学校に塾に習い事……。子どもたちは、大人に負けないくらい忙しい日々を送っています。疲れた心と体を休めるためには、家が子どもにとって安心してくつろげる場所でなければなりません。
しかし最近は、家でくつろげない子どもが増えています。今回は、家でくつろげない子どもが増えている理由や、子どもがくつろげるようにするためのポイントをご紹介しましょう。
「家でくつろげない」子どもが増えている!?
ベネッセ教育総合研究所が、2013年11月に全国の小学5年生~高校3年生を対象に実施した「第2回 放課後の生活時間調査」によると、「忙しい」と感じている小学生は51.2%、「もっとゆっくりすごしたい」と感じている小学生は74.2%もいました。
また、同研究所が2017年に行なった「学校外教育活動に関する調査」では、小学生の約8割が、スポーツや楽器のレッスンなど、何らかの習い事をしているという結果も出ています。
このように、現代の子どもたちは、日々の学校に加えて、放課後に塾や習い事が入っている場合が多く、家でゆっくりと過ごす時間が限られているのです。
「家でくつろぐこと」が子どもの成長に欠かせない理由
教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は、「ぼーっとする時間」は人間の成長にとても重要なものだと述べています。
「ぼーっとする時間」は人間の成長にとても重要なものです。そういう時間があって、「暇だな」「なにをして過ごそうかな」と子どもははじめて自発性を発揮します。そして、「じゃ、本を読もう」「映画を観よう」などと考える。そこで、「なにをしているときに自分は幸せなのか」と知る。それが「人生の羅針盤」になるのです。
その羅針盤を持たないまま成長すると、人生のあらゆる場面で進むべき方向を自分で決められない人間になってしまいます。たとえどんなに優れた能力を秘めた人間であっても、その能力を使うこともできないでしょう。
(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには “決定的に足りない” 時間がある)
家でくつろぐことは、たくましく生き抜いていくための決断力や自立性にも影響するといえるでしょう。先の見えない社会を生きていく子どもたちにとって、「ぼーっとする」ことは非常に重要なのです。
また、テレビやパソコンなどの外部からの刺激をシャットアウトしてぼーっとすると、脳が「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という活動をするようになり、今までに蓄積した知識を前頭葉にたぐりよせる訓練になるそうです。精神科医の樺沢紫苑氏いわく、このDMNによって情報が整理されることで、新しい発想が生まれやすくなるそう。子どもの発想力を伸ばすためにも、ぼーっとする時間は重要なのです。
子どもが家でくつろげないのは親のせい!?
子どもが家でくつろげないのは、塾や習い事で多忙な日々を送っていることが関わっています。その背景には、親の「自分自身の不安を解消したい」という思いがあるようです。
前出のおおた氏いわく、親は子どもにたくさん習い事をさせることで「この子はちゃんと生きていけるだろうか……」という自分自身の不安を解消しようとしているのだそう。
しかし、これから子どもが生きていく時代は、親世代の価値観では通用しない部分も多いため、親が「こうしたほうがいい」と考えて子どもに習い事などをさせることは、あまり意味がないとも言えるそう。習い事は、子ども自身が本当にやりたいのかどうかをしっかりと判断することが大切です。
子どもが家でくつろげるために親ができること
最後に、子どもが家でくつろげるようになるためのポイントを紹介します。
子どものスケジュールを見直す
前述の通り、習い事や塾などで多忙な日々を送ることは、子どもが家でくつろぐ時間を減らしてしまいます。子どもと相談しながら、習い事や塾、学童保育の日程を見直してみましょう。親の仕事の都合などでどうしても難しい場合は、休日には目一杯ぼーっとする時間を与えることが大切です。
だらけることは「子どもの心身の回復」であることを理解する
国立大学附属学校・小学校教諭の松尾英明氏いわく、「学校で、成績だけでなく人格的な面も含めて『本当にすばらしい』と賞されるような子どもは、じつは家庭でダラダラしていることが多い」のだそう。松尾氏は、子どもは本来自由で制約のない存在であるため、ルールの多い社会では心身ともに “不自然な状態” を求められている状態だと言います。そこから回復するためには、家でぼーっとする時間を過ごすことが重要であるとのこと。ぼーっとすることは、ただ怠けることとは違い、子どもにとって大切な時間であることを理解しましょう。
子どもを「待つこと」を意識する
ぼーっとする時間が大切だとはわかっていても、いつも家でダラダラしている子どもを見て「このままだらしない人間になったらどうしよう……」などと不安になってしまう親は珍しくありません。しかし、教育評論家の親野智可等氏は、ぼーっとしていたりダラダラしていたりする子どもを「待つこと」こそが大切だと言います。親野氏いわく、子どもの成長には時間がかかるため「今の状態を許したら、一生そのままになるかも」などと思う必要はないとのこと。子どものやる気の芽が出るときを待ちながら、子どもが「自分のことをわかってもらえている」「受け入れてもらえている」「愛されている」と感じられるよう、「○○ができてたね」「○○してくれてありがとう」などと子どもの小さな成長やちょっとした長所を褒めましょう。こうして、親子の信頼関係を築いていくことが重要です。
すると、いずれ子どもがやる気になったときに、親からの手助けやアドバイスをスムーズに受け入れるようになると、親野氏は言います。
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家でぼーっとくつろぐ時間は、子どもの成長にとって非常に大切なものです。日々のスケジュールや子どもへの接し方を見直し、くつろぐ時間をたっぷりと確保しましょう。
文/田口 るい
(参考)
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|発想力がぐんぐん伸びる! 子どもの脳を休ませる “ぼんやりタイム” が必要な理由
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには “決定的に足りない” 時間がある
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