あたまを使う/教育を考える/サイエンス/プログラミング/知育 2021.10.12

STEAM教育とは? 幼児向け教材や小学校での具体例も紹介!

STEAM教育とは? 幼児向け教材や小学校での具体例も紹介!

「STEAM教育ってなんだろう」と気になったことはありませんか? 小学校でのプログラミング教育必修化がきっかけで、STEAM教育に興味をもち始めた方が多いようです。

この記事では、STEAM教育に興味のある親御さんに向け、STEAM教育の理解に役立つ情報をお伝えします。最後まで読めば、STEAM教育のイメージがつかめるはずです。

STEAM教育とは

STEAM教育とは何か、ざっくり説明しますね。STEAMの読み方は「スティーム」で、5つの言葉の頭文字を組み合わせたものです。

  1. Science(科学)
  2. Technology(技術)
  3. Engineering(工学)
  4. Arts(芸術・教養)
  5. Math(数学)

5つの領域の知識・技術を関連づけつつ活用し、社会の課題を解決できる人材の育成を目的とするのが、STEAM教育です。2006年、米国の技術科教師ジョーゼット・ヤークマン氏によって提唱され、ピラミッド型のフレームワークで知られています。

STEAM教育を表したピラミッド図

STEAM教育には「STEM(ステム)教育」という前身があります。国際競争力を高めるため、科学技術に強い人材の育成を目的とした教育です。Science・Technology・Engineering・Mathの頭文字を組み合わせたもので、米国国立科学財団のジューディス・ラマレイ博士によって2001年に命名されました。バラク・オバマ元米大統領によって推進されたことから世界中に広まり、教育政策の主軸として定着しています。

STEM教育とSTEAM教育との違いは、STEAM教育にアートの「A」があることです。人間ならではの独創性や発想力を磨くのに欠かせないものとして、芸術および教養という意味で加えられました。

女子のSTEAM教育を推進する非営利教育団体・スカイラボの共同体表であるヤング吉原麻里子氏および木島里江氏によると、STEAM教育で最も重要なのは「人間を重視すること」なのだそう。ヤング氏らの著書『世界を変えるSTEAM人材ーシリコンバレー「デザイン思考」の核心』(朝日新聞出版、2019年)では、STEAM教育の特徴が5つ挙げられています。

【STEAM教育の特徴】

  1. 人間の潜在力を伸ばすことが目的
  2. 異なる分野を関連づけ、領域を超えた視点で考える
  3. 児童・生徒が主体
  4. 実践を通して生きた技術が身につく、探究型の学習
  5. 「社会を変えられる」という自信を与える

ロボットにはない、人間らしい能力を養おう」という意志が感じられますよね。デザインと機能性に優れた製品で人々を魅了し生活向上に貢献した、アップル共同創業者の故スティーブ・ジョブズ氏のような人を育てるのが、STEAM教育なのです。

STEAM教育を構成する5つのアルファベットの意味

「木のおもちゃ」が知育におすすめな理由。五感を刺激し、集中力を育んでくれる!
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STEAM教育が重要な理由

STEAM教育の特徴はわかりましたが、なぜそんなにも重要視されているのでしょうか? 文部科学省のWebサイトでは次のように述べられています。

AIやIoTなどの急速な技術の進展により社会が激しく変化し、多様な課題が生じている今日、文系・理系といった枠にとらわれず、各教科等の学びを基盤としつつ、様々な情報を活用しながらそれを統合し、課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結び付けていく資質・能力の育成が求められています。

(引用元:文部科学省|STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進 太字による強調は編集部が施した)

次世代の子どもたちが必要な能力を身につけるために、STEAM教育が必要なのです。では、具体的にどのような能力が身につくのでしょうか?

高度な技術を使いこなす思考力が身につくから

「Society5.0」という言葉を聞いたことがありますか? 内閣府によると、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、次のような社会だそうです。

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)

(内閣府|Society 5.0

「難しそう……」と感じるかもしれませんが、簡単に言うと、これからの時代には高度な技術を使いこなす思考力やスキルが必要ということ。そのため、新技術を使いこなしたり生活に活用したりすることを学べる、STEAM教育が有効だと考えられています。

Society1.0から5.0までの特徴

自由な創造力を磨けるから

お知り合いやお友だちが「私の仕事、AIに奪われそう」と言うのを聞いたことはありませんか? AIのできる仕事はどんどん増えています。仕事を確保するためには、AIにはない人間独自の能力を磨くことが重要です。

文科省で2017~2018年に開催された「Society5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会」では、これからの社会に求められる能力について以下のように示されました。

