今月は子どもの「友だち付き合い」がテーマです。
子どもは子ども同士で関わり合いながら、いろいろな経験をして成長していきます。したがって、子どもにとって友だちの存在はとても大きいものです。
最近は、友だちとうまく関われない子たちも出てきていますが、子ども自身は常に友だちとの関わりを求めています。今月は、子どもたちの豊かな友だち付き合いのためにはどんなことが大切か、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
子どもの友だち付き合いは年齢により変化する
子どもの友だち関係は、年齢(発達段階)によって変化していきます。一般的には次のように、友だち作りの要因が移り変わっていくと言われています。
【小学校低学年】
近接要因~幼稚園時代に仲良しだった、近所に住んでいる、など
功利的要因~ものをもらえる、貸してくれる、教えてくれる、など
【小学校高学年】
情緒的要因~親切、やさしい、快活、温和、相手の性格が好き、など
能力的要因~勉強ができる・サッカーがうまいといった知能や運動能力に憧れる、など
(参考:改訂・保育士養成講座編纂委員会編(2007),『保育士養成講座 第4巻 精神保健 改訂第3版』,全国社会福祉協議会.)
それ以外にも、年齢に関係なく趣味やスポーツの好みが合うなどの「類似的要因」もあります。この中で特に気をつけたいのが「功利的要因」でのつながりです。たとえば、友だち欲しさにものをあげたり、自分のお小遣いで友だちのおやつまで買ってあげたりすること(おごる、おごられる)でつながっている友だちがいると、悪い方向にエスカレートする恐れもあるので注意が必要です。
年齢別要因のほかには、今日の社会や家族構成の変化も、子どもの友だち付き合いに大きく影響を与えているように思います。
昔はきょうだいが多く、その中でもまれながら人間関係を学ぶ機会がたくさんありました。しかし今は、一人っ子や少ないきょうだいしかいない家庭が増え、「家族内で子ども同士の関わり方を学ぶ機会」が少なくなっています。そのため、大人とは関われるのに、子ども同士の関わりができない子も出てきているのです。
大人は、子どもの気持ちや状態を察して声をかけたり、必要に応じた関わりを子どもに対して持つことができます。ですが、子ども同士ではそんな気遣いができませんので、どうしても自分から声をかけたり気持ちを伝えたりしないと、相手に伝わりません。一緒に遊びたいときには「仲間に入れて」と自分から声をかけることができればいいのですが、家族内で子ども同士の関わりを学べない今の子どもたちの中には、それができない子もいるのです。
皆さんのお子さんをはじめ、身の回りにそのような子がいる場合には、特に低学年であれば、大人が少しだけ手伝って「自分で話してごらん」とフォローしてあげたり、相手の子どもたちに「誘ってあげたら」と促したりすると、次第に子ども同士での関わりができるようになりますよ。
友だち付き合いが上手な子と苦手な子の違い
小学校に入学したての頃は、多くの子どもたちがクラスの中で、お互いの様子をうかがっています。上に書いたように、同じ幼稚園や保育園から来た子がいれば、その子たちだけでつながっているものです。しかし、席が隣になったり、勉強のグループが一緒になったりすることで、次第に新しい友だちができていきます。
一方で、はたから見ているといつもじっと周りの子たちの様子を見てはいるのに、自分から関わっていかない子どもや関わっていけない子どももいます。こういう場合は、その子どもの性格にもよりますが、それまでの経験が影響していることが多いようです。やはり、きょうだいの多い子どもは周りへの働きかけも活発だったり、周りから声をかけられるとすぐに仲間になれたりします。もちろん、一人っ子でもとても活発なお子さんもいますよ。
また、自分から積極的に周囲に関わっていくのに、友だち関係がうまく作れない子もいます。それは、とてもわがままだったり、言葉が乱暴だったり、思うようにいかないと拗ねてしまったりする子です。たとえば一人っ子だと、どうしても自分の言い分が通りやすかったり、我慢したりする場面が少ないので、子ども集団の中でもそのような傾向が出てしまうことがあります。この場合は、少しずつ家庭でも意識して、人との付き合い方を子どもに学習させていくことが大切です。
ほかに最近気になることとしては、異年齢集団の遊びが消失していることや、公園で一緒にいてもそれぞれがゲームを持ち、ゲームを介在しての関わりしかしていないケースが増えていることも挙げられます。子ども同士が五感を使って関わりながら、楽しい、悔しい、嬉しい、悲しいなどの体験をする場面が極端に少なくなっているのです。このあたりをどう取り戻していくのかが、社会的にも大きな課題だと思います。
