音楽をたのしむ/歌 2018.2.28

親子で一緒に歌おう! 歌を楽しめば、子どもの感受性はどんどん豊かになる。古川和代先生インタビュー【後編】

編集部
親子で一緒に歌おう! 歌を楽しめば、子どもの感受性はどんどん豊かになる。古川和代先生インタビュー【後編】

幼稚園のころに歌う楽しさを知り、小学生のころは合唱団に入団した古川和代先生。そして音楽大学で声楽を学んだあとは、劇団四季ミュージカル俳優として『オペラ座の怪人』『キャッツ』など数々のミュージカル作品に出演されました。

インタビュー前編では、歌はとにかく楽しむことが大切で堅苦しく考える必要なんてない。その子の感性に響く歌をいろいろと聴かせてあげることで、音楽の裾野が広がる、ということを古川先生に教えていただきました。

インタビュー後編では、実際の生活の中でどのようにして歌を取り入れたらいいか、楽しく歌うことのメリットなどを語っていただきます。

子どもはお母さんお父さんの声が大好き!

——童謡に限らず、いろいろなジャンルの歌を子どもと一緒に楽しむことが大切だということがわかりました。その場合はCDなど、正しい音程で歌っているプロの歌を聴かせたほうがよいのでしょうか?

古川先生:
いいえ、お母さまお父さまが自らの声で歌って聴かせるのがいいと思います。もちろんCDもいいですけど、やはり歌う人と聴く人の距離感が遠いですよね。それに、お母さまの歌に添えられた温もりのようなものも影響が大きいといえます。

ゆったりとリラックスした状態で、お母さまお父さまの歌がお子さまの気持ちの中にしみ込んでいければ、それは素晴らしいことです。

それから、私は親子一緒に歌うこともおすすめします! 子どもはメロディーとリズムにインパクトを覚えます。歌詞はそのあとのことが多いです。

歌詞はなかなか覚えられなかったり言葉が難しかったりするので、歌詞を覚えることよりも、メロディーや響き、曲想の流れ、リズムなどを体で楽しんでみてください。歌詞はあとから覚えていけばいいですし。

それから、もしお子さまが間違えてしまったとしても、「そこ違うよ、間違えてるよ」と言わないでくださいね。子どもたちは、何度もお母さまお父さまの歌を聴くうちに、音程も歌詞も「こうだったな」と気がつきます。まずはお子さま自らが気づいて直せる力を信じてください。

親子で何度も歌っているうちに、メロディーも歌詞も覚えて、上手に歌えるようになっちゃった、というのが理想ですね。

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サビだけでも、鼻歌でもOK! 親子で歌おう

——子どもと一緒に歌うことって大切なんですね。でも、どこでどんなときに歌えばいいのでしょうか?

古川先生:
そうですね、生活の中でちょっとした時間を使って歌うのがいいですね。たとえば、お風呂の時間に一緒にお湯につかりながら、気分よく歌うのはどうですか? 楽しいですよ。

そのときに「園ではどんな歌を歌っているの?」とか「どんな曲が好きかな?」と聞いてみてください。もしそれがお母さまお父さまが知らない曲だったら、「教えて?」とお子さまから教えてもらうのも手です。お風呂場は湿度もありますし、声も響きますから、気持ちよく歌えるのではないでしょうか。

あとは、お料理しながら歌うのもおもしろいですよ。まな板でトントンお野菜を切りながら、まな板のリズムで歌える曲を歌ってみるとか。本当に些細なちょっとしたきっかけを作って歌うことで、子どもにとって歌がどんどん身近になります。

一曲すべて歌いきらなくてもいいんです。サビの部分だけとか、知ってるところだけでいいんです。鼻歌でもいいと思いますよ。ラララでもフンフンフンでもなんでも。まず、親子で一緒に楽しく歌うという時間を共有することを意識してみてくださいね。

親子で歌うことについて語る古川和代先生

遊びながら音楽を学ぶ

——大人は、失恋したときに失恋ソングを聴いて、自分を慰めたりするじゃないですか。そういう感覚で、「この歌を聴くと、僕はなんだか元気になる」というようなことはあるのでしょうか?

古川先生:
あると思います。ただ、その感覚はその子によりけりなので、「一般的に元気が出そうな曲だから」とか、「お母さんお父さんはこの曲で元気になる」ということが、子どもにとってもそうである、というわけではありません。

さみしいときはこの曲が自分にとって温かい気持ちになる、こんな気持ちのときはどの曲がしっくりくるかなどは、本当に子どもなりに違うので、それを見つけてあげるためにも、たくさん一緒に歌ってあげましょう。

また、歌うのはあまり好きじゃなくても、物を叩いて音を出すのが好きというお子さんもいます。そういう場合は、お母さまお父さまが歌って、お子さま音を出すということから始めてみるのもいいと思います。そこからリズムが生まれたりしますから。

状況が許す限り、思う存分リズムを取らせてみてはどうでしょう? 「これはどんな音が出ると思う?」って、まず、想像させるのもいいかもしれないですね。思わぬ発見があるかもしれませんよ。

遊びながら音楽を学ぶというか、遊ぶ中で音楽と触れ合っていくことが、子どもにとっての音楽なのだと思います。

——最後に、子どもたちにとって「歌」とは「音楽」とはなんでしょう?

古川先生:
私は「表現を楽しむもの」だと考えています。そのために五感を大切にしてほしい。五感を育てることは歌に限らず、音楽を表現するために必要だと考えています。そして音楽と関わることで感受性も豊かになる。なにより心をゆさぶられる経験が音楽の世界を広げると考えます。

音楽の経験は絶対に無駄にはなりません。歌を歌うことも、音楽を聴くことも、音を出すことも、全部がまじりあって、成長とともに少しずつ固まっていくと思います。ですから、お子さまの興味や好奇心を引き出しながら、いろいろなジャンルの音楽に触れ合わせてあげましょう。

【プロフィール】
古川和代(ふるかわ・かずよ)
東京都出身。国立音楽大学音楽学部声楽科卒業。同大学院音楽研究オペラ科専攻修了。二期会オペラスタジオ本科修了。東京レディースシンガーズの立ち上げに関わる。
その後、NYに渡り、リセ・ケネディ日本人学校音楽教師として赴任、帰国後はカワイ音楽教室講師を経て劇団四季に入団する。現在は保育士養成校で「弾き歌い」と「歌唱」の指導にあたっている。東京家政大学・短期大学非常勤講師。

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「恥ずかしくて歌が苦手」というお母さんお父さん、お子さまの感受性を豊かにするために、鼻歌でもサビだけでも、ちょっとだけ歌を歌ってみませんか?

■ポップスでも演歌でもOK! 子どもの感受性を豊かにするために、親子で一緒に歌いましょう。
『親子で一緒に歌おう! 歌を楽しめば、子どもの感受性はどんどん豊かになる。古川和代先生インタビュー【前編】』はこちら→