文化、芸術、スポーツ等の人間の創造力により生み出し、人々の共感を生み発展し続けてきた分野は、ますます社会に求められるものとなるだろう。人間が根源的にもつ力を発揮して新たな価値を創造し、ドラマや感動を生むこれら職業は、AIやロボティクスによっては決して代替できないものである。

(引用元:文部科学省|Society5.0に向けた人材育成 ~社会が変わる、学びが変わる~ 太字による強調は編集部が施した)

進化したAIでもまねできないような、人間特有の創造力を磨く教育が必要なのです。

ほかの人と協働する力が育つから

同じ目的に向かい、ほかの人と力を合わせることを学べるのも、STEAM教育の魅力です。

STEAM教育を推進している神奈川大学附属中・高等学校副校長の小林道夫氏によると、STEAM教育で重要なのは「問題について議論し、どう解決できるか過程を学ぶこと」なのだとか。神奈川大学附属中・高等学校ではSTEAM教育の一環として「宇宙エレベーターをテーマとした問題解決学習」を実施しており、生徒はチームを組んで議論しつつ新しい価値を創造し、ほかのチームと競うのだそうです。

STEAM教育は幼児期にも有意義です。一般社団法人・全国キッズSTEAM教育協会によると、「考える力」「創造する力」「解決する力」は3歳までに8割、6歳までに9割が決まるのだそう。そのため、幼児期には五感を意識した体験型STEAM教育でほかの子や大人と遊びながら学び、協働力を育むのがおすすめです。

STEAM教育について、イメージが固まってきたでしょうか? 「具体的に何をするんだろう?」と気になる方のために、子ども向けの事例を紹介します。

STEAM教育とは2

日本の小学校におけるSTEAM教育の具体例

日本の小学校でも、すでにSTEAM教育が始まっています。ふたつの具体例を紹介しましょう。

タグラグビー

東京都や大分県など、複数の小学校~高等学校では、STEAM教育として「タグラグビー」が行なわれています。タグラグビーでは、普通のラグビーのようにタックルをしません。ほかのプレイヤーやボールに直接触れず、ボールを持っている相手選手の腰についている「タグ」を奪い取ることで攻撃を止めます。安全性が高く、教育に適したスポーツです。

STEAM教育としてのタグラグビーでは、実技とプログラミング授業を繰り返すことで、問題解決能力を育てます。プログラミング授業では、ボードゲームやAIソフトを使って作戦を考えます。「どこがSTEAM教育なの?」と思うかもしれませんが、体育とAIが融合したり、探求型の学習だったりする点が、STEAM教育の特徴と合致していますね。

「みんなの家!未来の家!」

住宅メーカーの積水ハウスは、プログラミング授業「みんなの家!未来の家!」を実施しています。

2019年度の対象となったのは、つくば市立みどりの学園義務教育学校の6年生。住宅に関する企業の取り組みを学んだあと、センサーを使ってプログラミングを体験しました。子どもどうしでアイデアを交換したり、積水ハウスからコメントをもらったりしたそうです。

「みんなの家!未来の家!」も、科学や工学といった分野を横断していたり、問題解決型だったりする点が、まさにSTEAM教育ですね。「STEAM教育って難しそうだけど、おもしろいかも」……そんな気がしてきませんか?

STEAM教育とは3

家庭でSTEAM教育ができる教材・玩具

「うちでもSTEAM教育をやってみたい!」……そんな親御さんのために、自宅でSTEAM教育を体験できる教材や玩具をご紹介します。

コード・A・ピラーツイスト

幼児向けのSTEAM教育おもちゃなら「コード・A・ピラーツイスト」がおすすめ。3歳以上が対象のプログラミング知育玩具です。

「コード・A・ピラーツイスト」はイモムシ型のロボットで、胴体が5つのパーツに分かれており、パーツごとにダイヤルがついています。ダイヤルをひねることでそのパーツの動きを設定し、頭部のボタンを押すと設定したとおりに全身が動き出します。「こう設定すればこう動く」という、プログラミングの基本を体感できるのです。

ダイヤルをガチャガチャ回して、イモムシを何度も走らせているうちに、プログラミング的な思考が身につきますよ。「イモムシなんて……」と思っている親御さんも、かわいらしい動きに夢中になってしまうかもしれません。

『ピングーがスマホで動く! 楽しく学べるプログラミング』

『ピングーがスマホで動く! 楽しく学べるプログラミング』は、プログラミングの基礎的な考え方を学べる知育絵本です。絵本を読みながら問題を解くと、専用のスマートフォンアプリでピングーが動き出します。こちらの動画をご覧ください。

スマートフォンさえあれば、税込1,650円の絵本を買うだけですぐ始められます。「STEAM教育を試してみたいけれど、お金はあまり……」という場合、『ピングーがスマホで動く! 楽しく学べるプログラミング』からスタートしてはいかがでしょう?

