音楽をたのしむ/歌 2018.2.28

親子で一緒に歌おう! 歌を楽しめば、子どもの感受性はどんどん豊かになる。古川和代先生インタビュー【前編】

編集部
親子で一緒に歌おう! 歌を楽しめば、子どもの感受性はどんどん豊かになる。古川和代先生インタビュー【前編】

日本のほとんどの幼稚園、保育園では、カリキュラムの中に「歌」が取り入れられています。

「うちの子は歌が好きみたい」「なかなかいいリズム感をしているな」、お子さまが音楽を楽しむ姿を見て、そんなふうに感じたことのあるお母さんお父さんは多いのではないでしょうか。

そうなのです、子どもたちは歌が大好き!

今回は“子どもたちにとっての歌”、そして“お母さんお父さん”が一緒に歌うことの意味を、東京家政大学・児童学科で教鞭をとる古川和代先生に教えていただきました。

「歌が好き、音楽が好き!」という気持ちが大切

——本日はよろしくお願いいたします。古川先生が音楽を始めたきっかけを教えていただけますか?

古川先生:
4歳のときにピアノの教室に通いはじめたのが、私が音楽をはじめたきっかけです。でも同じ時期に、「私は歌が好き」ということに気がつきました。園での歌の時間が、すごく楽しかったのです。

母は、音楽が好きならまずはピアノをと思ったらしいですが、ピアノは練習をしなければなりません。その点、歌は練習がいらないんですよね。気が向いたときに、そのときの気分で歌うことができますから、子どもなりに「ああ歌っていいな」と感じていました。

そして小学校3年生のときに、児童合唱団に入団しました。母がどこからか情報を見つけてきて「入団テストだけでも受けてみたら」と。水曜日と土曜日が練習日だったのですが、とにかく歌うことが楽しくて、練習日は毎週楽しみにしていました。

——合唱団にはいつまで在団していたのですか?

古川先生:
小学校6年までの3年間です。中学に上がると同時に、今度はひとりで歌うこともやってみたいな、と思いまして……。それで、母が探してきてくれた、音大の先生(声楽)のお宅でレッスンをすることになりました。声楽のレッスンは、高校3年生までの6年間ですね。

——歌のレッスンというのはどんなふうに進められるのでしょうか。

古川先生:
まずは発声から始まって、最初は自分の好きな歌からレッスンをします。そのあと、声楽の教則本(コンコーネ・コールユーブンゲンなど)を使って、音程を正確に取る練習やリズムを取る練習をしていました。ソルフェージュ(音名で歌うことを始め、楽譜の読み書きやリズムの学習などを通して、音楽を理解し表現するための基礎的な訓練のこと)の歌版というイメージでしょうか。

——声楽のレッスンを受けながら、ピアノも続けられていた?

古川先生:
そうですそうです。ピアノはやめてしまうと指が動かなくなってしまうので、動く程度に……と思って続けていました。というのも、もし音楽大学をめざした場合、ピアノは必ず副科でついてくるので。

——ピアノを続けられていたということは、中学生の時点でご自分の将来をある程度決めていたということですか?

古川先生:
そうですね、中学3年のときにはもう意識はしていました。でも、歌もピアノも、好きだったから続けられたんですよね。大変なことがあっても、先生に怒られても、やっぱり根底に「私は歌が好き、音楽が好き」というのがあったので、凹んでも凹んだなりに、起き上がれたのかな? と思っています。

——そして音楽大学に入学されたのですね。

古川先生:
はい、国立音楽大学音楽学部声楽学科ソプラノ専攻です。その後は大学院に進み、そして二期会オペラスタジオという研究所で、また2年間研修をしながら勉強を続けていました。

その後は、女性のプロの合唱団である「東京レディースシンガーズ」の立ち上げをしましたね。やはり子どものころにやっていた合唱も好きだったのです。ハーモニーをみんなで重ねていく連帯感が。

そこで初めて音楽を活かした仕事をしたのですが、今度は、知らない世界に行ってみたい、新たなことに挑戦してみたいという気持ちを抑えきれずに、米国・ニューヨークに行ってしまったのです。1年間だけでしたが、日本人学校の音楽科の教師をしながら、休日はメトロポリタン歌劇場でオペラを観たり、演奏会を聴きに行ったりという生活をしていました。

日本とは全然違う、刺激的で夢のような時間です。楽しかったですね! そして帰国をして、劇団四季に入団しました。

ニューヨークでの経験を語る古川和代先生

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子どもの感性に響く音を探す。童謡だけでなく演歌だってOK!

