頭を使うのが楽しくなる方法があるのをご存知ですか? 宿題がスラスラできて成績も上がる“魔法の道具”と開発者自ら言わしめるその方法が「マインドマップ」です。
「こんなノートの取り方があったら、学生時代に勉強に苦労しなかったのに」
マインドマップを知った大人が口にする言葉だそう。子どもからおとなまで活用できるその方法を知れば、親子一緒に“脳トレ”を楽しめそうです。
今や世界中で2億5000万人以上の人が使っているという「マインドマップ」について、詳しくご紹介していきましょう。
「マインドマップ」の成り立ち
マインドマップは1960年代に、イギリスの教育家であるトニー・ブザンによって考え出された思考技術です。『Use Your Head』というBBC教育放送で紹介されたことをきっかけに評判を呼び、書籍も出版されてたちまちミリオンセラーになりました。
その原点は、「本来の脳力を発揮させるため」の脳の“取扱説明書”と“ツール”を作ろうとしたことでした。脳の機能や癖を把握することで、独自の「読書法」「記憶法」「ノート記述法」を考え出したのです。
考えを具体化して整理する「マインドマップ」
「脳の言語は“言葉”ではなくイメージと連想」とブザンは言います。つまり、人は頭の中で、物ごとをイメージで捉え、そこから派生する連想を常にしています。その脳の動きを具現化して紙に書き出すのがマインドマップ。自分の考えを絵で整理する表現方法なのです。
形態としては、テーマが中心にあり、そこから派生するイメージをどんどん枝分かれして広がるように描いていきます。言葉だけではなく、色や絵も使ってイメージを膨らませていくことで、最後には一つのアートのようなマップが出来上がるのです。
子どもにとっての「マインドマップ」
人間が初めてマインドマップを作るのはいつでしょう? それは生まれた時から。例えば、赤ちゃんが初めて発する言葉の代表は「ママ」ですが、それは赤ちゃんのマインドマップ“心の地図”の中心だから。そこから愛、食事、暖かさなどのパーツが枝分かれして伸びていきます。
人は生まれた時にはすでに頭の中で脳内マインドマップを作っているということ。そして成長に伴うマップのネットワークの広がりは知能の発展を意味するのです。
子どもたちにマインドマップの使い方を教えることは、「自分を知る」ことの助けになるとともに、まなぶことの楽しさを示すものになります。
「マインドマップ」のここがすごい!
では、マインドマップを使うようになると具体的にどんなメリットがあるのでしょうか?
1. 想像力が豊かになる
色や絵も使い発想が目に見えることで、アイディアがどんどん湧くようになります。
2. 記憶力が良くなる
自分の考えや物事を体系的に書き出すことになるので、頭の整理ができ、頭の引き出しが開けやすくなります。
3. 集中力がアップする
子どもが勉強をする時、おもに使っているのが左脳です。マインドマップを書くことは想像力や色彩感覚などを司る右脳の働きも促し、左右バランスよく脳を使うことで集中力が増します。
4. 問題解決能力がつく
思考の流れを書き出すことで問題点を見つけやすくなり、客観的に物ごとを捉えることができるようになります。
5. 計画性が身につく
マップ化することで全体像が見渡せるため、計画を立てやすくなります。
「マインドマップ」の成功例
マインドマップが子どもたちの潜在能力を引き出す効果を最大限に発揮した実例がありますのでご紹介します。
2005年、BBC(英国放送協会)の番組で、トニー・ブザンがイギリスのある小学校の“問題児”たちに向き合った取り組みが放映されました。“問題児”たちは勉強には興味のない自制が効かない子どもばかりで学校からも見放されていました。
果たして、マインドマップを活用した教育で半年間彼らに接した結果は、素晴らしいものでした。物ごとを整理して考える能力が飛躍的に向上、表現能力も5倍以上の速さで発達したというのです(ロンドン大学教育研究所調べ)。彼らを信じ、彼らと一緒に悩み、なんとか改善させたいというブザンの熱い想いは子どもたちに届き、「ブザン6ヶ月の奇跡」と言われるようになりました。
また、“世界一の学力”を誇るフィンランドではマインドマップを「カルタ」といい、小学校3年生くらいから読み書きの整理やディスカッションをまとめるための集団思考の方法などとして重宝されています。
このように、マインドマップの効果は実際に証明されているのです。
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トニー・ブザンは言っています。
マインドマップは、キミの頭の中で起こっていることを地図にしたものだ。キミの考えは、世界にたったひとつしかない。キミのマインドマップはキミだけのものなんだ。
(引用:トニー・ブザン著・神田昌典訳(2006), 『マインドマップ FOR KIDS 勉強が楽しくなるノート術』, ダイヤモンド社.)
「それぞれぜんぜん違うからおもしろいよね!」とも。思考はひとそれぞれ。マインドマップを描くことで“人には個性というものがあり、考え方が違っていてもいい”ということを子どもたちは知り、自信をつけていくのではないでしょうか。
(参考)
DIAMOND ONLINE|「頭がいい」とは、どういうことか?−−脳の取扱説明書、マインドマップ40周年によせて
初心者のためのマインドマップ|マインドマップの『定義』について
Jinkawiki|フィンランドメソッド
トニー・ブザン著・神田昌典訳(2006), 『マインドマップ FOR KIDS 勉強が楽しくなるノート術』, ダイヤモンド社.
トニー・ブザン バリー・ブザン著 神田昌典訳(2005), 『ザ・マインドマップ 脳の力を強化する思考技術』, ダイヤモンド社.