教育を考える 2020.8.24

リビングに花を飾っていますか? 「花育」で好奇心と創造力が育まれる理由

長野真弓
リビングに花を飾っていますか? 「花育」で好奇心と創造力が育まれる理由

疲れていたり、心が落ち着かなかったりするときに、光に照らされてキラキラ輝く木々の緑や、カラフルに咲く花々を見ると、癒やされて心が穏やかになること、ありますよね。意識していなくても、私たちは植物のいい影響をたくさん受けています。

この植物の癒やし効果は、子どもたちにとっても影響が大きいのです。今回は、農林水産省が推奨する「花育」についてご紹介します。

花を見るだけで「集中力」が向上する?

人類は進化の過程でほぼすべての期間を自然環境のなかで過ごしてきたため、自然に順応するようにできているそうです。だから、自然のなかに身を置くとリラックスできるのですね。

また、千葉大学環境健康フィールド科学センターが行なった、生花を用いた実験でも、人は生花を見るだけで副交感神経が活性化し、リラックス効果を得られることが証明されています。

JFPC(財団法人日本花普及センター)の調査によると、花には以下の3つの生理・心理的効用があると認められています。

色・形による効用
鎮静作用/高揚作用/心身の疲労回復/集中力向上など
香りによる効用
鎮静作用/高揚作用/心身の疲労回復/集中力向上/免疫機能向上など
触れ合いによる効用
精神的・身体的発達/社会的・感情的成長/創造力向上/コミュニケーション能力向上など
※園芸やフラワーアレンジメントなどの共同作業を通しての効果

ほかにも、環境改善効果(温度・湿度の緩和、空気清浄など)もあるそうです。これらの効果を知れば知るほど、花や緑のメリットを取り入れたくなりますね。

「花育」で好奇心と創造力が育まれる理由2

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子どもたちの “感じる心” を育む「花育」

人への生理・心理的効用が大きいとされている花や緑ですが、子どもたちへの「教育」という側面で見ても、かなりの効果があります。みなさん、「花育」をご存じでしょうか。

花育(はないく)とは、「花を教材に生命や個性について、子供などに考えてもらう活動」を指し、「食育(しょくいく)」「木育(もくいく)」に続く、教育的な要素を盛り込んでいる。農林水産省の定義によると「花卉(かき)の多様な機能に着目し、教育、地域活動に取り入れること」とある。

(引用元:Wikipedia|花育 ※太字は筆者が施した)

国も推奨する「花育」は、子どもたちの「感じる心」を育むものです。具体的な効果を見ていきましょう。

花育効果1:感謝する心と優しい気持ちが芽生え、命の大切さを知る

まず、花や緑が “モノ” ではなく “いきもの” であると気づきます。そして触れ合うことで、「愛おしい」「かわいい」、枯れてしまうと「悲しい」「でも咲いてくれてありがとう」など、さまざまな感情が生まれます。花や緑を通して、命の尊さを理解し、慈しみの気持ちが育まれるのです。

花育効果2:好奇心と創造力が育まれる

植物について調べたり、育てるための方法を学んだりすることで、子どもの興味や好奇心は刺激されます。摘んだ花でブーケをつくったり、好きな花から連想した物語をつくったり。花を使った「おままごと」などもいいですね。自然から得た創造力は個性を伸ばすための大切な要素となるでしょう。

花育効果3:思いやりの心が育ち、コミュニケーション能力が向上する

共同作業として学校や家庭で花を育てたり、大好きな人にブーケをプレゼントしたり――花や緑を交流に利用することで、子どものコミュニケーション能力が向上します。共同作業を通して、人とのつながりを広げるチャンスにもなります。また、人に優しくする気持ちや、相手を思いやる心も育まれるでしょう。

花育効果4:日本の四季を感じることができる

日本は四季がある国です。四季折々、きれいな花が咲き、人々はそれを愛でるために名所と呼ばれる場所に足を運びますよね。その “日本人ならではの感性” は、花で育むことが可能です。梅雨時期にはあじさい、夏にひまわりなど、季節の花々を見たり、家に飾ったりすることで、日本の自然を体感し、繊細な感性が自然と育まれていきますよ。

子どもたちの「感じる心」を豊かにするために、花や緑はとても効果のある素材と言えるでしょう。

「花育」で好奇心と創造力が育まれる理由3

家庭でできる「花育」活動

大人にも子どもにも効果があるのですから、「花育」活動をしないなんてもったいないですよね。さあ、家庭で「花育」を実践してみましょう。海外のガーデニング情報と花育のパイオニアからヒントを得た、ご家庭でもできる「花育」活動をご紹介します。

【おすすめ花育活動1】:子ども専用花壇をつくり、責任をもって花を育てる!

