世界競技人口が約3,600万人もいる「囲碁」。その囲碁が、学校教育の分野で最近注目されているのをごぞんじですか?
東京大学が囲碁を正規の授業に取り入れたのは約10年前。その後、全国の小中学校や大学で、囲碁の授業が取り入れられているといいます。
今回は、その囲碁を学ぶことで得られる効果をご紹介します。
約10年前、東京大学が囲碁授業を取り入れた
囲碁とは、白と黒の碁石と碁盤を使って遊ぶ陣取りゲーム。囲碁は2人で行い、お互いに陣地を広げあい、最終的に囲った陣地の大きいほうが勝ちです。ルールはいたってシンプルですが、その分奥深いので、思考力や集中力を要します。
その囲碁を東京大学が正規の授業として取り入れたのは約10年前。その後、囲碁を授業として取り入れる大学が急増しました。
九州大学は、2015年10月から「囲碁で養う考える力」を開講。全15コマのうち、計3回を日本棋院東京本院所属の吉原由香里六段が担当しました。今では、早稲田大学、慶応大学、東京学芸大学、京都大学、大阪大学、青山学院大学、九州大学、東京工業大学、筑波大学など、40校(2018年1月現在)の大学で囲碁が取り入れられています。
小学校、中学校、高校にも囲碁の授業が広がっている
そしてその流れは、大学から幼稚園、小学校、中学校、高校に広がっているようです。
東京都中央区では、2013年4月から囲碁の授業を本格的に導入しました。授業では、プロの棋士が講師となり生徒に指導をしているのだそう。自身もアマ5段の腕前を持つ中央区長・矢田美英氏は、「囲碁は思考力や集中力が鍛えられ、礼儀作法も身に付く」としており、囲碁授業を定着させていきたいと語っています。
また東京都千代田区では、なんとすべての区立小学校(8校)中学校(3校)で囲碁が取り入れられているとのこと。
公益財団法人である日本棋院は、平成2015年に「がっこう囲碁普及基金」を設立。全国の学校を対象に、「正課授業」「クラブ活動」「放課後教室」などで入門教室を開催しており、囲碁の普及に務めています。2018年1月の時点で、囲碁を授業に取り入れている小学校は102校もあるのだそうです。
囲碁をとおして鍛えられる能力とは?
学校教育に取り入れられるほどの、囲碁の魅力はどこにあるのでしょう?
日本棋院ホームページによると、以下のメリットが望めるようです。
「大局観(グランドデザイン)を養える」
「論理的な思考、集中力、忍耐力を養える」
「世代間、国際交流のコミュニケーション力を付ける」
「答えのない局面で考える力、能動的に考える(頭を使う)力を身につける」
「負ける経験をして、それを克服する心を鍛えられる」
(引用元:日本棋院|【ニュースリリース】九州大学で囲碁授業を新規開講)
また、「バランス感覚」を養うことで、ものごとに対する価値判断をする練習ができるといいます。
「思考力」「短期記憶力」「総合的な作業力」が向上する!
脳医学研究者である東北大学・川島隆太教授が、「 囲碁は考える力を向上させる 」というテーマで研究を行ったところ、実に興味深い結果が得られました。
囲碁教室に週に1回通い、囲碁を学ぶことで、「思考力」「短期記憶力」「総合的な作業力」が向上したのです。これは、囲碁をとおして、前頭前野をはじめとする幅広い脳機能が、発達したためだそう。
また、九州大学総長で心身医学専攻の久保千春氏も、「3手先を読む訓練を積んだことで、患者の病態に仮説を立てて、治療の重大な局面を見逃さない習慣が身についた」と囲碁のメリットを述べています。
このように、囲碁を学ぶことで、「考える力」や「論理的思考力」、「集中力」に「忍耐力」など、数え切れないほどの能力が身につくようです。ぜひお子さまと一緒に囲碁を始めてみたいものですね!
(参考)
日本棋院|【ニュースリリース】九州大学で囲碁授業を新規開講
NHKテキストビュー|囲碁を授業に取り入れる学校が急増中! 小学校の取り組みをレポート
産経WEST|「囲碁」大学授業に採用、論理的思考を養う狙い 遊技人口減にも歯止めの「一手」
国立大学法人 東京工業大学|囲碁で学ぶ実践力
日本経済新聞|中央区、小学校授業に囲碁導入 思考力鍛える