教育を考える 2019.12.17

「早く!」はもう言わない。朝の準備が劇的に変わる3つのコツ

編集部
「早く!」はもう言わない。朝の準備が劇的に変わる3つのコツ

ただでさえ忙しい朝。親は自分の準備もそこそこに、子どもを起こして朝食を用意したり、身支度を手伝ったりと、毎日めまぐるしく過ごしています。それでも、そんな親の気持ちなどおかまいなしに、子どもはテキパキ準備してくれず、ついイライラして叱ってしまうことも。

今回は、子どもの朝の準備が遅くて困っている親御さんに向けて、いくつかの解決法をご紹介します。

朝忙しいのは “大人の都合”

ひと言で“朝の準備が遅い”と言っても、その原因はさまざまです。スッキリ目覚めることができず、ぼ~っとした頭でゆっくり朝ごはんを食べる、何度注意されてもなかなか歯を磨こうとしない、自分で洋服を選びたがるのに決めるまでに時間がかかる……。細かく分類すると、各家庭それぞれのお子さんによって朝の困りごとに違いがあるのではないでしょうか。

しかしそれは、子どもだけが原因とは限りません。たとえば親御さんも朝の時間に余裕がなく、自分自身が焦るあまり、子どもがモタモタ準備しているように見えたり、「せっかく朝ごはんを作ったのに全然食べてくれない」「言った通りに動いてくれない」など、自分のペースを乱されたように感じたりして勝手にイライラしていませんか?

朝の準備が劇的に変わる3つのコツ2

心理学とコーチングを使った独自のアプローチ法を提唱している東ちひろさんは、“朝が忙しい” のは『大人の都合』です」と断言しています。つい忘れてしまいがちですが、たとえ毎朝のことであっても、小さな子どもが大人と同じペースで物事をこなすのは難しいはず。東さんは、子どもはなんでも大人の2~3倍は時間がかかる、と心得るべき」といいます。それを踏まえたうえで、朝の時間の使い方を見直してみましょう。

子どもの行動は、親のちょっとした工夫で劇的に変わることもあります。まずは「こうあるべき」「ここまでやったんだから応えてほしい」といった理想や期待を捨てて、わが子がなぜ朝の準備に時間がかかるのか、という問題を冷静に分析してみましょう。その結果、具体的な解決策や効果的な親の対応策が見えてくるはずです。

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朝の悩み別・対策と解決法

子どもの朝時間にまつわる悩みは、大きく3つに分けられるのではないでしょうか。ここでは、具体的な解決策をいくつか提案していきます。

1. 朝ごはんを食べるのに時間がかかる!

1日を元気いっぱいに過ごすためにも、朝ごはんは毎日しっかり食べてほしいですよね。文部科学省の学力調査では、朝ごはんを毎日食べている子どもほど学力が高くなるという結果が出ています。また、東北大学加齢医学研究所と農林水産省が共同で行なった調査によると、『朝ごはんをほぼ毎日とり続けた人』たちは高収入層に固まりやすく、『朝ごはんを毎日は食べていなかった人』たちは低収入層に固まりやすいということが判明したそう。このように、朝ごはんを食べる習慣は、子どもの将来にまで影響及ぼすのです。そう考えると、ますます朝食の重要性を実感しますよね。

株式会社明治の管理栄養士・高梨麗さんは、「子どもが朝食欲がないのは、前日の夜の過ごし方や夕食の内容などが影響しています」と指摘しています。夜更かしをしたり、遅い時間に消化に悪い油っぽい食事を摂っていたりすると、朝になっても食欲がわきません。

文教大学教育学部教授で小児科専門医の成田奈緒子先生は、「『親が用意するから食べる』ではなく、『自発的に朝食を食べること』が大事」だと述べています。そのためには、まず子どもが食べやすいもの・好きなものを楽しく食べられる工夫が必要です。

「ごはんがいい? パンがいい?」「パンに塗るのはバターがいい? ジャムがいい?」と、子どものリクエストを聞いてあげるなど、些細なことでも自分の意見が反映されたら、子どもの食への興味が増します。フルーツが好きなら、バナナやりんごなどをヨーグルトを和えるだけでも「食べる習慣」を身につけさせることはできるはず。

また管理栄養士の新生暁子先生によると、「朝からたくさんの料理がテーブルに並んでいると、子どもにとってはかえってプレッシャーになり、食欲が減退してしまう」こともあるそう。品数は少なめでも多くの栄養を摂取してもらいたいなら、具だくさんのスープがおすすめです。前日の夜にたくさん作っておけば、朝の準備も楽ですよ。

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2. 歯磨きに時間がかかる!

朝、ダラダラと時間をかけて歯を磨いている子どもの様子を見ると、ついイライラしてしまうものです。「早く!」「急いで!」と急かす気持ちもわかりますが、それでは一向に現状は改善されません。

『12歳までに「自信ぐせ」をつけるお母さんの習慣』(CCCメディアハウス)の著者で、子育てセミナーを主催している楠本佳子さんは、あるモノ” を洗面所に置くことで解決できるといいます。

それは時計楠本さんいわく、どんなに「早くしなさい!」と言われたところで、子どもはまだ時間の感覚がつかめないので、理解が難しいそう。そこで洗面所にも時計を置いてあげて、長い針が10のところにくるまでに、歯磨きを終わらせようねと伝えると、目で見て理解できるので、行動に移しやすいのです。

もちろん洗面所だけではなく、家の中のあらゆる場所に時計を置いて時間を意識させるようにすると、朝の準備全般に役立ちます。「早く!」ではなく、具体的に「○分までに終わらせようね」と伝えるのがポイントです。

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3. 着替え・身支度に時間がかかる!

