教育を考える/体験 2019.4.15

そこには食育だけで終わらない “学び” がある! 自然を体いっぱいに感じる「田植え体験」

編集部
そこには食育だけで終わらない “学び” がある! 自然を体いっぱいに感じる「田植え体験」

初夏を迎えると、全国各地で田植えが始まります。田植えは農家の一大仕事ですが、最近は、子どもや女性を対象にした体験型の田植えイベントが行なわれることも多くなりました。都心部でビルの屋上庭園に田んぼを作って田植えをできるところもあるようです。

家族が力を合わせて1束ずつ手で植えていた田植えは、時代とともに稲作の機械化によって効率的に行われるようになりましたが、この流れに逆らうように手で植える田植え体験に多くの人が関心をもつのはどうしてなのでしょう。そこには、普段の生活ではなかなかできない経験をしてみたいという好奇心をくすぐられる魅力があるのではないでしょうか。

自然に触れ合うことが減ってきている子どもたちにとって、田植え体験は好奇心の刺激以外にもさまざまな「学び」をもたらせてくれます。今回は、田植え体験を通して得られる学びについて考えてみましょう。

お米ができるプロセスを学び、食べ物を大切にする心を育む

「米」という字が八十八という数字を組み合わせて作られているのは、お米ができるまでに88回の手間がかかるという説もあるように、たくさんの手間をかけてお米は作られます。

田植えの前には、籾(もみ)を発芽させ田んぼへ植えられるように苗を育てておきますし、水を張った田んぼの土を混ぜて苗が育ちやすいように泥を平に整える「代かき(しろかき)」のような準備が必要です。

また、田植えが無事に終わってからも、肥料を与えたり、虫や病気から稲を守ったり、台風の被害を防いだりといった作業が稲刈り前まで続きます。ようやく実りの時期を迎えると、稲刈りを行なって天日稲の束を干し、脱穀してようやく玄米の状態になります。

各地で体験型イベントとして企画される田植えは、分けてもらった少量の稲の苗を1束ずつ手でほぐして植えていくという、稲作のごく限られた一場面の体験でしかありません。しかし、このわずかな作業を通して子どもたちが自分の手で植えた苗がすくすく育っていく姿をイメージできれば、私たちが毎日食べているお米を作るのに時間と手間がかかっていることを知るきっかけになるでしょう。

江戸時代から続く米農家で、農薬や化学肥料をほとんど使わず米作りを行っているお米農家やまざきのホームページでは、5月の「田植えと刺し苗」について以下のように書かれています。我が子には、この命のつながりを感じられるような子どもに育ってほしいものです。

自然を体いっぱいに感じる「田植え体験」2
(引用元:お米農家やまざき|・できるまで

また、お米ができるプロセスを詳しく知らなくても、春から初夏にかけて田植えをして秋に稲刈りをすることが分かれば、「今朝、食べたごはんはいつどこで作られたお米なのかな」という疑問がわいてくるかもしれません。そうすることで、新米や古米について学ぶ機会にもなりますし、稲作がさかんな地域に関心を寄せるきっかけも生まれます。

田植えは、食べ物を大切にする心や作り手へ感謝する「食育」だけでなく、地理や流通について学ぶ「社会」の学習へもつながります。

自然を体いっぱいに感じる「田植え体験」3

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田んぼは巨大な泥んこ広場! 水辺の生き物に出会うチャンス

代かきをして田植えをするばかりの状態になった田んぼは、子どもたちにとって巨大な泥んこ広場でもあります。

つまさきに感じる冷たい水、直後に足の裏で感じる泥、田んぼに踏み入れた足が沈み込むと思わずぐらつく体のバランス――そんな田んぼのなかで子どもたちは苗を植える作業だけでなく、体全体を使って普段の生活では経験することの少ない感触や動きを楽しむことができます。

そして田植えの時期にはさまざまな生き物も田んぼで見かけることができます。水面をスイスイ泳ぐアメンボ、泥に潜むタニシやヤゴ、あぜ道の草むらから飛び出すカエルやバッタ、あるいは田んぼの中ではヒルにも遭遇するかもしれません。

本や映像で学ぶ自然や生き物とは違い、リアルな生き物の姿を見る機会になりますし、子どもによっては田んぼの周りに棲む生き物たちの生態系に興味をもち、より発展的な学びへつながることもあるかもしれません。

泥んこ遊びや生き物探しは、大人は思わず眉をひそめたくなる人もいるかもしれませんが、子どもたちにはこうした遊びが貴重な「学び」になります

自然を体いっぱいに感じる「田植え体験」4

「田植え」や「田植え体験」で検索してみよう!

田植えの時期は日本各地でズレがあり、早いところでは2月下旬から始まりゴールデンウィーク前後にピークを迎えます。地域によって6月中旬ごろまで田植えを行なっているところもありますよ。

【田植え時期(最盛期)の目安】

  • 沖縄:3月中旬
  • 九州:6月中旬(早生品種は3月下旬)
  • 四国:5月下旬~6月中旬(早生品種は4月上旬)
  • 中国:5月中旬~6月初旬
  • 関西:5月下旬~6月初旬(滋賀は5月初旬)
  • 中部:5月中旬~5月下旬(三重は5月初旬)
  • 関東:5月初旬~6月中旬(千葉は4月下旬)
  • 北陸:5月初旬~5月中旬
  • 東北:5月中旬
  • 北海道:5月下旬

 
田植え体験イベントは、JAや地方自治体、地域の町おこし団体などが企画していることが多く、シーズン前になるとホームページでイベント告知をしているところもあります。お住まいの近くや旅行先など、希望する地域とともに「田植え」や「田植え体験」などのキーワードで検索すると、6月中旬ごろまでは参加可能なイベントに巡り合えるかもしれません。

自然を体いっぱいに感じる「田植え体験」5

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田植えは、私たちの主食を支えるお米が育つための初めの大きな一歩です。食べ物を大切にする心を育みながら、自然を体いっぱいに感じることもできる学びの場ですから、多少の泥汚れには目をつぶり、親子で経験してみてはいかがでしょうか。

(参考)
六本木ヒルズ|春の屋上庭園
農林水産省|学ぼう!日本と世界の食べ物 主食編 お米と「ごはん」
宮城県│農業体験学習のすすめ 実践事例集
JA全農京都│お米ができるまでの稲作カレンダー
独立行政法人 国立青少年教育振興機構|稲作体験活動から子どもが学んだこと
お米農家やまざき|・できるまで
山﨑宏・山﨑瑞弥 著(2015),『お米やま家のまんぷくごはん』,主婦と生活社.