芸術にふれる/アート/デザイン 2018.9.22

【絵の世界は自由】子どもの視点や考えを尊重し寄り添うことが大切

【絵の世界は自由】子どもの視点や考えを尊重し寄り添うことが大切

クリエイティビティ(creativity)とは、創造的なこと創造性独創力です。

教育改革が進められる今、周りをアッと驚かせるような創造力は、子どもたちに必要なスキルのひとつと言えるでしょう。

そんなクリエイティビティを伸ばすために大切なことを、様々な分野で活躍中のイラストレーター・サタケシュンスケさんに教えていただきました。

第1回目となる今回は「子どもの視点や考えを尊重する」というお話ですが、どうやら私たち大人が考えているよりも子どもたちの想像力は豊かなようですよ!

イラストレーターという職業について

はじめまして、イラストレーターのサタケシュンスケと申します。5歳(男)、3歳(女)そして0歳(男)、3人の子どもと妻と一緒に神戸で暮らしております。子ども向けのクリエイティブワークショップに関わっていることがきっかけで声をかけてもらい、このたびこうして文章を書く機会をいただきました。

この連載では「子どものクリエイティビティと育児について」というテーマで、クリエイターとして、また3児の父親としての立場から考える子どもの創造性や育児についてのお話をします。

まずは私の職業について紹介させてください。イラストレーターといっても様々なジャンルがありますが、私は子どもやファミリー向けの絵が中心です。今手がけているお仕事も、子ども向けの学習教材や玩具、衣類や雑貨、また育児や教育に関する出版物などが多いです。

【絵の世界は自由】子どもの視点や考えを尊重し寄り添うことが大切2

昨年は初めて絵本も出版しました。子育て中ということをご存知いただけているからなのか、ちょうど我が家の子どもたちが対象年齢となるものに関わることが多く、なんだか不思議なご縁を感じています。自分の子どものためにもなると思えば、自然と思い入れも強くなりますね。

普段は自宅を作業場所としておりますので、常に子どもたちがそばにいる状態です。しばしば仕事部屋が遊び場にされてしまうこともあり、制作環境としては正直いいものではありませんが、間近で成長を見る続けることができるのはありがたいことです。日中はほとんど紙とPCに向き合って絵を描いています。

そんな私の様子をいつもそばで見ている影響なのか、長男も暇さえあればずっと絵を描いています。最近では私が作業していると横から割って入って、「ここはこの色で塗るんだよ」などと指示を飛ばしてくるまでになり、まるでクライアントのようです。

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教育画劇『すき!I like it!』 作・ほんえすん 絵・サタケシュンスケ
「子どもは自分が好きなものについて話すのが大好きです。本書はこどものそのような特性をうまく使って、英語と日本語の両言語を使った、『好き』『like』の絵本です。右から開けば日本語の絵本に、左から開けば英語の絵本になります。自然に英語に触れることができる良い絵本です。」(上智大学言語文化センター長・特任教授 応用言語学者 吉田研作さん)

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絵を描くこと=コミュニケーションツール

私も小さい頃から絵を描くのが好きでした。漫画やアニメのキャラクターなどの模写が中心でしたのでクリエイティブと呼べるような大したものではありませんが、ただひたすらに似せて描くことが楽しかったのです。お絵描き帳だけでは収まらず、新聞折り込みのチラシ(裏が印刷されていないもの)や本の隅っこなど余白があればどこにでも描きました。そうして出来た絵を両親や先生、友だちに見せて褒めてもらうのが何より嬉しかったことを覚えています

小学生だった頃、親の仕事の関係で転校が多く、そのたびに新しい環境に馴染まなければなりませんでした。そんなときもひとり教室で絵を描く私、それに興味を持ってくれたクラスメイトが声をかけてくれて、いつしか机のまわりに人が集まるようになりました。絵が新しく人間関係を運んできてくれたのです。今思うと、私にとって「絵を描く」ということは、自分のことを知ってもらうためのコミュニケーションツールになっていたのかもしれません。そしてそれは大人になった今でも変わらず、イラストレーターという職業を通して社会や人とつながっています。幼少期にルーツがあったのですね。

子ども向けに絵を描くときに大切にしていること

言葉や文字を深く理解する前の子どもでも、色や形ははやくから認識しています。単純な図形でも子どもたちはなんだろう? と思って見ているようです。

例えば下の写真のような何の変哲もない形でも、子どもにとっては「ヘビ」や「アオムシ」、はたまた「ソーセージ」や「輪ゴム」、向きを変えれば数字の「1」にも見えるようです。なるほど。

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こんなに単純な形でも子どもの想像力にかかればいろいろな物に見えるようです。

私が子ども向けに絵を描くときに大切にしているのは、この想像力の部分です。そこに過剰な説明は不要で、なるべくシンプルな表現で伝えられるように

大人が思っている以上に、子どもたちは自分でいろんな事を感じ取りながら考えています、その感じて考えることこそが創造性につながっていくのではと思います。

イラストはもちろん人に物事をわかりやすく伝えるためにあるのですが、その反面、丁寧すぎる説明は子どもにとって必ずしも必要ではないのかもしれません。

固定概念にとらわれず、子どものうちにしか持てない視点や考えを尊重するため寄り添うことが大切です。時には大人のほうが驚くような発見やひらめきを目の当たりにすることもあり、逆に学ばせてもらっている気持ちにもなります。

絵は自由です、こうでなければならないということはありません。捉え方によっては見え方や考え方も変わる、それはどこか子育て全体にも通じるところがあると感じています。次回はこどもがクリエイティブな力を伸ばせる時についてお話ししたいと思います。

■ イラストレーター・サタケシュンスケさん 連載一覧
第1回:【絵の世界は自由】子どもの視点や考えを尊重し寄り添う事が大切
第2回:【つくる喜びを知る】こどものちからを伸ばせるときとは?
第3回:【クリエイターと地域が協力】子どもの創造力を育てる「ちびっこうべ」
第4回:【プラス クリエイティブな生き方】 多様化のすすむ世の中で自分らしさを感じる大切さとは

【プロフィール】
サタケシュンスケ(さたけ・しゅんすけ)
イラストレーター。京都造形芸術大学 非常勤講師。
1981年 大阪府生まれ 兵庫県在住
広告制作会社勤務を経て2007年に独立、以後フリーランスのイラストレーターとして活動を続ける。
主な仕事は広告、書籍等で使用するイラストレーションおよび
キャラクターの制作、モチーフは人物や動物が中心。
得意とするジャンルは子育てや教育、ファミリー向け。ライフワークとして子どもから大人まで楽しめるワークショップ活動も行う。
2014年度、2017年度 グッドデザイン賞受賞
Shunsuke Satake Illustration website https://naturalpermanent.com/