朝の身支度は、大人でも時間がかかるもの。子どもなら、なおさら親のサポートが必要です。東ちひろさんによると、子どもは2歳くらいから「自分でやりたい!」が強くなるそうです。けれどもちろん、技術が伴わないので時間がかかります。

そこで、親ができるサポートは、ボタンなどの難しい部分だけをさりげなく手伝ってあげること。自分でできることは自分でさせると、子どもは満足感を得られるので、その後の準備もスムーズになります。

また、「どうしても自分で服を選びたい!」というお子さんには、余計な口出しをせずにすべて任せてあげましょう。もし心配なら、どれを選んでもそれなりにまとまりが出るような洋服だけをタンスに入れておくと、ちぐはぐな組み合わせにならないはずです。

ほかにも、事前にできることはたくさんあります。たとえば、幼稚園や学校に持っていく荷物や小物は、一箇所にまとめて収納するようにするといいでしょう。毎朝あちこちから荷物を取り出すよりも、身支度セットとしてまとめて置いておけば、忘れ物防止にもつながりますよ。

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ちょっとの工夫で朝の準備が劇的に変わる!

ほかにも、朝の準備をスムーズにするコツをご紹介します。

■「朝のしたく表」をつくる

何度注意しても、言葉で伝えるだけでは子どもはすぐに忘れてしまうもの。そんなとき、自分がやるべきことが可視化できれば、パッと行動に移しやすくなります。『子どもの「困った」が才能に変わる本』(青春出版社)の著者で “お母さんサポートの専門家” として活躍中の田嶋英子さんがすすめるのは、「朝のしたく表」を作って壁に貼っておくこと。

「朝のしたく表」は、やることを “見える化” するのが目的です。シンプルに「○時◯分までに ごはん」「○時◯分までに きがえ」と書くだけでもいいですし、まだ小さいお子さんならば、時計の絵を描いてあげるとよりわかりやすくなります。

表を作成するときは、ぜひお子さんと話し合いながら一緒に作ってください。朝の手順や、やるべきことの全体像が把握できれば、よりスムーズに実行できます。貼る位置は子どもの目線に合わせて、できれば時計と同時に視界に入るように貼ってあげるといいですね。

また、こちらの「こども to do」シートをプリントアウトしても◎。「子どものやること」が、かわいいイラストになっているので、子どもの行動が驚くほどスピードアップしますよ。

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■声かけの工夫

朝バタバタしているときは、つい「早く早く!」と急かしてしまいますが、声かけを少し変えるだけでサッと動きだすことも。前出の東ちひろさんは、子どもの競争心をうまく利用する声かけ法を提案しています。

たとえば、ちゃんとできるのにどうしてもモタモタしてしまう場合、「お母さんが食器を洗い終わるのと、○○くんがお着替えするの、どっちが早いか競争だよ!」と誘ってみるといいそう。または「10数えるうちに終わるかな〜?」とタイムリミットを伝えるのもいいですね。コツは、毎回子どもに勝たせてあげること勝つことで気分が良くなり、その流れに乗って次の行動に進みやすくなります。

■起きる楽しみを用意する

成田奈緒子先生は、「朝子どもの機嫌を良くするとっておきの方法がある」といいます。それは、子どもが大好きなものを朝に持ってくること。

そもそも、朝なかなか起きられず不機嫌になってしまうのは、睡眠時間が足りていない=夜寝る時間が遅いことが原因です。そして、寝る時間が遅くなる子は、テレビ番組やゲームや動画など、その時間まで夢中になれるような大好きなものがあるということ。

成田先生は、それらを朝に持ってくると、朝の楽しみができて不機嫌が軽減されるといいます。実際に、子どもがハマっている戦隊モノのテーマソングを大音量でかけたり、大好きなりんごを朝食にしたりしたことで改善された例もあるそう。

朝の楽しみができる→夜早く寝る→ワクワクしながら起きる→見たいもの・やりたいことがあるから準備をテキパキする……このような良いサイクルができてしまえば、あとはグンと楽になりますよ。

***
一度習慣づいてしまうと、それを急に変えるのは大人でも苦戦します。朝の習慣を変えたいのなら、すべてを急に変えるのではなく、少しずつ、できる範囲から改善していきましょう。まずはお子さんの「朝の準備で困っていること」を分析して、親子で「どうしたらもっと簡単に、楽しくできるか」を話し合ってみるといいですね。

(参考)
あんふぁんWeb|急かさない!怒らない!平日の朝時間スムーズ乗り切り術
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|朝食で子どもの未来が決まる!? 恐ろしい……ウソのような「朝ごはん」の事実
「早寝早起き朝ごはん」全国協議会|「早寝早起き朝ごはん」運動について
週刊女性PRIME|あの“脳トレ”の川島隆太教授が力説!脳を見てわかった「頭のよい子の朝食、教えます」
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|不足しがちな「タンパク質」と「カルシウム」、朝ごはんに取り入れるコツ
洋泉社MOOK(2017),『子どもの脳を伸ばす 最高の勉強法』,洋泉社.
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|親子で学ぶ おいしい食育学【第3回】朝ごはん編
ぎゅってweb|毎朝準備が遅い子どもにイライラ「早くして!」よりも効果的な方法は
PHPのびのび子育て 2019年10月号,PHP研究所.
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