多くの親御さんは、子どもの身長を伸ばすために、食事や運動面でサポートしてあげたいと考えているのではないでしょうか。実際に、親御さん自身が身長によってメリット・デメリットを感じることがあったならなおさら、子どもには身長面での苦労をさせたくないと思うはず。
今回は、子どもの身長を伸ばすために知っておきたい「成長スパート」について解説していきます。
9割の母親が「子どもの身長を伸ばしたい」
雪印メグミルク株式会社が、小中学生の子どもをもつ母親500名を対象に実施した「子どもの理想の成長」に関する調査によると、約9割もの母親が「子どもの身長を伸ばしてあげたい」と回答しました。特に男の子に関しては、「父親以上に伸びてほしい」と願う声が85%にものぼり、身長を伸ばすことへの関心の高さがうかがえます。
子どもの身長は、ある程度遺伝によって決まります。そのため、あまり背が高くない親は、「子どもの背が伸びないのは私たち親のせい」と、子どもの成長を諦めがちです。しかし、当然ながら、身長は遺伝だけでは決まりません。
「同じ両親から生まれたのに、兄弟で体格が全然違う」「お姉ちゃんは165cmまで伸びたのに、私は150cmまでしか伸びなかった」など、身近な例はいくつもあるはず。つまり、身長は遺伝の影響を受けながらも、それ以外の要因も大きく関係しているのです。
身長を伸ばすためには、食事・運動・睡眠といった生活習慣が大きく影響することは周知のとおりですが、「子どもの身長がぐんと伸びるタイミング」を把握することで、その効果が何倍にもアップします。
■成長スパートとは
人間の一生のなかで、身長が急激に伸びる時期は2回あります。1回目は赤ちゃんのとき(第一次性徴)で、生後1年で約1.5倍も伸びます。次に大きな伸びを見せるのが、思春期と呼ばれる第二次性徴。男女ともに急激に身長が伸びるこの時期を「成長スパート」と呼びます。
女子は平均11歳で約8cm、男子は13歳で約9cmも伸びる「成長スパート」。みなさんも、「そういえばこの年頃に、身長がいっきに伸びた気がする」と思い出したのではないでしょうか。一般的には、男女ともに18歳頃には身長の伸びが止まると言われており、多くの人は成長スパートを意識せずに大人になります。しかし、この時期を把握して、身長を伸ばすことを意識して過ごせば、本来伸びる身長の限界を超えることも可能になるのです。
(画像引用元:順天堂大学|成長スパートってなに?)
“予測身長+4cm”も夢じゃない!?
まずは、両親の身長から割り出す「予測身長」を計算してみましょう。
■男子の予測身長
(両親の身長の合計+13)÷2+2
■女子の予測身長
(両親の身長の合計-13)÷2+2
たとえば、お父さんの身長が173cm、お母さんの身長が162cmだとします。娘の身長は何cmまで伸びると予測されるでしょうか。計算式に当てはめると次のとおり。
(173+162-13)÷2+2=163
娘の予測身長は「163cm」という結果になりました。
もちろんこの計算は“予測”なので、結果よりも大幅に伸びたり、逆に大きく下回ったりすることも十分考えられます。結果にとらわれて一喜一憂せずに、予測よりも身長を伸ばすためにできることを合理的に考えるようにしましょう。
西別府病院スポーツ医学センター長の松田貴雄先生によると、「予測身長よりも身長を伸ばすには、成長ピークの前に運動や遊びで体を動かすことが大切」だそう。また、順天堂大学スポーツ健康科学部先任准教授の鯉川なつえ先生は、「成長スパートに合わせて栄養、睡眠などをしっかりとれば、“予測身長プラス4cm”を目指せる」と述べています。
続いて、具体的にはどのようなことに気をつければいいのか、毎日続けられる工夫や、身長を伸ばすコツについて解説していきます。
成長スパート期に意識すべき3つのポイント
成長スパート期に、特に意識して取り組みたいのは次の3つです。日頃からしっかりと意識して管理している親御さんも多いかと思いますが、成長スパート期だからこそ効果を発揮する方法もあるので、ぜひ参考にしてください。
1. 適度な運動
骨は刺激を与えることで強くなり、伸びていきます。鯉川先生によると、身長を伸ばすためには次のような運動が効果的だそうです。
- ストレッチや体操(柔軟性を高める)
- 鉄棒などのぶらさがりの運動
- スキップやジャンプ、縄跳びなど(骨に刺激を与える)
- 水泳(持久能力を高める)
