「うちの子、国語が苦手みたい」と悩んでいませんか? 国語科において必要とされる「語彙力」「表現力」「読解力」は、ほかの科目でも要求されます。小学生のうちから国語が苦手だと、文章問題や教科書を読んでも理解できず、学校での勉強全体に影響を及ぼすのです。
今回は国語が苦手な子どもの特徴や、国語が苦手になってしまう理由をご説明します。そして、国語の苦手を克服するために親がどうサポートできるか、3つの方法をご紹介しましょう。
国語が苦手な子どもの特徴
国語が苦手な子どもにはいくつか特徴があります。
自分の考えをうまく表現できない
筑波大学付嘱小学校教諭の青木伸生氏によると、自分の考えをうまく表現できない子どもは国語が苦手な傾向にあるそうです。体験した出来事や読んだ物語についての感想を自分の言葉で表現するのは、一定の国語力がないとできません。
見聞きしたことを頭の中で整理して、言葉として表現するには「語彙力」「論理的思考」「文章構成力」が必要。いずれも国語科において要求される能力です。
つまり、自分の考えをうまく表現できない子は国語が苦手だといえるでしょう。国語が苦手だから自分の考えを表現できない、ともいえます。
算数の文章問題が解けない
子どもの算数の成績が悪いのだとしたら、原因のひとつは国語力の低さかもしれません。お子さんの算数の答案を見てみましょう。「3-2+5=」と式があらかじめ書かれている問題なら正解しているのに、「リンゴが3個あって、そのうち2個を太郎君が食べて、花子ちゃんがミカンを5個持ってきた」といった文章問題を間違えている場合、日本語の読解が苦手なのかもしれません。
国語が苦手だと、算数の文章問題を解くことができません。算数の文章問題では、計算能力だけでなく、文章を読んで理解し、適切な式を自分で考え出す能力が要求されるからです。青木氏も、算数と国語の関係について以下の通り語っています。
ドリルのような単発の計算は得意な子どもであっても、国語力が伸び悩んだがために本来の能力を発揮できないということにもなりかねないのです。
(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの主張はくみ取らなくていい! 親だからこそできる、我が子の国語力アップ法)
計算自体は得意な子どもでも、国語が苦手だと、算数の成績が伸び悩んでしまいかねません。
本を読まない
国語が苦手な子どもの最大の特徴は、自発的に本を読まないことです。本を読むことで、日本語の正しい文法やさまざまな言葉を知ることができます。言い換えれば、本を読まないと文法や語彙を自然に身につけることができないのです。
また、本を読まないということは、物語や言葉のおもしろさに興味を持っていないのだとも考えられます。日本語の物語や言葉に関心がなければ、国語の勉強そのものを退屈だと感じるかもしれません。
2014年に発表された研究によると、テキサス大学オースティン校のレイ・リンデン准教授らは、フィリピンの小学校100校を2つのグループに分け、読書が成績に及ぼす影響を調べました。一方のグループの小学生に対しては「読書マラソン」(毎日1時間、読書・朗読や単語ゲームの時間を与える)を実施し、もう一方のグループにはしなかったそう。ひと月後、読書マラソンを行なった小学校での国語の標準テストの偏差値は、読書マラソンをしなかった小学校よりも0.13高かったそうです。単語力や読解力が上昇していることがわかりました。特に単語力と読解力が優れていたとのこと。
やはり、読書をすると国語の成績は伸びるようですね。反対に、読書をしない子は国語が苦手である、ともいえそうです。
国語が苦手な理由
では、国語が苦手になってしまうのはどうしてなのでしょう? 一部の子どもが国語が苦手な理由には、子どもの能力だけではなく、現代の子どもを取り巻くさまざまな事情が関係しています。
子どもと大人が会話する機会が少ない
一部の子が国語を苦手としてしまう背景には、核家族家庭の一般化や、共働きの家庭の増加があります。昔だったら、子どもが学校から帰宅したとき家には大人がいたため、大人と会話することで日本語の表現や知らない言葉を自然に学んでいました。
しかし、両親と子どものみの家庭で、両親が共働きで夜まで帰宅しないとなると、子どもが親と言葉を交わせる機会は非常に少ないですよね。親は帰宅しても仕事で疲れていて、子どもとあまり話したがらない、ということもあるかもしれません。
たしかに、学校や学童保育において、子どもたちは多くの会話をしていることでしょう。しかし、子ども同士での会話では、大人との会話によってもたらされる「正しい文法」や「未知の言葉」を身につけるのは難しいのではないでしょうか。そのため、正しい日本語や多くの言葉を伝えてくれる大人との会話が少なくなってしまった現代の子どもは国語が苦手な傾向にあるといえます。
家庭に本や新聞がない
子どもが国語を苦手としてしまう背景には、スマートフォンの普及や、家庭から本や新聞などの活字を読む習慣が失われたことも関係していそうです。読者の皆さんにも、「携帯電話をスマートフォンに替えたら、読書量が減った」「ニュースはスマートフォンで見るから、新聞の購読をやめた」という人がいるのではないでしょうか。
オーストラリア国立大学・米ネバダ大学の研究者たちが、31の国・地域における25〜65歳の16万人を対象として2011〜2015年に行なった研究によって、家庭にある書籍数と読み書き能力に相関性があることがわかりました。被験者に「16歳のときに自宅に何冊本があったか」という質問に答えてもらったあと、読み書き能力・数字などのテストを受けさせたそう。
そして調査の結果、家にほぼ本がない家庭で育った被験者は、読み書き・数字の能力が平均よりも低いことがわかりました。家庭の書籍数とテストの結果は、本の数が350冊程度までだと比例していたそうです。
家庭に本がない、つまり家庭に読書習慣のない子どもは、活字に自然と親しむ機会がないわけです。そして本を読む習慣がないと、読解力や語彙が身につかず、結果として国語が苦手となってしまうわけですね。
