運動も勉強も習い事も、はじめるには早いに越したことはない! と思ってしまいがち。けれども、子どもの発達段階を考慮して教育を進めないことには、子どもにとっても親にとっても、かえって負担になってしまいます。
ここでは、4歳〜7歳の幼児期から小学校入学までの時期の子どもの発達と学び、そして親が意識しておきたいことについてご紹介します。ただし、年齢についてはあくまでもひとつの目安ですので、興味関心や刺激を与えるヒントとしてご覧いただければと思います。
4歳―親子の会話で語彙力アップ
【4歳頃の子ども】
自分が成し遂げたことは自慢し、大人にほめてもらおうとする4歳。「ママみて!」「すごいでしょ」といったアピールが増えてくる時期です。語彙数は1500を超え、長い文章を使い、もののありかを説明するときは位置を示す言葉を使ったり、所有関係を表す言葉も使い分けます。
【教育のヒント】
言葉をどんどん吸収する4歳の子とは、それまで以上に「親子の会話」を楽しむことが何よりの知育になります。大人の語彙力が子どもの言葉の数に大きな影響を与えるといっても過言ではないでしょう。下記のように、ものの名前を単純に教えるような一方的な言葉かけではなく、より丁寧な表現をして会話を楽しむようにしてみましょう。
×「鳥さんだよ」→ 〇「かわいいスズメさんがいるよ。エサを探しているのかな」
×「風が強いね」→ 〇「ゴォーッと強い風が吹いているね、飛ばされちゃいそう!」
また、4歳頃になると「子どものためになる習い事をさせなければ!」と考える親御さんも多いようですが、無理強いは禁物。イヤイヤ通ったところで、思ったような成果は出ないものです。
4歳くらいの時期なら、子どもがその場所に「行ったら楽しい」と思えているかどうかを基準にするとよいでしょう。先生や周りの子どもたちと楽しい時間が過ごせるのであれば通わせ、浮かない顔をしている子に「何歳までに始めないと……」と親が焦りながら無理強いしても、かえって苦手意識を持たせることになってしまいます。
5歳—遊びから想像力や自制心を学ぶ
【5歳頃の子ども】
集団生活に慣れ、ルールのある遊びやゲームを楽しめるようになってくる5歳。語彙数が2,000程度にまで増えているため、ジョークを言ったり、物語を語ったりして、大人を楽しませてくれることも。また、この頃になると、物の名前だけでなく、“その言葉の意味” や “文脈の中での使い方” を質問することがあります。これは「言葉には明確な意味と比喩的な意味がある」ということを理解しているからです。
【教育のヒント】
言葉の持つ意味を理解しはじめる5歳くらいの子。「ごっこあそび」も好きな年頃ですが、これには、ことば(セリフ)やもの(おもちゃ)を巧みに使い、状況や社会的なできごとを他者と演じることで、想像力や自制心を学ぶ重要な役割があります。
また、ごっこあそびに伴う子どもの空想ドラマは、貪欲に知識を吸収させるチャンスだと、教育コーチングオフィスSaita Coordination代表で(財)生涯学習開発財団認定コーチの江藤真規さんは言います。たとえば以下のように、親も一緒になって子どもの好奇心を上手に利用して自然に学びを増やすのもよいでしょう。
《ごっこあそびで「テーブルマナー」を知る》
お姫さまごっこで「お姫さま、きょうはナイフとフォークでお食事をしてみましょう」と誘ってみます。たとえおもちゃのカトラリーでも、扱い方が自然と上達していくのがわかるはずです。
《ごっこあそびで「文字の練習」をする》
学校ごっこの先生役になったら「さあ、ノートに名前を書いてみよう!」と促し、生徒役になったら「先生! 『山』ってどう書くんですか?」と子どもに聞けば、一生懸命調べたり覚えたりしようとします。
もちろん、ごっこあそびの最中で「そうじゃないでしょ!」などと叱るようなことがあってはいけません。「こうするともっと素敵なお姫さまね」「◯◯くん、書けるようになったね!」などと褒めながら、あくまでも遊びのなかで、さりげなく教えてあげるのがよいでしょう。
6歳—日常生活の工夫で学習の土台づくり
【6歳頃の子ども】
児童期の入り口に立つ6歳。この頃には、物語の展開を構成する起承転結がわかるようになったり、時間の概念を獲得したり、また、文字や数などの知的な活動への興味も芽生え始めます。自分や友だちの名前、街の看板などの文字を読んだり、エンピツで文字を書いたりする子どもも出てきます。
【教育のヒント】
小学校入学前後は特に、先取り学習に励む親子などに影響を受けて焦ってしまったりしがちですが、お手伝いやふだんの生活のなかで学びをつかみ取れることもたくさんあります。たとえば算数なら、小学校入学前に15くらいまで数えられれば数の概念はしっかり頭に入っているので、それ以上は無理に教えなくても大丈夫、と『IQがみるみる伸びる0歳から6歳までの遊び方・育て方』(廣済堂出版)の著者であり祖川幼児教育センター園長の祖川泰治さんは言います。
