電車に乗るとテンションが上がる子、踏切を横切る電車に目がくぎ付けになる子、プラレールで何時間も遊び続ける子——。こうした「電車好き」なお子さんは、多いですよね。なかには、「こんなに好きすぎて大丈夫かしら?」と、保護者が心配するレベルのお子さんもいるようです。読者のみなさんのなかにも、心当たりのある方はいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな「電車好き」のお子さんがいるご家庭に朗報です。「電車好きな子どもはかしこくなる」という説があるのだそう。今回は、電車と知育の関係についてご紹介しましょう。
電車への興味が、かしこさの土台を築く
「電車好きな子どもはかしこくなる」と提唱するのは、福山市立大学教育学部准教授の弘田陽介氏です。弘田氏は、著書『電車が好きな子はかしこくなる 鉄道で育児・教育のすすめ』(交通新聞社)のなかで、電車が好きな子どもがかしこくなる理由を、教育学・心理学の視点から解説しています。
そのひとつが、「認知能力」の向上です。「認知能力」とは、大まかにいえば「IQ」などで測ることのできる知的能力のことです。弘田氏によれば、車両の形や色、路線名、駅名といったさまざまな情報があふれる電車の世界は、「認知能力」を高めるのに最適な環境なのだといいます。
「例えば、英単語の暗記や百マス計算などの単純作業は、暗記や計算そのものよりも、この機械的な訓練を通して知性を働かせていることに意味がある。鉄道を介して、駅名や漢字、路線図を覚えることも同じこと。覚えたものが役立つというよりも、むしろ幼いときから知性を働かせ、記憶するトレーニングを積んでいたことが、将来、勉強するうえで大きな力になっていくのです」
(引用元:NIKKEI STYLE|鉄道が子どもの成長に必要な理由 )
もうひとつが、「非認知能力」の向上です。「非認知能力」とは、人と協力したり、目標に向かって努力したり、感情をコントロールしたりといった、IQなどでは測ることのできない能力のこと。2017年3月に改訂された「学習指導要領」に組み込まれるなど、これからの時代に不可欠のスキルだといわれています。弘田氏によれば、電車に愛着を持つことや、電車好きを応援してくれる親であれば、趣味を共有して親への愛着をより深めること、友だちと電車のおもちゃ遊びを楽しんで思いやりや協調性を高めることなどが、この「非認知能力」を向上させるのだそう。
このように、電車への興味が、自然と「認知能力・非認知能力」の両方をトレーニングし、かしこさの土台を築くことにつながっているのです。
知育につながる「鉄道」を利用した「新幹線学」がアツい
最近、「新幹線学」という学問が人気を博していることをご存じですか? 子どもたちの学力を伸ばすと言われている鉄道のひとつである「新幹線」をさらに教材として活用したものです。
新幹線学は、新幹線そのものについて学ぶだけの学問ではありません。たとえば、新幹線の走行写真に写った景色から「湖が写っているよ!」「新幹線は浜名湖の近くを通るよ!」「じゃあ、静岡県だ」と、場所を推測したり、LED照明導入による消費電力の削減率を答えたり、ほかの乗り物とCO2の排出量を比べたり、新幹線の頭の形が変化した理由を考えたり……。と、学習テーマは驚くほど多岐に渡ります。
地理や、科学、環境問題といった子ども達が敬遠しがちな難しい内容でも、新幹線を題材にすると子ども達が目を輝かせて勉強するのだそう。新幹線学の教材構成を担当した玉川大学教職大学院の谷和樹教授は、「集中できない」「コミュニケーションが苦手」といった子どもたちでも、新幹線学であれば授業に集中できると言います。こんな面白そうな授業なら、大人でも受けてみたいですよね。
電車好きのお子さんは特に、新幹線学を利用して勉強してみるのは得策ではないでしょうか? JR東海が運営する「リニア・鉄道館」のホームページでは、新幹線学の教材をダウンロードできます。かるたなどの簡単なものから、小学低学年・中学年・高学年の学年別教材、中学生向けの教材まで、幅広い年代に向けた教材が揃っています。ご家庭で、親子で楽しみながら、鉄道を使った勉強にトライしてみてはいかがでしょう。「楽しく学べる! 鉄道教材」はこちら。
電車好きな子どもにぴったりの知育本
「電車好き」にぴったりの知育本も、多数出版されています。うまく活用すれば、より高い知育効果が期待できるかもしれません。口コミ評価の良い本をピックアップしてご紹介しましょう。
『JR私鉄全線 地図でよくわかる 鉄道大百科』(JTBパブリッシング)
日本全国の全駅、全路線が掲載された鉄道百科です。鉄道のしくみやあゆみ、車両の種類など、鉄道の基本情報もわかりやすく解説されています。特長は、路線地図がすべて正縮尺で掲載されていること。また、各都道府県の県庁所在地や特産物なども紹介されており、鉄道地図を通して地理が学べます。白梅学園大学学長で東京大学名誉教授の汐見稔幸氏も推薦されている一冊です。
『図鑑漢字ドリル小学1~6年生 鉄道』(学研プラス)
鉄道の知識とともに、漢字を身につけることができる新感覚のドリルシリーズです。鉄道図鑑の解説文を穴うめしていく形で問題を解いていきます。この一冊で、小学校6年間で習う漢字1026字がすべて網羅できるのが特長。また、それぞれ何年生で習う漢字かわかるようになっているので、学年を問わず始めることができ、先取り学習も総復習もやりやすいのも魅力のひとつです。
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最後に、電車好きな子どもの能力アップを知育本以上に支えることができるものをご紹介します。それは、保護者である読者の皆さんです。子どもが興味を持ったり、発見したりしたものを親が認めることで、子どもの能力はどんどん伸びていきます。ぜひ、子どもと一緒に電車の世界を楽しんでみてくださいね!
(参考)
いこーよ|子どもの鉄道好きは知育に効果あり…!?
ダ・ヴィンチニュース|「電車が好きな子」はかしこくなる! なぜ鉄道は“最強ツール”なのか?
NIKKEI STYLE|鉄道が子どもの成長に必要な理由
すくコム|世界で注目される非認知的能力って?
ならいごとキッズ|子供の知的能力を伸ばす!『新幹線学』とは?
東洋経済オンライン|教育現場を変革する「新幹線学」とは何なのか
JR東海|リニア・鉄道館
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