あたまを使う/教育を考える/国語/本・絵本 2019.5.26

子どもを「読書好き」にするきっかけの作り方。国語力アップの決め手は家庭にある!

子どもを「読書好き」にするきっかけの作り方。国語力アップの決め手は家庭にある!

小学生が学ぶ教科には、国語に算数、理科、社会などさまざまなものがあります。そのうち、「国語と算数があらゆる学習のベース」と語るのは、東京の公立小学校教諭・杉渕鐵良(すぎぶち・てつよし)先生。子どものやる気を引き出す独自の授業で注目され、「教育の鉄人」とも呼ばれるカリスマ教師です。今回は、その重要な国語と算数のうち、国語の力を伸ばすために家庭でもできることを教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

子どもを読書好きにするにはまず親が本を読む

小学校における教科のうち、とくに重要なものが国語と算数です。それらの力が育っていないと、理科や社会の教科書、そのなかに出てくるグラフなどもきちんと読めないからです。逆にいえば、1、2年生頃にちょっとくらい理科や社会の勉強が遅れてしまったとしても、国語と算数がきちんとできるようになれば、あとからいくらでも遅れを取り返せます。

そういう意味で重要な国語と算数のうち、国語の力を伸ばすために家庭でもできることというと、まずはやっぱり読書でしょうね。とくに1、2年生くらいの小さい子どもの場合なら、絵本の読み聞かせをおすすめします。というのも、読書は苦手でも読み聞かせは好きだという子どもが多いからです。また、親が本を読まなければ子どもも本に興味を示さないということも、読み聞かせをすすめる理由です。

絵本の読み聞かせをすれば、子どもは文字や言葉、さまざまな概念を知ることになる。それはいまもむかしも変わらない読み聞かせの大きな効果です。そうして絵本の読み聞かせをするうち、「このシリーズものが面白い」というふうに、子どもがハマるものが出てくるでしょう。そういった事象こそ、読書好きになる兆候といえます。

子ども自身が自ら本に興味を示さなければ、読書好きになるはずもありません。そう考えると、「○○先生が推薦しているから」なんていって、どこかの誰かがすすめる本を子どもに与えることにもなんの意味もありません。

もし、子どもにすすめるのであれば、親御さん自身が本当に面白いと思ったものにしてほしいのです。そういう本であれば、「大好きなお父さんやお母さんがすすめるんだったら」と、子どもが興味を示すということだってあるはずですよ。

子どもを「読書好き」にするきっかけの作り方2

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漢字を覚えさせるにも「楽しさ」が最重要

また、小学生なら漢字の学習も重要です。だからといって、漢字をいくつ書くだけというドリルのような学習方法はあまり好ましくありません。1、2年生のような小さい子どもの場合、楽しさが伴っていなければただ機械的にこなすだけになってしまい、なかなか学習効果が上がらないからです。ただの反復には意味がないのです。

そういう意味では、いろいろと工夫をすることが必要。たとえば、「木」という漢字を書いて覚えるにも、子どもが「木」と書いたら、「これ、なんの木?」と聞いてみましょう。子どもは「桜の木」なんて答えるかもしれない。そうしたら、「じゃ、桜のピンクに塗ってみようか」と色鉛筆を与えるのです。あるいは、ピンクの色鉛筆で「木」と書かせてもいいですよね。

また、漢字の「はらい」や「はね」を覚えさせるためにできる工夫もあります。「木」のはらいの部分を書くときに、親が「滑り台みたいだから、滑り台を想像して『シューッ』と書こう」といって、実際に「シューッ」といいながら書く。子どもも面白がって「シューッ」といいながら書くようになります。

どちらも子どもにとっては遊び感覚で漢字の書き取りをすることになりますし、脳をしっかり使ってイメージを膨らませていますから、きちんと覚えられることになります。

また、いろいろな漢字が書かれている紙を用意して、「このなかから、食べものの漢字を探そう!」なんて遊びもいいと思います。たとえば「公」という漢字は、「ハム」と読めますよね。そんな工夫がされている教材もたくさん市販されていますから、それらを使ってみてはどうでしょうか。しかも、そういう教材をやって漢字の面白さを知ったあとなら、子どもは一般的な漢字ドリルも楽しんでやるようになるものです。

いずれにせよ、まだ小さい子どもには「勉強って面白い!」と思わせてあげることがなにより大切です。小さいうちから成績を気にし過ぎる必要はありませんし、「勉強は面白い」と思っていれば、自然に勉強を続け結果的に成績も伸びてくるものですからね。

子どもを「読書好き」にするきっかけの作り方3

会話力を上げるには会話を重ねるしかない

国語力を伸ばすためには、会話力の向上も外せないものでしょう。人と会話をするには、さまざまな言葉をきちんと使えることが求められますからね。

子どもの会話力を向上させたいと思ったら、とにかく親が子どもとたくさんおしゃべりをすることに尽きます。子どものためのスピーチ教室なんてものもありますが、やっていることは、用意された原稿をただうまく読む訓練をしているだけ。

実際の会話とは、そういうものではありませんよね? 相手のいったことに対して瞬間的に反応し、自分の思いを適切な言葉で表現できてこそ会話になる。そう考えると、やはり実際に会話をすることでしかその力は伸びていかないのです。

子どもと会話をするにあたって、親の立場として「いいインタビュアーになろう」と心がけことも重要なポイントです。学校から帰ってきた子どもがどことなくうれしそうにしていたら、「なにかいいことがあったの?」「それでどうしたの?」とどんどん聞き出してあげる。そのとき、親自身がそのインタビューを楽しむことが大切です。親が会話を楽しんでいる気持ちが伝われば、子どもはどんどん冗舌になっていくはずです。

子どもを「読書好き」にするきっかけの作り方4

たし算ひき算 10マス計算ドリル 左利き用
杉渕鐵良 著/学研プラス(2019)
たし算ひき算 10マス計算ドリル 左利き用

■ 東京都公立小学校教諭・杉渕鐵良先生 インタビュー一覧
第1回:先取り学習はこうやれば効果的。「就学前学習ってどうなの?」に“教育の鉄人”が回答!
第2回:「ちゃんと宿題やりなさい!」に効果がない理由。子どもに“響く”声かけの方法とは?
第3回:子どもを「読書好き」にするきっかけの作り方。国語力アップの決め手は家庭にある!
第4回:算数の力は“楽しく”伸ばす! 地味で単純な「四則計算」を笑うほど面白いものにする工夫

【プロフィール】
杉渕鐵良(すぎぶち・てつよし)
1959年生まれ、東京都出身。東京都公立小学校教諭。小学校教諭となって7年目に子どもたちのやる気を引き出す独自の授業「ユニット授業」を開発。その成果により、「教育の鉄人」と呼ばれ、2011年には「ユニット授業研究会」を設立。若手教員の指導にあたる他、講演のために全国各地を飛び回っている。『小学校教師だからわかる 子どもの学力が驚くほど上がる 本物の家庭学習』(すばる舎)、『全員参加の全力教室2 燃える! 伸びる! 変わる! ユニット授業』(日本標準)、『1日1枚5分でできる 漢字パズル』(すばる舎)、『自分からどんどん勉強する子になる方法』(すばる舎)、『子どもが授業に集中する魔法のワザ!』(学陽書房)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。