ワンダーボックス

「STEAM教育の教材を集めるのが大変!」「玩具選びに失敗したくない……」とお悩みなら、「ワンダーボックス」を取り入れてみては?

「ワンダーボックス」は、4~10歳向けのSTEAM教育通信教材です。「算数オリンピック」の問題制作に携わる川島慶氏をはじめ、各分野のプロフェッショナルたちによって制作されています。

「ワンダーボックス」に入会すると、オリジナルのキットが毎月届きます。キットが含むのは、以下の3種類です。

  1. ワークブック:思考力の問題冊子(アプリ連携)
  2. トイ教材:モールやキューブなどの素材&問題冊子(アプリ連携)
  3. カードトラベラー(2021年9月まで):毎回ルールの異なるカードゲーム

そして毎月のクイズを解くごとに、専用アプリが更新されていきます。紙の教材とデジタル教材の組み合わせで、飽きずに楽しんで続けられる仕組みです。「ワンダーボックス」のSTEAM教育を詳しく知りたい方は、こちらのバナーから公式サイトをチェックしてみてくださいね。


STEAM教育がよくわかる本

最後に、STEAM教育について詳しく知りたい方のため、本記事でも参考にしたおすすめの本をご紹介します。

『世界を変えるSTEAM人材ーシリコンバレー「デザイン思考」の核心』

STEAM教育の概要から目指す人物像、学校での実践例まで、まとめて知りたい人におすすめです。新書サイズで持ち運びやすいので、家事や仕事のスキマ時間を利用して最先端の教育を知ることができますよ。

著者は、前出のヤング吉原麻里子氏と木島里江氏。両者ともSTEAM教育の研究者で、アメリカのスタンフォード大学で博士号を取得し、母親でもあります。現地で子どもを育て教育研究をする立場から、技術開発で世界をリードするシリコンバレーの教育を伝えてくれているのです。

STEAM教育について学べる一般向けの本をお探しなら、『世界を変えるSTEAM人材ーシリコンバレー「デザイン思考」の核心』をお手に取ってみてはいかがでしょう?

『わくわく科学実験図鑑ー「なぜ?」「どうして?」がよくわかるーおうちでSTEAM教育』

子どもと一緒にSTEAM教育を学びたい人向けです。身近な道具を使って家庭でできる実験がたくさん紹介されています。

実験の進め方だけでなく、便利な用語集や無料の教材サイトなども教えてくれ、STEAM初心者に優しい内容です。その実験にはSTEAMのどの分野が関わっているかもわかります。

たとえば、Arts分野の「じしゃくで絵をかく」という実験は、磁石の動きを試しつつ作品をつくるもの。ほかにはScience分野やTechnology分野と関係しています。

『わくわく科学実験図鑑ー「なぜ?」「どうして?」がよくわかるーおうちでSTEAM教育』には、小さな子でも取り組める実験が多数紹介されているので、親子で遊びながらSTEAM教育を体感してみてください。



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子育て世代として気になる「STEAM教育」を詳しくご紹介しました。STEAM教育は、最新技術を使いこなしよりよい社会を実現できる人間になるための能力を育んでくれます。ご紹介した教材や本を使い、お子さんとSTEAM教育にチャレンジしてはいかがでしょう?

文/上川万葉

(参考)
胸組虎胤(2019),「STEM教育とSTEAM教育:歴史, 定義, 学問分野統合」, 鳴門教育大学研究紀要, 34巻, pp.58-72.
STEAM Education LLC|Recognizing the A in STEM Education
STEAM Education LLC|STEAM Pyramid History
一般社団法人全国キッズSTEAM教育協会|STEAM教育とは
文部科学省|STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進
文部科学省|Society5.0に向けた人材育成 ~社会が変わる、学びが変わる~
内閣府|Society 5.0
文部科学省|小学校プログラミング教育に関する概要資料
文部科学省|STEAM教育について
文部科学省|小学校プログラミング教育指導事例集
ヤング吉原麻里子・木島里江(2019),『世界を変えるSTEAM人材ーシリコンバレー「デザイン思考」の核心』, 朝日新聞出版.
クリスタル・チャタトン 著, 岩田佳代子 訳(2021),『わくわく科学実験図鑑ー「なぜ?」「どうして?」がよくわかるーおうちでSTEAM教育 』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
伊藤恵理(2018),『みんなでつくるAI時代ーこれからの教養としての「STEAM」』, CCCメディアハウス.