一夜漬けやあんちょこなどで、試験前に必死で暗記に励んだ経験がある人も多いのではないでしょうか。これまでの日本の教育は、授業や教科書で学んだことを覚える「受け身の学び」がスタンダードでした。
しかし、グローバル化が進む今、それだけでは人間力(生き抜く力)が不足することに世界は気づいています。その学び変革の鍵となるのが「クリティカルシンキング(批判的思考)」。子どもたちが自分の力を存分に発揮し、豊かな人間関係の中で幸せに生きていくために、大人も知識を入れる必要があるようです。
科学が教える、子どもの “本当の成功” とは?
アメリカの発達心理学の権威でテンプル大学教授のキャシー・ハーシュ・パセック氏とデラウェア大学教授のロバータ・ゴリンコフ氏は、著書『科学が教える、子育て成功への道』の中で、40年以上にもわたる研究の結果、子どもが幸せになるための能力として、“6つのC” を提言しています。ここでいう “成功” とは、高学歴・高収入を基準としたものではなく、次のような人になることです。
他者と協力し、創造的で、自分の能力を存分に発揮する、責任感溢れる市民となり、社会を活性化する。
(引用元:キャリー・ハーシュ=パセック ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ著 今井むつみ 市川力訳(2017), 『科学が教える、子育て成功への道』, 扶桑社.)
この “成功” について、この書籍の訳者であり、慶應義塾大学環境情報学部の今井むつみ教授は、「成功とは『自分で自分が幸せだと思える』こと」だと話しています。
世間の基準ではなく、あくまでも自分の主観で幸せだと思い、自分に価値や意味を見出すことができる。また、自分がしていることをもっと深めていきたいと思えて、それが楽しい、生きがいだと思える人こそ成功しているといえるとわたしは考えます。
(引用元:Study Hackerこどもまなび☆ラボ|我が子の「成功」を願う親が、絶対に伸ばしてやるべき子どもの “力”)
子どもが幸せになるための能力【6つのC】
では、子どもが「自分で自分が幸せだと思える」ようになるための “6つのC” とは、いったいどんな能力なのでしょう? 前出の今井教授は、子どもが成功に至るための「いわゆる学力と同じくらい、あるいはそれ以上に大事なもの」と言っています。
子どもが幸せになるための能力【6つのC】
- コラボレーション(Collaboration)= チームワーク、共感力
- コミュニケーション(Communication)= コミュニケーション力、「話を聞く」スキル
- コンテンツ(Content)= 知識、情報収集、処理能力
- クリティカルシンキング(Critical Thinking)= 批判的思考、問題分析、解決能力
- クリエイティブ イノベーション(Creative Innovation)= 創造力
- コンフィデンス(Confidence)= 自信、自己肯定感
肝心なのは、これら6つの能力は生まれつきの性格とは別に、学びによって身につけられるということ。学びと成長はいつからでも可能ですが、早いに越したことはありません。
子どもも大人も、“6つのC” を意識して行動することで、成功を手にすることができるでしょう。
クリティカルシンキングとは?
“6つのC” の中で、クリティカルシンキングは要です。
膨大な情報が短期間でどんどん生み出される時代において、「一歩引いて考え、何が本当に必要か見極め、答える必要のある問いを選ぶ」ことがとても重要になってきます。コラボレーションやコミュニケーションによって集めた情報(コンテンツ)を生かして創造力を発揮し、正しい方向性を導き出すために、クリティカルシンキングは大きな役割を果たすのです。
得た情報を鵜呑みにするのではなく、さまざまなリサーチや状況判断を踏まえた熟考の末に自分の頭を使って自分自身の考えを導きだす思考能力は、暗記メインの勉強では得ることのできない、生きていくうえで最も大切な力となるでしょう。
クリティカルシンキングの必要性は認識されている
2020年改定予定の学習指導要領においても「物事を多角的・多面的に吟味し見定めていく力」を育むことの重要性が書かれています。クリティカルシンキングは、学校教育の場でも注目されているのです。
また、クリティカルシンキングを鍛えることでIQや問題解決力、創造力などが向上することがわかっています。
心理学者による研究では、400人以上の中学生に、1回45分間の「クリティカルシンキング」を鍛えるトレーニングを60回施したところ、著しく、言語理解力、発明的思考、IQが上昇したといいいます。(*1).
またイスラエルの研究者によると、678人の中学生を対象に、生物学のカリキュラムに「クリティカルシンキング」のレッスンを加えたところ、生物学のテストスコアだけでなく、日常生活での「問題解決能力」までもが向上したといいます。 (*2)
(引用元:AllAbout暮らし|生活の中で子どもの「考える力」がみるみる伸びる工夫)
これは、クリティカルシンキングを鍛えることで、物事を論理的にとらえ、「的確な判断を下す力」がついたということでしょう。
教えられたことを鵜呑みにしたり、周りの不確かな情報に振り回されたりしないように、子どもたちにはクリティカルシンキングを培ってもらいたいものです。
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“6つのC”、そしてクリティカルシンキングが、子どものこれからの人生において、とても重要であることがわかりました。次回は、どうしたらそれらの能力を身につけることができるのか、日常の生活の中でできることやそのポイントをご紹介したいと思います。
(参考)
学研出版サイト|第14回アメリカ人の論理的思考
ESSE Online|子どもの学力の差を生むのは親の6つの「Cの力」!経済力は必須でない
文部科学省|新しい学習指導要領等が目指す姿
キャリー・ハーシュ=パセック ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ著 今井むつみ 市川力訳(2017), 『科学が教える、子育て成功への道』, 扶桑社.
Study Hackerこどもまなび☆ラボ|我が子の「成功」を願う親が、絶対に伸ばしてやるべき子どもの “力”
AllAbout暮らし|生活の中で子どもの「考える力」がみるみる伸びる工夫