あたまを使う/教育を考える/サイエンス 2019.12.6

「ママも苦手だったの」はNG!? 子どもを算数嫌いにする “禁句” とは

編集部
「ママも苦手だったの」はNG!? 子どもを算数嫌いにする “禁句” とは

みなさんのお子さんは、「算数」はお好きですか?

2013年に学研総合研究所が行なった調査では、小学生の嫌いな教科の第1位は「算数」、そして、なんと好きな教科の第1位も「算数」という結果が出ています。

算数の好き・嫌いが分かれるきっかけは、どのあたりにあるのでしょうか。親が知らず知らずのうちに子どもを「算数嫌い」にさせてしまうNGワードをご紹介します。

算数が嫌いになるきっかけは「九九」?

「入学してすぐの頃は、算数を楽しんでいたのに……」そうお嘆きの方も多いのではないでしょうか。

小学1年生の頃は、おはじきや計算カードを使って、足し算・引き算を張り切って勉強していたけれど、学年が上がるにつれて、算数の勉強に気が進まなくなってしまったお子さんもいることでしょう。どうやら、算数には、各学年で「つまずきポイント」があるよう。1年生では「繰り上がり・繰り下がりの計算」、2年生では「九九」「単位」、3年生では「割り算」などが「つまずきポイント」に当てはまります。

なかでも、低学年の最大の難関といえば「九九」。最初に習う5の段は、1年生のころから5のかたまりや10のかたまりを作る練習をしているので、子どもたちもすんなり理解できるよう。2の段も、実体験と結びつけて理解しやすいため、スムーズに進みやすい段です。しかし、3の段、4の段……と増えていくにつれ、徐々に苦戦する子が増えてきます。6の段や7の段ともなれば、ひたすら呪文を唱える苦行のように感じる子も多いことでしょう。

ベネッセ教育情報サイトが実施したアンケートによると、子どもたちにとって最も難しいのは7の段で、43.4%が「つまずいた・少しつまずいた」と回答したそう。半数近くの子どもたちが、低学年のうちに算数につまずいてしまうということです。好き・嫌いが分かれるのも無理はないかもしれませんね。

また、実生活で使う数はまだしも、子どもたちにとって見慣れない数のかたまりや、cm、mmの計算、mlなどの単位、道のりと距離の違いなどに対しては、概念をつかむための想像力がまだ十分に働かず、理解しにくいようです。

子どもを算数嫌いにする “禁句” とは2

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算数嫌いを招く、3つの「NGワード」

算数の「つまずき」を乗り越えるには、親のサポートが重要です。じつは、親の何気ない言動も、子どもの算数嫌いを招く要因になり得ます。お子さんを算数嫌いにさせてしまう、NGワードをご紹介しましょう。

NGワード(1)「どうしてわからないの?」

算数が得意だった親御さんや、高学歴の親御さんが「何度も同じことをやっているはずなのに」「学校で先生の話をちゃんと聞いているのだろうか」と言ってしまいがちな言葉だそう。

どうしてわからないのかーーこれはお子さん自身もわからないのです。引く数、引かれる数の意味がわかっていない、繰り下がりが10のかたまりなのか、時間のような60なのか区別できないなど、ちょっとしたことが原因になっていることも。

ベネッセコーポレーションの教育総合研究所顧問を務める八木義弘先生いわく「どうしてできないの?」「こんな簡単な問題も解けないなんて、算数が苦手なんだね」といった言葉ばかりかけていると、子どもは「自分は本当に算数が苦手なんだ」と感じ、本当に苦手になってしまうのだそう。お子さんにこういった言葉をかけるのは、グッと堪えましょう。

 

NGワード(2)「もっと速くやらなきゃ」「正確に!」

「小学校低学年で習う内容くらいは、速く正確に計算ができて当然」という気持ちから、口にしてしまうことはありませんか?

3年先まで予約が埋まっているカリスマ家庭教師・安浪京子さんは、「速く」「正確に」といった言葉は漠然としすぎていると言います。子どもは、どうすれば「速く」「正確に」解くことができるのかわからないため、言えば言うほど焦ってミスをしてしまうのだとか。

漠然とした表現ではなく、「数字の5と6を見間違えているよ。わかるように丁寧に書いてみたら?」「筆算は数字の位をまっすぐそろえて書くと間違えないよ」など、もう一歩踏み込んだ具体的なアドバイスが効果的です。

 

NGワード(3)「パパ(ママ)も算数は苦手だったんだよ」

親は共感しているつもりでも、子どもにとっては「だから僕(私)は算数ができないんだ」とやる気がダウンしてしまう危険な一言です。前述の安浪さんは、こうした言葉は子どもに「自分は算数ができない遺伝子を持っている」と刷り込んでしまうのだとか。

親御さんご自身が算数に苦手意識をもっているのでしたら「え、何なに? もう1回、そこどうやるのか教えて」と語りかけ、子どもに先生役をやってもらうのがおすすめです。親が「わからないことを教えてほしい」と頼むと、子どもは喜んで教えてくれるもの。アウトプットすることによって、学習内容も定着し、人に伝えるトレーニングにもなり、お子さんに自信がつきますね。

 
子どもを算数嫌いにする “禁句” とは3

算数嫌いの子どもには、こんなサポートをしよう

算数への苦手意識を取り除くためにおすすめなのは、身の回りにあるものを使って、生活と結びつけること。ピザを切り分けながら分数の説明をしたり、計量カップを使ってものを測ったりして、具体的なイメージをつかみやすくするのがおすすめです。

また、前出の八木先生は、普段の生活の中で「りんごが2個、梨が4個あるね。全部でいくつかな?」「チョコレートが5個あるね。○○ちゃんが2個食べたら残りはいくつかな?」といった会話をたくさんすることをすすめています。四則計算を使うシーンを日常で何度も経験することによって、数の感覚が育ち、計算の概念をつかんでいくことができるのだとか。

子どもの発達段階において、抽象的な事柄を把握できるようになるのは9~10歳ごろ。いわゆる「9歳の壁」「10歳の壁」「小4の壁」といわれる時期です。それまでは、経験の積み重ねとして、五感を刺激できるような実物を取り入れてサポートすると良いでしょう。

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今回ご紹介したNGワード・NG行動、思い当たる方も多かったのではないでしょうか。励ますつもりの「ママも算数が苦手だったの」といったセリフは、子どもが学校を卒業するまでは封印しておいたほうがよさそうですね。

(参考)
学研教育総合研究所|小学生白書Web版2013年3月調査「小学生の日常生活に関する調査」好きな科目・嫌いな科目
中学受験ナビ|算数を学ぶ小学2年生がつまずきやすい問題3つとその対策
HugKum(はぐくむ)|【小学生が算数好きになるためのすべて】学年別つまずきや教え方、おすすめ本&問題集まで
プレジデントオンライン|子供を必ず算数嫌いにする”NGな教え方”
AERA.dot|子どもを算数嫌いにしてしまう「5大思い込み」とは?
ベネッセ教育情報サイト|低学年の子供を算数好きにするためには?
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