親子間で「友だち付き合いのルール」を作れば安心
親として、我が子の友だち関係はとても気になるものですよね。学校の行き帰りに声をかけて誘ってくれる近所の子がいたり、友だちと一緒に楽しそうに話をしながら下校してきてくれたりすると安心できますが、どんな子と友だちになっているかも気になるところ。日頃から、自分の子どもがどんな友だちとどのような付き合い方をしているのかを把握しておくことが大切です。
言葉や行動が乱暴な子ども、嘘をつく子ども、お金遣いの荒い子どもなど、親から見てとても気になる子どもはいます。でも「あの子とは遊ばないで」とは、なかなか言えないものです。一番いいのは、気になる子どもの言動があれば、自分の子どもでなくても「いけないことはいけない」と注意したり、その親御さんに伝えたりすること。ですが、相手がどのような親御さんかわからなければ声はかけにくいでしょう。
そんなときは、学校の保護者会などを利用するといいと思います。特定の「○○ちゃん/くん」の問題としてではなく、子どもたち全体の問題として話題にしながら、親同士が協力して子どもたちを見ていけるようにできるといいですね。学校には多くの親御さんの相談が入りますが、その中にはもちろん子どもの友だち関係に関しての相談も多くあります。学校では、相手の親御さんに伝えたり、子ども同士に考えさせてどうしたらよいかを学ばせたりして、対応しています。友だち関係に関することは大事な問題ですから、困ることがあれば学校に相談してみてもいいと思いますよ。
それから、子どもに絶対にやめさせるべきことも知っておいてください。それは、社会的にタブーとされていることはもちろんですが、「モノをあげる」「大切なものを貸し借りする」などのことです。子どもたちの間では、ゲームソフトの貸し借りをしたり、自分のお小遣いで友だちにおごってあげたりする場合がありますが、「それはやっても、やられてもいけない」としっかり教えておきましょう。「○○ちゃんにゲームソフトを貸したら、返してもらえない」などというトラブルに発展しかねません。
また、親が外出中の友だちの家に入って、冷蔵庫を勝手に開けてものを食べたりする子もいます。そういうことは「しない、させない」が大事な約束。友だちを家に呼ぶ、あるいは友だちの家に行く場合はしっかりルールをつくり、それが守られないようなら、親がいないときは家の中では遊ばせないことです。
子どもと親の感覚は違いますし、親が子どものすべての友だち関係を見ることができるわけではありませんので、気になることがあれば子どもと話し合うことは大切です。とはいえ、必ず守るべきルールを決めたあとは、基本的には見守りの姿勢でいるようにしたいものです。子どもは子どもなりに、友だち関係を築いているのですから。
人と関わり遊ぶ力があれば、いずれ新たな友だちもできる
ではここからは、子どもの友だち付き合いに関する3つのお困りごとに、アドバイスをしていきたいと思います。
【親御さんからの質問1】
子どもに学校での様子を聞くと、いつも、同じ園出身の特定の子とばかり遊んでいるようです。もしかしたら、新しい友だちを作るのが苦手なのかもしれません……。「友だち100人」とまではいかなくても、もっと交友の輪を広げてほしい。子どもに何と言ってあげたらいいでしょうか。
はじめにお話ししたように、低学年では近接要因が強く働くので、どうしても同じ園出身の友だちと遊ぶのが自然です。しかし、学校で席替えやクラス替えがあったり、いろいろな活動を体験したりするなかで、次第に友だち関係は変化していくもの。同じ園出身のお子さんと遊ぶ力があれば、次第に友だち関係も変わっていきますよ。
「もっとほかの子とも遊んだら?」などと言うよりも、「今日も○○ちゃんと遊べてよかったね」「いつも××くんと遊ぶと楽しいよね」とまずは共感してあげましょう。今のお友だちとどのような関係を築いているのかを見守り、支配したり支配されたりすることなく、対等で友好的な関係が築けていれば大丈夫です。
子どもが困っていなければ、静かに見守って
【親御さんからの質問2】
我が子は一人っ子なので、友だちとの距離感をつかむのが苦手な様子。一方、周りの兄弟姉妹がいる子を見ると、人付き合いの仕方を心得ている感じがします。お友だちとの上手な付き合い方を教えたいとは思うものの、親として自分の経験を話すくらいしか思いつきません。なにかいい方法はありますか?
