英語圏の幼稚園や小学校では、身の回りのアイテムや出来事などから好きなテーマを選び、クラスメイトの前でそれについて説明し、その後クラスメイトからの質問に答える「show&tell」という活動を行なっています。
長期休み明けには、夏休みや冬休み中の思い出をテーマにしたり、思い出に関連するアイテムを紹介したりすることもあります。今回は、show&tellの流れや身につくスキル、家庭での取り入れ方をご紹介しましょう。
show&tellって何?
show&tellとは、アメリカやカナダ、オーストラリアなどの幼稚園や小学校で行なわれる、クラスメイトの前で自分の好きなものや興味のあること、最近の出来事などについて発表する教育科目です。日本でも、プリスクールやインターナショナルスクールで取り入られています。
人前で何かを話すことは、子どもにとってはもちろん、大人でも難しいと感じる場合も珍しくありませんよね。そのため、show&tellは誰がいつ発表するのか日程が決められていることが多く、担当になった子どもは親と何をどのように発表するのか相談し、show&tellの準備をしておくのだそう。年少クラスで行なう場合は先生が発表者のサポートに入り、5~6歳くらいになるとクラスメイトとの質疑応答の時間が設けられます。
「自分の好きなことについて話す」という特徴から、初めは苦戦していた子どもでも、どんどんshow&tellが楽しくなっていき、早く自分の順番が来ないか待ち遠しくなることもあるようです。
■クラスメイトとの質疑応答
「そのワンピースはどんなときに着ますか?」
「家族とお出かけするときに着ます」
「そのワンピースはどこで買ってもらいましたか?」
「○○ショッピングモールです」
「ほかにはどんなワンピースを持っていますか?」
「水色のワンピースと、黄色のワンピースを持っています」
(おばあちゃんの家で撮影した写真を見せながら)「僕は夏休みにおばあちゃんの家に遊びに行きました。おばあちゃんの家には、いとこの○○くんと○○ちゃんも遊びに来ていたので、一緒にプールに行きました。夜はみんなでお寿司を食べました。また遊びに行きたいです」
■クラスメイトとの質疑応答
「プールではどんな遊びをしましたか?」
「ウォータースライダーで遊びました」
「おばあちゃんの家はどこにあるんですか?」
「福岡県という遠いところです」
「おばあちゃんの家まではどうやって行ったんですか?」
「飛行機に乗って行きました」
show&tell で身につくスキル
show&tellを行なうと、以下のような能力やスキルが身についていきます。
プレゼンテーション能力が身につく
show&tellは、プレゼンテーションに近いため、幼い頃から取り組むことで、プレゼンテーション能力が育まれていきます。また、人前で話すことにも慣れていくため、社会に出てからも自分の意見を堂々と言えるようになったり、周りに流されることなく自分の意思をしっかり持てるようになったりします。
自己肯定感が高まる
ニューヨーク在住のフリーライター・堂本かおる氏によると、show&tellを通して、自分の好きなものを「好き」と言うことや、それを先生やクラスメイトに共感してもらうことで、子どもの自己肯定感が高まるのだそう。また、ほかの子どもの好きなものについて話を聞くことで、多様性を理解することにもつながるのだとか。
人の話を聞く力が育つ
成蹊大学法学部教授の塩澤一洋氏によると、show&tellは「いい聴衆」になる訓練にもなるそう。show&tellでは、目の前で発表するクラスメイトに注目し、時に勇気づけたり、喝采したり、賞賛したりする場面があります。さらに、それに対して的を射た質問を投げかけて、発表している子どもの話をさらに引き出したりすることもあります。show&tellを繰り返すことで、聞き手の子どもたちが、発表する子どもの話をおもしろくするために貢献できるようになっていくそうです。show&tellは、発表する側と聞く側の両方にメリットがあるといえるでしょう。
家庭でもできるshow&tell
show&tellで求められるさまざまなスキルは、以下のような方法で家庭でも伸ばすことができます。
プレゼンテーションの機会を作る
『世界最高の子育て――「全米最優秀女子高生」を育てた教育法』(ダイヤモンド社)を出版し話題となったボーク重子氏は、毎晩の夕食時に、今日はどんなことがあったのか家族全員が1〜2分ずつ話す時間を設けているそう。「いつ、誰が、どこで、なにを、なぜ、どのように」の5W1Hを盛り込むよう、子どもをアシストしてあげるのがポイントです。また、子どもが何かを欲しがったときやどこかに行きたがったときに、その理由をプレゼンテーションさせるのも効果的。「それはどんな特徴があるのか、なぜそれが欲しいのか、もし手に入れた場合はどう使うのか」など、具体的に説明させることで、家庭でも自然にshow&tellができます。
語彙力をつける
発達心理学と認知心理学の専門家である、十文字学園女子大学の大宮明子教授いわく、子どもの語彙力を伸ばすためには、家庭で具体的な言葉を使った会話をすることが効果的なのだそう。たとえば、「あれ取ってくれる?」ではなく、「テーブルの上に置いてある本を私のところに持って来てくれる?」のように、面倒でも「こそあど言葉」を避け、きちんとした言葉で話しかけることが大切です。多くの家庭を追跡調査してきた同氏いわく、保護者がきちんとした言葉を使っている家庭で育った子どもは、語彙力が高いそう。ちょっとした積み重ねが、子どもの語彙力を育てていくのです。
日記を書く
幼児教育ガイドの上野緑子氏によると、プレゼンテーション能力の基礎となる自己表現力を養うには、日記を書くことが有効だそう。短くてもいいので毎日欠かさず日記を書き、それに対して親がコメントを書いてあげると、子どもは自分の表現に対して相手からリアクションがあることの楽しさを学べるといいます。親子で簡単な交換日記をするのも良いですね。
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show&tellで身につくプレゼンテーション能力や自己肯定感、人の話を聞く力は、子どもが社会に出てからも必要となるものです。ぜひ家庭でも取り入れてみてください。
文/田口 るい
(参考)
学研の子供オンライン英会話TalkingTime|これは真似したい!欧米では定番の“Show and Tell”って知ってる?
ホイクペディア|子どもの可愛いプレゼンテーション!!カナダのデイケアで行われている”Show and Tell(ショーアンドテル)”とは
WEZZY|「シャイ」は許されない?~みんなの前で「好きなもの」を発表するアメリカの “Show and Tell”
ASCII.jp|「show and tell」の文化
スタディウォーカー|日本の学校では絶対に教えてくれない「ショー・アンド・テル」とは?/リラックスイングリッシュ
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