国語の苦手を克服するには1:親子の会話を増やす
小学生が国語の苦手を克服するには、大人と会話をする機会を増やしましょう。身近な大人、つまり親と会話をすることを通して、子供は気持ち・考えを伝える方法や未知の言葉を学べます。
東京の公立小学校教諭・杉渕鐵良(すぎぶち・てつよし)先生も、子どもの「会話力」を上げるには、親子でたくさんのおしゃべりをするに尽きると語っています。会話力とは、さまざまな言葉を正確に使ったり、順序立てて話したりできる能力です。
会話をする機会を増やすだけではなく、言葉の使い方も意識すると、会話の質が上がって正しい日本語の使い方を身につけられますよ。たとえば、今まで会話で「これ」「それ」などの指示語を使うことが多かったのなら、「テーブルの上にあるポット」や「ハンガーにかけてある紫色のTシャツ」などの具体的な言葉で表現するよう、親のほうから心がけましょう。物事を具体的な言葉で表現できるようになる頃には、国語の苦手はすっかり克服されたことでしょう。
国語の苦手を克服するには2:読み聞かせによって本に興味を持たせる
国語の苦手を克服する方法としては、親が本を読み聞かせることによって、子どもに本への興味を持たせることも重要です。読み聞かせは親子にとって良質なコミュニケーションともなりますし、本を読む習慣や本への興味がなかった子どもでも、読み聞かせによって本に興味を持つかもしれません。
上で紹介した筑波大学附属小学校の青木伸生先生も、国語が苦手な子どもが本に興味を持って能動的に読書をするようになるには、親の協力と理解が必要であると述べています。子どもに本を読んでほしい場合、まずは親が子どもに本を読み聞かせることから始めていきましょう。今まで本に興味がなかった子どもでも、本に書かれているストーリーがおもしろいと感じれば、自ら本を開くようになりますよ。
子どもの自主性を促すため、本は親が一方的に選んで押しつけるのではなく、子どもが興味を持って自ら選んだ本を買い与えるようにしましょう。そして、親も子どもが読んでいる本に対して興味を示してください。
「何が書いてあるのか教えて」「どんな物語なの?」と質問をすれば、子どもは「知っていることを説明したい」という欲求から、本を読み込むようになるはず。意欲的に読書をする習慣が身につけば、おのずと国語の苦手は克服できます。
国語の苦手を克服するには3:親子で交換日記をする
国語の苦手意識を解消するため、子どもとコミュニケーションをとりたいけれど、仕事が忙しくて、帰宅する頃には子どもは寝ている……ということもあるでしょう。子どもと話す時間が少なくて困っているのなら、交換日記というのはどうでしょうか。
シリーズ50万部を突破した『東大合格生のノートはかならず美しい』の著者・太田あや氏は、子どもの国語力を上げる方法として、親子間での交換日記を推奨しています。リアルタイムで話せる時間が少なくても、交換日記であれば、空いた時間に書いてテーブルの上に置いておくなどして、コミュニケーションをとることができますね。
親の書いた文章を子どもが読むことで、段落の分け方や言葉の意味などを知ることもできます。毎日のように文章を書く習慣がつけば、作文への苦手意識もなくなりそうですね。
交換日記は、国語の苦手を克服するのに効果的な手段です。親としても、子どもとの交換日記は楽しい思い出になるのではないでしょうか。
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国語の苦手を克服するためには、「本を読みなさい」と子どもに押しつけるのではなく、親が子どもとのコミュニケーションを楽しみながらサポートしてあげましょう。平日にまとまった時間を子どもと過ごせないなら、休日に本を読み聞かせたり、一緒に料理をしたりするのもよいですね。どうしても時間がとれないなら、交換日記がおすすめ。
なお、国語力を高める方法については、「小学生の『国語力』を上げるには。3つの方法とオススメ問題集」もあわせてご参照ください。
文/森下智彬
(参考)
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの主張はくみ取らなくていい! 親だからこそできる、我が子の国語力アップ法
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|国語力アップの鍵はやっぱり読書だった! 将来のために今、本を読むべき理由
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|読書量が算数の成績を左右する!? 子どもの学力を上げるために「1日数分」からできること
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもを「読書好き」にするきっかけの作り方。国語力アップの決め手は家庭にある!
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「文字を見るのも嫌!」子どもを国語嫌いにさせないために、親がすべき低学年からの工夫
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「得意教科は国語!」自信をもって言えるようになるために効果的な勉強法
リクルートマネジメント ソリューションズ|読書は子どもの学力を上げるのか?
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|小学生の「国語力」を上げるには。3つの方法とオススメ問題集
Newsweek日本版|子どもの時に、自宅に紙の本が何冊あったかが一生を左右する:大規模調査
Project MUSE|Improving Reading Skills by Encouraging Children to Read in School: A Randomized Evaluation of the Sa Aklat Sisikat Reading Program in the Philippines