教育を考える 2019.8.17

「泣いたって仕方ないでしょう」は子どもから自信を奪う。「自信を与える」3つの方法

編集部
「泣いたって仕方ないでしょう」は子どもから自信を奪う。「自信を与える」3つの方法

何をするにしても「私には無理……」「こんなのできないよ……」と自信のないそぶりを見せる子どもに、私たち親はどう接していけばいいのでしょうか。「どんなことにもチャレンジして、困難や壁も自分で乗り越えていける力を身につけてほしい」と願う親御さんは特に、そんなお子さんの姿を前に気を揉んだり、もどかしく思ったりしていることでしょう。

「自分にはできない」と思ってしまうのは、生まれ持った性格なのでしょうか。それとも、何かきっかけがあったのでしょうか。子どもたちが自信を持てない理由を探りつつ、親が子どもに自信をつけさせるために効果的な方法を3つご紹介します。

自信のない子は、こんな経験をしていることがある

「やってごらん」と声をかけてみても、お子さんから「そんなのできっこない」と最初から諦めているような言葉を返されたことはありませんか。自信のなさそうな顔をしているわが子を見て、この先を案じてやきもきしてしまう方も多いはず。

「やりたくない」というはっきりした拒否の意思表示ではなく、「自信がない」と言う子どもの胸の内には、どのような思いがあるのでしょう。教育評論家の親野智可等さんは、次のような可能性を挙げています。

特に親にたくさん叱られたというわけでなくても、生まれつき慎重な性格であるとか、用心深くて心配性であるとか、マイナス思考であるとかの理由で、こういう言葉が多くなっているのかもしれません。または、何でもうまくやりたいという完璧主義的な気持ちが強いのかもしれません。あるいは、自分の不安や緊張を解放するために、つまり一種のストレス発散として言っているのかもしれません。

(引用元:ベネッセ教育情報サイト|自分に自信がない子[教えて!親野先生]

一方、生まれ持った性格からくる「自信のなさ」ではなく、周りの人たちの態度や言葉で自信をなくすこともあります。たとえば、以下のような言葉かけはNGです。

【NG1】「やってもいないのに、どうしてできないなんてわかるの? もっと自信を持たないとダメでしょう」

→親野氏いわく、このような言葉をかけると、子どもには「自分は、自信のないダメな子なんだ」という意識が残り、否定的な自己イメージができあがってしまうそう。

【NG2】「泣いたって仕方ないでしょう」

→泣いてもどうしようもない場面で泣く子どもに対して歯がゆく思い、ついこんな言葉を言ってしまったことのある人もいるかもしれません。でも、子どもの感情を否定するのはNGです。家庭教育の専門家である田宮由美氏によると、子どもの感情を否定したり、子どもの感情を受け止める前に「こうしたらよかったじゃない」と解決策を言ったりするのは、子どもの自己肯定感を下げてしまうそう。

「自信を与える」3つの方法2

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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子どもに「正しい自信」をつけさせるコツ

何事にも果敢にチャレンジできる「自信」を子どもにつけさせるためには、どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか。岡山県で「こどもみらい塾」の塾長を務める楠本佳子さんは、子どもは「正しい自信」を抱くことが大切だと言います。

「まず、『正しい自信』とは『自分は何でもできる!』といった自惚れ的なものとは違います。大人もそうですが、私が考える『自信』とは、やる前からムリだと思って諦めるのではなく、何事も失敗を恐れずに取り組む力がある、そういう姿勢でいられるということです。
そして、それでもしも失敗したり、100%思い通りの結果にならなかったりしても、次にどうすれば成功できるのか、少しでも完璧に近づけられるのかを考えて、常に挑戦する気持ちを持ち続けられるということが大事なんです」

(引用元:マナトピ|子どもに「正しい自信」をつける方法とは?12歳までに「自信ぐせ」をつけよう

つまり、子どもに身につけさせたい「正しい自信」とは、「自分はやれば何だってできる!」という過度な自負ではなく、たとえ失敗したりうまくいかなかったりしても、イメージするゴールに向かって、前向きに取り組む心の強さといえるでしょう。

「自信を与える」3つの方法3

自信をつけさせるには「ひとつずつ確かめる」「できたことを認める」「他人と比べない」

子どもに「正しい自信」をつけさせるためには、「自信を持ってやりなさい」と声をかけるだけでは十分とはいえません。これは、裏を返すと「自信がないとできない」と受け止められかねないからです。私たち親が子どもに自信をつけさせるために大切にしたいことは「ひとつずつ確かめる」「できたことを認める」「他人と比べない」の3つです。

ここでは、「くり上がりのある筆算ができない」ケースを例にして考えてみましょう。

ひとつずつ確かめる

まずはお子さんのことをよく知りましょう。「くり上がりのある筆算ができない」のは何が原因なのか、ひとつずつ探っていきます。このとき「どこがわからないの?」と聞くのはNG。いろいろな角度から子どもをよく観察して、1桁のくり上がり足し算はできるか、筆算の書き方や計算の仕方は理解できているか、計算途中でミスをしていないか、文章題から筆算の式が起こせるかなどを一緒に確認していきます。

できたことを認める

ひとつずつ原因を探っていくと、「ここまでは理解できている」というラインが見つかります。1桁の繰り上がり足し算はミスなくでき、筆算の立て方も分かっているなら、「ここまではわかっているね」と子どもと一緒に確認します。「まったくできない」のではなく「ここまではできているんだ」という感覚が、次のステップを乗り越える自信につながります。15年以上保育業務に携わっている市川由美子氏によると、親に認められることは、子どもにとって「頑張ろう」という自信につながるそう。子どもができていることは、些細なことでも認めるのが大切です。

他人と比べない

お友だちや兄姉と比べて、「○○ちゃんは、もっと上手なのに」「お兄ちゃんは○歳にはできていたわよ」などと言ってはいけません。「子どものやる気を引き出せれば……」という一心で言っている人もいるかもしれませんが、前出の田宮氏いわく、言われた子どもは比較された相手に比べて自分は劣っていると解釈し、自己肯定感が下がってしまうそう。ただし、過去の自身と比べて「以前よりできるようになった」という実感は、子どもの自信につながります。子どもに成長が見られたら、前と比べてどれくらい成長したか、上達したかを言葉で伝えましょう。
この3つに加え、もうひとつ大切なことは「否定的な言葉をぶつけない」ことです。できていないところにばかり目が行ってしまいがちですが、自信をつけさせるためには、否定的な言葉は封印しましょう。

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子どものできている部分を認め、励ますことが「正しい自信」につながります。また、親御さん自身も「ここまではできる」「前より上手になった」ことを意識すると、お子さんに声をかけるときに前向きで肯定的な言葉が出やすくなりますよ。

(参考)
ベネッセ教育情報サイト|自分に自信がない子[教えて!親野先生]
ベネッセ教育情報サイト|「自信がない」と言う子どもにかける言葉[やる気を引き出すコーチング]
マナトピ|子どもに「正しい自信」をつける方法とは?12歳までに「自信ぐせ」をつけよう
家庭学習研究社|自分に自信を持てない日本の子どもたち
家庭学習研究社|子どもに自信を植えつける方法  ~その1~
All About|子どもの自己肯定感が低いのは親のせい?NG言動5つと高める子育て
ベネッセ教育情報サイト|上手に子どもを褒めて、自信をつけてあげよう!