実際子どもたちを見ていると、ご質問のような光景はよく見られます。上でお話ししたように、きょうだいの有無により友だち付き合いの得手不得手はある程度出てくるものですが、子どもは子どもたち同士の関わりの中で、友だち関係の築き方を自然に学習していきます。大切なことは、「自分から挨拶をする」「相手の話をしっかり聞く」「自分が間違ったことをしたときは素直に謝る」「約束を守る」などのマナーとルールを、ご家庭でしっかり教えておくことです。
低学年ではなかなか新しい友だちができなかった子どもでも、中学年や高学年になるにしたがい、友だち関係は豊かになっていきます。また、子どもによって友だちが多い子・少ない子がいますが、子どもの個性を尊重し、子どもが困っていなければ親があまり心配しすぎないで静かに見守ってあげましょう。
「気になる言動をとる友だち」との付き合い方は、こう教える
【親御さんからの質問3】
わがままでちょっとズルいクラスメートがいます。自分の意見を通したいあまり、ウソをついたり、うちの子を言いくるめようとしたり……。親としては、内心そのような子とは距離を置いてほしいと思うのですが、正直にそう伝えていいでしょうか? それとも、これも社会勉強と考えて、口を出さずに放っておくべきでしょうか?
親が友だち関係で一番心配するのは「言動が気になる」お子さんとの関係ですね。「その子と遊ぶのはやめなさい」と言いたくなりますが、人生の中ではいろいろな人とうまく付き合っていかなければなりません。
子どもにとって一番いいのは、自分が嫌だと思ったり間違っていると感じたりしたときに、「いやだ」とか「そういうことはやめて」など、子ども自身が自分の言葉で相手に伝えられるようになることです。親も「一緒に遊ぶのはやめなさい」と言うよりは、「嘘をつかれたときはどうすればいいの?」と対処の仕方を子ども自身にしっかり考えさせ、「お母さんならこう言うけど」とヒントを与えてあげるといいでしょう。
気になる言動をしがちな子も、生まれつき嘘つきであったりずるかったりするわけではなく、それまでの生育環境の中でそうならざるを得なかったのかもしれません。最近ではよその子どもを注意したり叱ったりする大人が減ってきていますが、そんな友だちが遊びに来たときは、自分の子どもと同じようにやさしく接しながら「いけないことはいけない」としっかり注意して育ててあげる視点を持てるといいですね。
親子それぞれが、豊かな人間関係を築いていけるように
「友だち付き合い」は、子どもが今後社会の中で生きていくうえでとても大切な力をつけていく手段です。特に学校では、子どもは知識だけでなく、ほかの子どもや先生たちとの関わりを通して社会で自立していくための力をつけていきます。
その学校で、友だち関係がうまくいかなかったり、いじめの問題を抱えてしまったりする子が少なからず出ていることは、とても残念なことです。こうした心配がある場合は、親がしっかりと受け止め、解決のための手立てを探ってあげる必要があります。お子さんが友だち関係でつまずいたり悩んだりしていることがあれば、必ず相談にのってあげましょう。それ以外は、心配しすぎず子どもの主体性を尊重して見守ってあげることです。
近頃では子ども会や地域行事が少なくなり、子どもたちが地域内で豊かな人間関係を築く場が減少しているという話も耳にします。しかし、そうした状況を意識して積極的に地域活動をつくり上げている親御さんもいらっしゃいます。私の経験ですと、親御さんが積極的にPTAや地域の活動に参加され他者との関わりが多いと、自然に子どもたちも友だちができたり、人と関わることがうまくなっていくようです。子どもが豊かな友だち関係を築いていけるよう、親自身も、自らの人付き合いの仕方に気を配っていけるといいのかもしれません。
(参考)
改訂・保育士養成講座編纂委員会編(2007),『保育士養成講座 第4巻 精神保健 改訂第3版』,全国社会福祉協議会.