たとえば、鬼ごっこやゴム跳びなど、普段からお友だちと一緒に遊んでいる内容でも十分だということがわかりますね。鯉川先生は、「1日に60分程度」を目安にこのような運動をすることを推奨しているので、昼休みや放課後にお友だちと外遊びするようすすめてみましょう。ただし、無理な運動は関節への負担が大きくなるので、楽しみながら適度に運動できるようにサポートしてあげてください。
2. エネルギーバランスのとれた十分な食事
毎日の食事は、丈夫な体をつくるためにも、身長を伸ばすためにも欠かせません。成長スパート期は特にカルシウムの吸収率が高くなるので、積極的に摂取していきたいですね。
管理栄養士の新生暁子先生は、成長スパート期の食事で気をつけるポイントを次のようにまとめています。
- 骨を強くするカルシウムとマグネシウムの理想的なバランスは2:1
- ビタミンDでカルシウムの吸収を助ける
- たんぱく質と一緒にビタミンCを
- 亜鉛で新陳代謝アップ
たとえば、子どもが大好きな具だくさんのカレーなどがおすすめです。肉や魚介類でたんぱく質や亜鉛を、きのこ類に含まれるビタミンD、ビタミンCやミネラルは野菜類で摂取できます。また、カルシウムやマグネシウムが含まれるナッツ類をおやつにすれば、骨を強くする効果が期待できるでしょう。
3. 8〜10時間の睡眠
「寝る子は育つ」の言葉通り、睡眠と子どもの成長の関係は切っても切れません。眠っているあいだに分泌される「成長ホルモン」によって骨や筋肉は成長していくため、成長スパート期にはたっぷりと良質な睡眠をとらせるよう意識したいところです。
鯉川先生によると、成長スパート期に必要な睡眠時間は「1日8〜10時間」とのこと。小学校高学年にもなると、学校の宿題や習い事などで毎日忙しく、就寝時間も遅くなりがちです。さらに、学年が上がるにつれて、睡眠時間を削ってでもゲームやSNSに没頭してしまう子が増えます。
睡眠の専門家である文教大学教育学部・成田奈緒子先生は、「小学生なら23時以降、中学生なら午前0時以降に寝ている子どもは、自律神経失調症の症状を訴えるケースが多い」と指摘します。就寝時間が遅くなることで、日中やる気が出ずにぼーっとして過ごしたり、イライラして感情のコントロールができなくなったりするそうです。それにより、身長を伸ばすために必要不可欠な食事や運動がおろそかになることも懸念されるでしょう。
質の高い睡眠は、身長を伸ばす成長ホルモンを分泌するという大きな役割がありますが、それ以上に日中の過ごし方にも強い影響を及ぼすということを忘れてはいけません。朝すっきり目覚めて、しっかりごはんを食べて、学校で勉強と運動を一生懸命こなす体力と活力を蓄えるためにも、睡眠の重要性を改めて考える必要があるでしょう。
もしいま、「子どもの身長が低くて心配……」「両親ともに背が低いから、きっと子どもも伸びないだろう」とお悩みなら、現在の生活習慣を振り返ることをおすすめします。そして、「食事・運動・睡眠」のバランスが乱れていないか、足りないところはないか見直してみてください。
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小さい子どもをおもちのかたは、成長スパート期なんてまだまだ先のことだと思ってしまいますよね。けれど、幼いうちから正しい生活習慣を身につけることによって、身長を伸ばすことはもちろん、脳や心の成長にもプラスに働きます。いずれ迎える成長スパート期にスムーズにサポートできるように、早いうちから習慣化しましょう。
(参考)
FNNプライムオンライン|~小中学生の子どもを持つママに「子どもの理想の成長」を調査~「成長スパート期」、ママたちの関心は「勉強」よりも「体づくり」にアリ!? 男の子ママの約9割が、大人になった時に「身長パパ超え」を希望
オムロン|vol.154 「成長スパート」を知って、身長を伸ばそう
順天堂大学|成長スパートってなに?
ベネッセ ウィメンズパーク|第22回 身長はもっと伸ばせる!成長スパートを見逃さない
きのこらぼ from HOKUTO|子どもの“成長スパート”を見逃すな!(前編)
きのこらぼ from HOKUTO|子どもの“成長スパート”を見逃すな!(後編)
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|親子で学ぶ おいしい食育学【第2回】成長スパート編
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|なにより睡眠が基本! 親の「ブレない」態度が、こどもの脳を育てる