みなさんのお子さまは、正しい姿勢で勉強できていますか? 教科書を読んでいるときに猫背になっている、ノートに書くのに必死で前のめりになっている……そんな悪い姿勢で勉強してはいないでしょうか?
じつは、姿勢は脳の働きや勉強効率に大きな影響を及ぼします。勉強になかなか集中してくれないという悩みも、もしかしたら姿勢に原因があるかもしれないのです。
そこで今回は「勉強のときの姿勢」に注目。良い姿勢を維持するためのおすすめツールもご紹介します。
勉強のときはどんな姿勢が理想なの?
我が子に対して「背筋をまっすぐ伸ばして!」と注意する親御さまも多いかもしれません。あるいは、自分が子どもだった頃に、親や学校の先生からそう口酸っぱく言われた経験をお持ちの方も少なくないはず。そもそも、勉強のときの理想的な姿勢とはどんな状態を指すのでしょうか?
日本姿勢教育協会副会長で『姿勢がいい子はぐんぐん伸びる!』等の著書を持つ碓田拓磨氏は、「骨盤が立っている状態」を理想としています。
たとえば、椅子に浅く座って背もたれにもたれかかったような状態は、骨盤が傾いて寝てしまっている典型例です。机の上の教科書を読んだりノートに書き込んだりするために、首を前のめりにしなければなりませんから、自然と背骨が丸まってしまうことに。いわゆる猫背の状態ですね。
一方、骨盤を立てるように意識すると、その上につながる背骨も立ち、理想的なS字カーブが描かれるとのこと。「前かがみでお尻を一番後ろまでグイッと引いて座る」のがポイントだそうです。
勉強のときの姿勢が悪いことのデメリット
勉強のときの姿勢が悪いと、見た目が美しくないのはもちろん、肝心かなめの「脳」が働かなくなるという最悪の事態が引き起こされます。
前出の碓田氏は、「前かがみで猫背の状態だと肺が広がらないため、深い呼吸ができなくなる」と指摘します。すると、脳のエネルギー源である酸素の供給量が減ることに。よく「高い山に登ると酸欠状態になってクラクラする」なんて話を耳にしますが、それほど顕著ではないにしろ、やはり頭がボーっとして機能が鈍くなってしまうようです。
加えて、猫背だと首が前に出ることになるため、重い頭を無理な姿勢で支えなければいけなくなります。筋肉に負荷がかかり、肩こりや腰痛にもなりやすくなるのだそう。「肩が痛い」「腰が痛い」といった理由で仕事に集中できなかった経験を持つ親御さまも多いように、身体面の苦痛が、勉強に対する子どもの集中力を削いでしまう可能性だってあるのです。
みなさんのお子さまの中には、床に座ってローテーブルで勉強したり、季節によってはこたつに入って勉強したりする子もいるかもしれません。それ自体が悪いとは決して言えませんが……勉強のために作られている家具ではない以上、天板の高さが極端に低かったりして、子どもに無理な姿勢を強いている恐れがあります。「骨盤は立っているか?」「猫背にならず肺が空気を取り込みやすい姿勢になっているか?」ということを考えると、あまりおすすめできないということがわかるかと思います。
勉強のときの姿勢が良いことのメリット
ここまでの話を裏返せば、姿勢が良いことのメリットも自然と浮かび上がってきますね。つまり、姿勢を良くして肺が充分な酸素を取り込めれば、脳が働きやすくなるということ。実際の研究でも、それを示唆する結果が出ています。
たとえばサンフランシスコ州立大学は、125人の大学生を被験者に、「背筋を伸ばした姿勢」のあとに「前のめりの姿勢」に変えて(※あるいはその逆)、簡単な計算問題を解かせるという実験を行ないました。その結果、多くの被験者が「背筋を伸ばした姿勢のほうが計算しやすかった」という感想を抱いたとのこと。良い姿勢で勉強することで、主観的な計算能力が向上するのです。
また、小学生を対象にした「座り方と集中力に関する調査」でも、やはり背筋を伸ばして座ったときのほうが、その他の座り方に比べて問題の正答率が高かったことがわかっています。姿勢を正せば脳機能が活性化するのは真実のようですね。
骨盤を立てて背筋を伸ばす――勉強のときの基本として、まずはこれをお子さまに意識させてみましょう。もしそれが難しければ、“道具” を使うのも作戦のひとつです。
【勉強時の姿勢を正すための作戦1】「傾斜台」を使う
勉強するときの机といえば、天板が地面と平行になっているものが一般的ですよね。でも、天板に傾斜を持たせることで、学習効率が上昇するらしいのです。
岐阜県生活技術研究所が発表した「子どもに適した家庭用家具(学習机・椅子)の設計指針に関する研究 天板の傾斜が計算作業に与える影響」によれば、天板の傾斜角度を「0度(※通常のフラットな状態)」「10度」「20度」と変化させた際の計算作業の回答数を比較したところ、「10度」「20度」条件下で回答数の上昇が確認されたそう。同時に、「書きやすさ」「見やすさ」「快」といった、作業環境に関する心理的項目については、「10度」条件が高評価を得ました。
天板が傾斜があると、頭が前のめりになりすぎることを防げます。良い姿勢を維持できたことで、結果的に脳の働きが向上したのでしょう。
天板そのものの角度を変えられるデスクもありますが、こちらの「イージー ライティング ボード」は持ち運び可能なため、たとえばリビング学習の習慣があるお子さまでもスムーズに取り入れられるでしょう。傾斜角は、脳がよく働くと同時に、書きやすくて見やすい「10度」です。
【勉強時の姿勢を正すための作戦2】椅子を「バランスチェア」に変える
みなさんは「バランスチェア」というものをご存じですか? “座面が床と並行で、後ろに背もたれがあって――” というのが通常の椅子ですが、「バランスチェア」は “膝で体を支える” という仕組み。珍しい構造の椅子なので、どこかで目にして記憶に残っている方も多いかもしれません。
この仕組みを提唱したのは、ノルウェーのハンス・クリスチャン・メグソール氏。バランスチェアを使うことで骨盤が立ち、背骨が理想的なS字カーブを描けるようになるそうです。國新産業が販売している「バランススタディ」もバランスチェアの一種。子どもの成長に合わせて座面の高さを変えられるので、長く(大人になっても!)使えます。
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姿勢は “一生ついてまわるもの” です。勉強に取り組んでいると、つい姿勢が疎かになってしまいますが……じつは姿勢が勉強効率に影響を及ぼしているという重大な事実を理解したうえで、お子さまの姿勢改善に取り組んでいきましょう!
(参考)
プレジデント・オンライン|正しい座り方は、「背筋ピン」ではなく「お尻をグイッ」
Erik Peper, et al (2018),”Do Better in Math: How Your Body Posture May Change Stereotype Threat Response”, NeuroRegulation, Vol.5(2), pp67–74.(PDF)
森田晴彦(2019),『MBAでは教えてくれないリーダーにとって一番大切なこと』, 彩流社.
岐阜県生活技術研究所|子どもに適した家庭用家具(学習机・椅子)の設計指針に関する研究 天板の傾斜が計算作業に与える影響(PDF)
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