世界で “ガーデン好き” と言われているのは、日本とイギリス。筆者が以前見たテレビ番組では、自宅のガーデン内に「子ども専用花壇」をつくって、管理をすべて子どもに任せているイギリス人家庭が紹介されていました。大人はいっさい手を出しません。レンガなどを使って花壇をつくり、好きな植物を好きなレイアウトで植え、世話をし、枯れてしまっても処理をするのは子ども自身。 “命のサイクル” を学べるとして、イギリスでは子どものガーデニングが人気なのだそうです。

扱いやすいプランターなら、日本でも気軽に始められそうですね。もちろん、花材も子どもに選んでもらいましょう。収穫して食べられるプチトマトやハーブ、目に楽しいカラフルなお花がおすすめですよ。

【おすすめ花育活動2】:とにかく自由に! 花育フラワーアレンジメント

「花育」のパイオニアである高杉揚子さん(Flower HyggE代表)が行なっていた子ども向けワークショップを参考に、家庭で「花育フラワーアレンジメント」にトライしてみてはいかがでしょうか。

(1)花材を用意する
使う花は、お店で子どもと一緒に、または、親が選んだ何種類かのなかから、子ども自身に選んでもらいましょう。自然な姿を知るために、とげ抜きなどの下処理はしないでおきます。
(2)花材について学ぶ
どんな花なのか、産地や扱い方などを調べましょう。「花ノート」をつくってもいいですね。
(3)花器に活ける
花瓶でなく、アレンジした卵パックやペットボトルなどを使っても◎。個性が出て、アート作品のようになりますよ。吸水スポンジに花を挿すアレンジもおすすめです。あとは自由に、選んで、切ったり挿したりと、アレンジメントを楽しむだけ。親はいっさい手出し口出しをしないようにしましょう。それが一番のポイントかもしれません。

このフラワーアレンジメントの最終的な目的は、「生命の大切さを学ぶこと」。品川区の取り組みである環境学習講座「花育! 自然に親しむ心と感性を育てよう」のなかで、高杉さんは「花育はただのフラワーアレンジメントではない」とし、以下のように語っています。

花は、五感でいう、視覚・嗅覚・触覚を使うことができます。花に触れる・体験することで、子ども達は大自然や芸術からの感動・感激を満たすことができるのではないでしょうか。「花育」を通して、子ども達に命の大切さ・喜びなど、豊かな心を育てることが大切だと私たちは考えます。

(引用元:品川区環境情報活動センター|花育!

また、ルールを設けず、自由に活けることで個性を養うという効果も期待できますよ。遊び感覚で気楽に楽しめ、花を飾ればお部屋が華やかになり、子どもも大人も家族みんながハッピーになる「花育」。すばらしい情操教育ですね。

***
日本では、お誕生日などのお祝いごとなど、特別なシチュエーションで花を贈る習慣は根づいていますが、いつもの生活で部屋にお花を飾る人はまだまだ少ないようです。ぜひ「子どもと一緒に学び、楽しむため」という新しい視点で、「花育」を実践してみてくださいね。

(参考)
みずほ銀行|花きの視覚刺激がもたらす生理的リラックス効果
一般財団法人日本花普及センター|「花と緑の効用ミニブック」と「花と緑の効用・機能のデータ集」との関連
Wikipedia|花育
全国花育活動推進協議会|花育の効果
お茶の水女子大学|お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター『幼児教育ハンドブック』5-7 環境教育の指導:自然との共生を学ぶための活動
農林水産省|特集1 花のある暮らし(7)
東洋経済オンライン|“花育”が人気、子どもの個性がスクスク育つ?
Flower HyggE
品川区環境情報活動センター|花育!