普段の生活のなかでのちょっとした工夫で、楽しく学習の土台づくりをしていきましょう。
《おやつで算数を学ぶ》
無味乾燥な数字の足し算や引き算よりも、体で実感する算数が大切な時期。お菓子を一列に並べ、「今日は右から5つまで食べよう」と言ってみたり、「ママは3つ、◯◯ちゃんは2つ、全部でいくつかな?」などと聞いてみましょう。クイズのように楽しみながら大好きなおやつを食べるとなれば、子どももごきげんで答えてくれるはずです。
《買い物で算数を学ぶ》
お菓子やおもちゃをねだる子どもに、たとえば「100円よりも安いものならば買っていいよ」と言えば、必死になって探すはず。なんとなくでも数の概念がわかるようになり、百の位にも親しみが出てきます。そのうち足し算を覚えたら、複数の値段を合算して100円になるように選ぶこともできるようになります。
《看板で文字を学ぶ》
街中で、看板の文字の当てっこクイズをしたり、「“A” という字を見つけてみよう!」と、知っている文字を探し歩いたり。子どもには先入観がないからこそ、難しい漢字だろうと英字だろうと関係なく、多くの文字を学びとろうとします。
《お手伝いでものの名前を学ぶ》
子どもは「ごはん」や「コップ」などの身近なものの名詞は知っていても、意外と「お玉」や「しゃもじ」などの名詞は知らず「ごはんをよそうやつ」なんて表したりします。お手伝いをしてもらうときにも、「ママがお玉で味噌汁を注ぐから、お椀を運んでくれる?」というように会話におり込んでみるといいでしょう。知っている言葉が増えることは自信にもつながります。
7歳—決まった時間で生活リズムを身に付ける
【7歳頃の子ども】
授業や宿題がどういうものかわかるようになり、勉強をすることに少しずつ慣れてくる7歳前後。脳の回路が発達し始め、判断力や記憶力も、急速に高まっていきます。本格的に学習を開始するのに適した時期です。
【教育のヒント】
この頃に基本的な生活習慣を時間によって決めておくと、体内リズムも作られ、勉強の習慣づけもしやすくなります。朝起きて、朝ごはんを食べ、学校に行き、おやつを食べ、習い事に行き、夜ごはんを食べ、宿題をして、お風呂に入り、寝る、というような基本的な生活を、できるだけ決まった時間に行なうようにするといいと、江藤真規さんは言います。
時間が決まっていれば、無理なくその行動に移ることができます。自然と気持ちが動くので、抵抗が少ないのです。当たり前の基本的生活習慣がリズミカルに整っていることは、子どもの体内リズムを作る上でも大変役立ちます。
また、基本的な生活のペースがきちんとできていれば、その他の用事を組み込むことも簡単です。自分が自由に使える時間帯がはっきりするからです。しかも、その組み込んだ用事にも比較的抵抗なくとりかかれるので、大きな時間の節約になります。
同じ時間に同じことをする、この単純な習慣が、大きな時間を作り出す源となるのです。
(引用元:江藤真規(2009),『勉強ができる子の育て方』,ディスカヴァー・トゥエンティワン.)
目安となる時間を決めておけば、たとえば8時頃お風呂に入ったら、ベッドに入る9時までは自由時間! というように、生活にも楽しみやメリハリがついてきます。おすすめは、親も子どもと一緒の時間帯に行動すること。家庭内の計画も立てやすくなり、子どももよりスムーズに生活習慣を身につけられるようになるはずです。
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年齢を目安にまとめてみましたが、大切なのはこどもの個性や適性です。しっかりと向き合いながら、その子に合ったペースで学びの基礎を育んでいけるといいですね。
文/酒井絢子
(参考)
江藤真規(2009) ,『勉強ができる子の育て方』,ディスカヴァー・トゥエンティワン.
祖川泰治(2015) ,『小学校前の3年間にできること、してあげたいこと』,すばる舎.
内田伸子 (2017) ,『子どもの見ている世界 誕生から6歳までの「子育て・親育ち」』,春秋社.
デズモンド・モリス(2010) ,『デズモンド・モリス 子どもの心と体の図鑑』,柊風舎.
公益財団法人母子衛生研究会 赤ちゃん&子育てインフォ|Part2 赤ちゃんの発育発達と親子あそび 4歳頃の子ども
公益財団法人母子衛生研究会 赤ちゃん&子育てインフォ|Part2 赤ちゃんの発育発達と親子あそび 5歳頃の子ども
公益財団法人母子衛生研究会 赤ちゃん&子育てインフォ|Part2 赤ちゃんの発育発達と親子あそび 6歳頃の子ども