——現在はどちらの学校で教えているのですか?

古川先生:
東京家政大学で児童学科の「弾き歌い」の科目を担当しています。これは保育士や幼稚園教諭の必須科目なのですが、なかなか難しい科目だと思うのです。園児と“楽しく歌う”というスタンスを持ちながら、歌とピアノの技能を習得しなければいけないからです。

“先生が上手にできること”と“園児が楽しい”というのは、また違いますからね。子どもたちにとっての歌はやはり「楽しいもの」であるべきだと思うので……。

——子どもたちにとって、歌とはどんな存在なのでしょう?

古川先生:
音楽の中で、とくに子どもたちにとって歌は基本ではないでしょうか。まず音楽は、聴くことから始まって、吸収して、なにかを自分なりに表現しますよね。その音楽のひとつの形として、歌は一番基本かな、と考えています。

それに歌は、自分の声が楽器なので、どこでも持ち運びができますしね。

——子どもに聴かせる曲・一緒に歌う曲としては、どんな童謡・唱歌がおすすめですか?

古川先生:
童謡や唱歌でなくても、お母さまの好きなポップスでもいいのですよ。

——ポップスでもいいんですか!?

古川先生:
私はそう考えています。童謡でなくてはいけないとか、唱歌でなくてはいけないとか、そんなに格式ばって考えず、今の流行歌でも演歌でもいいと思いますよ。

たとえば、おばあちゃんが氷川きよしさんの歌を聴いたり歌ったりしていると、お孫さんが演歌に興味を持つことがあります。そして演歌から音楽を知る、ということもあり得るのです。

だから、お母さまの好きなポップスでもいいので、リラックスできるような音楽を聴くほうがいいと思います。ジャンルは問わずに、お子さまの音楽のストックを増やしていきましょう。

——安心しました(笑)、童謡・唱歌>それ以外の歌だと思っていましたので。ではクラシックはどうですか? 「赤ちゃんのころからクラシックを聴かせたほうがいい」という記事を目にしたことがあります。

古川先生:
そうですね、「耳を育てる」という意味では、とても有効だと思いますよ。ただ、それよりもお母さまご自身がお好きな曲を聴かせてあげて、親子で音楽を楽しんだほうがいいのではないでしょうか。

だって、お母さまがあまりクラシックをお好きでないのに、「クラシックがいいと聞いたから」と、楽しいと思わずに聴いているのは、なにかちょっと違うと思いませんか?

それに、(クラシックを楽しいと感じるお子さまもいると思いますが)その子によって、気持ちがゆったりできる音って違いますから。オルゴールの音色が気に入って、オルゴールばかりを聴いている、というお子さまもいましたよ。

ですので、クラシックだけを聴かせるというのではなく、幅広く裾野を広げて、こんな曲もこんな曲もあるよと教えてあげてください。どの曲がお子さまの感性に響くのかは、わかりませんよ。

【後編】に続く→

【プロフィール】
古川和代(ふるかわ・かずよ)
東京都出身。国立音楽大学音楽学部声楽科卒業。同大学院音楽研究オペラ科専攻修了。二期会オペラスタジオ本科修了。東京レディースシンガーズの立ち上げに関わる。
その後、NYに渡り、リセ・ケネディ日本人学校音楽教師として赴任、帰国後はカワイ音楽教室講師を経て劇団四季に入団する。現在は保育士養成校で「弾き歌い」と「歌唱」の指導にあたっている。東京家政大学・短期大学非常勤講師。

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『CAN YOU CELEBRATE?』でも『きよしのズンドコ節』でも、親が一緒に歌うということが大切なのですね。ハードルが下がった分、親子で音楽を楽しむ機会が増えるかもしれませんね。