教育を考える 2018.3.8

坂上忍さんの子役育成から学ぶ 子どもの「才」の伸ばし方【第2回】~「いい親だなあ」と感じる言葉~

坂上忍
坂上忍さんの子役育成から学ぶ 子どもの「才」の伸ばし方【第2回】~「いい親だなあ」と感じる言葉~

役者、舞台や映画の脚本・演出、そして番組MCとマルチな活動をしている坂上さんですが、もうひとつの顔が存在します。それは、2009年に立ち上げた『アヴァンセ』という子役育成のためのプロダクションを運営していること。

役者業は既に48年目目を迎えた坂上さん。その長いキャリアを持っているからこそ教えることができる、目から鱗の子どもの「才」の伸ばし方を、全10回に渡って公開します。第2回目となる今回は、親がつい陥りがちな「我が子への思い込み」についてのお話です。

「うちの子は才能がある」の根拠などどこにもない

もし、子どもにとってのいい親という定義があるとするのなら、そのひとつは、子どもがやることにあえて無関心になれる親だと思います。無関心を装っている、でもいいかもしれない。なぜならば、そこに子どもとの適度な距離を感じるのです。

たとえば、親御さんとの面接でこういう言葉を聞くと、「いい親だなあ」と感じますね。
「うちの子どもが演技をやりたいって言っているんです」
「お芝居のことは、わたしにはよくわからないんですけど……」
「うちの子は、向いていないと思うんですよね」
実際にレッスンをするのは、親でなく子どもなのですから、これぐらいの距離感で十分なんです。子どもの気持ちがまず一番で、親はあくまでもサポートする立場。

逆に、「大丈夫かなあ……」と思うのは、「うちの子って、才能あるんです!」「絶対にいい子役になれると思うんです!」と勘違いしているパターン。子どもと一緒にいる時間が多いあまりに、過度な期待を抱くようになるのでしょうか、とくに母親はこういう思考に陥りがちなようです。そのうえ、周りの子や、その親へのライバル心みたいなものも感じます。その自信はどこからくるのでしょう? まだ、レッスンすら受けていない段階で、親が根拠のない自信を持つのはちょっとおかしなことです。

親が、子どもの力を信じるのはたしかに大切なこと。でも、信じるものはまだ見ぬわが子の才能ではなく、「うちの子なら頑張れるんじゃないか」「最後までやり抜くことができるはずだ」という取り組みの部分への期待だと思うんです。

才能だけで、その世界のトップに上り詰めるというのは本当に稀なことです。宝くじで一等を当てるぐらいの確率だと思ってもらっていいでしょう。いや、もっと低いかもしれない。だから、まずはくさらずに継続することが大前提となるわけで、過程を飛び越えて売れっ子の子役になれるなんてことはあり得ないのです。

常に適度な距離を保ちながら、冷静な目を持ち続けること。ほどよく無関心であれば、周りに比べてなにが足りないか、なにが長けているのかを客観的に見極めることができますし、わが子に適したアドバイスができるはずです。親がのめり込み、「わが子が一番!」と思い込んでいては、子どもにとって百害あって一利なしなのです。

子どもの「才」の伸ばし方第2回2
※写真は2015年撮影のもの(©辰巳千恵)

※当コラムに関するお断り
この連載コラムは、2015年に刊行された坂上忍さんの著書『力を引き出すヒント~「9個のダメ出し、1個の褒め言葉」が効く!~』(東邦出版)を、当サイト向けに加筆修正をしたものです。

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