、取り札は和歌の下の句しか書かれていません。読み札は上の句から読まれるため、和歌をすべて覚えていることで早く札を取ることができるのです。記憶力のトレーニングに非常に適しています。
指先の感覚と記憶能力がキモ!『福笑い』
ほかにも、幼い子どもでもすぐに挑戦できる遊びに「福笑い」があります。「笑う門には福来たる」と縁起の良い遊びであり、特別な知識やテクニック、運動能力は必要とされないので、老若男女誰でも簡単に楽しめます。
遊び方は、目を瞑るか目隠しをして、顔のパーツを選び、顔の輪郭に並べて言います。パーツを選ぶ指先の感覚と、どこに並べるかの位置関係が出来栄えを左右するため、意外と緊張感が高まる遊びでもあります。目を閉じた状態での空間把握と記憶能力のトレーニングにもなりますよ。
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お正月の遊びは、いつも子どもたちが遊んでいるものとは一味違う面白さや新鮮味がありますよね。伝統文化に触れることで、日本に伝わる行事の意味や歴史を知ることは大事です。そして、ご紹介したようにさまざまな能力の向上にもつながるのなら、これほど嬉しいことはありませんね。
(参考)
アープスコーディネーションスタジオ|お正月遊びのメリット
「三浦康子の「行事育」のススメ 子育て歳時記 お正月遊び」,プレジデントファミリー,2018年冬号,pp144-145.
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