デビューしてから今年で38年目を迎えるコロッケさん。いまやお年寄りから小さなお子さままで老若男女から愛される日本を代表するエンターテイナーですが、中学2年生くらいまではテレビが大好きな、おとなしい子どもだったと言います。芸能界に入ってから数十年ぶりに入った地元・熊本の中華屋さんでは「あの暗か子どもがコロッケさんとわかったときはビックリしたとよ」と言われたそう。そんなコロッケさんから、これからの未来をつくる子どもたちへのメッセージを頂きました。
構成/岩川悟 取材・文/洗川俊一 写真/石塚雅人
嫌われたくない人になってほしい
――コロッケさんは、いまの子どもたちにどんな人になってほしいと考えていますか。
コロッケさん:
人には2種類のタイプがあると思っています。ひとつは、嫌われてもいいから自分を押し通す人。もうひとつは、嫌われたくないようにする人。僕は、後者である嫌われたくない人になってほしいと思っています。
――『嫌われる勇気』という本がベストセラーになったように、世の中では嫌われてもいいから自分の意見をハッキリ言うほうがいいという風潮もありますね。
コロッケさん:
「わたしはわたしだから」という考えは間違ってはいません。でも、僕はやっぱり嫌われたくない人がいい。なぜならば、嫌われたくないと意識すると、言葉をかけるときも歩くときもどんなときも、いろいろなことに関して気をつけるようになるからです。その意識があると、優しく話しかけるでしょうし、道を歩くときは前から人が来れば自分から避けることができると思います。
――たしかに、「わたしがわたしが」というタイプよりやさしい子どもになりそうですね。
コロッケさん:
なにをするにしても「これ、大丈夫かな?」という相手のことを考えるようになりますからね。僕は、「嫌われたくない人になろう」と思っていれば、どんな仕事をしてもまず人間としての「基本」を間違わないと感じているんです。挨拶であり礼儀であり、相手を思う気持ちであったりね。そういう生きていくうえでの基本は、やはりとても大切なんですよ。ただし、嫌われたくないからといって、なにもしないというのはダメ。「相手が一番、自分が二番」という心持ちになることが重要なんです。そうすれば、自発的にきちんと動いていくことができますから。
――子どもたちに学んでほしいことは?
コロッケさん:
好きなことを続けることにも通じるかもしれませんが、あきらめないことですね。といって「歯を食いしばって頑張りなさい」ということではありません。たとえば、鉛筆があるとします。3分の1くらいの長さになったら使えないと判断する子どももいれば、手で持てるぎりぎりの長さまで使う子どももいます。なかには、アルミキャップに鉛筆をねじ込んで本当に最後まで使う子どももいます。工夫すれば使える、ということに気づくのが大切なのです。
――アルミキャップが使えることに気づいたら、鉛筆を無駄なく使い切れるということですからね。
コロッケさん:
消しゴムだってそうじゃないですか。小さくなって消しづらくなるとすぐに捨てる子がいますが、小さくなってもカッターで少し切れば角ができて小さな部分を消しやすくなるんですよね。そのほうが、漢字のはじっこだけ消したいときには重宝することもあります。すぐにあきらめてしまう子どもになると、自分で工夫することをしなくなるし、工夫することで発見できることもなくなります。同じ環境にいて、それは大きな損になる。この感覚は、好きなことを続けるときも差になって現れるでしょうね。少し工夫すれば、そのものの本質に気づくこともできるし、そこから発展した考え方を持つことができます。もちろん、もっと好きになることだってできるはず。進化や発展があるのに、途中であきらめてしまうのはもったいないと思いませんか。
ミーハーだから「好き」を続けられる
――好きなことを続けられる子どもになるために必要なことがあれば教えてください。
コロッケさん:
ミーハーになることです。世間的には「ミーハー」という言葉にいいイメージを抱く人は少ないようですが、僕はミーハーになることをおススメしています。そういう僕も、テレビに出ている人間ですが、超がつくミーハー人間ですからね(笑)。
――コロッケさんはミーハーなのですか?
コロッケさん:
はい、僕はミーハー人間です。その人に強い関心や興味を持つと、とことん観察するようになります。僕の場合は、その観察からモノマネのヒントが生まれてくることがよくある。テレビを観ていてファンになる。そして、それをマネてみる。で、ネタになる(笑)。ミーハーだからできたことです。
――子どもたちがミーハーになることのメリットは?
コロッケさん:
ミーハーになるということは、その人のことをじっくり観察したり研究したりするようになりますよね。大好きな野球選手がいたとします。野球をやっている子どもなら、まず、その人のバッターボックスでの構え方、それから打ち方をマネるでしょう。ただ、フォームをマネたからといって、実際にボールを打とうとしてもなかなかうまく打てません。そこで、どうしてその人と同じようにできないのか考えるようになります。いまなら、自分の動画を撮影して見比べることも簡単な時代になりました。そこで、そのフォームでバットを振るには筋力が足りないことに気づいたら、今度は筋力トレーニングのことを学ぶようになります。入り口はミーハーかもしれませんが、興味を持って続けると、どんどん広がりが出ていくわけです。
――それで、どんどん好きになっていく。
コロッケさん:
ミーハーでいることは、自分の「好き」を探すひとつのきっかけです。そして、あきらめなければ、いつか必ず自分が本当に好きなことが見つかるし、極めることだってできる。あとは継続するだけ。子どもにとって好きなことに出会うことは、将来のためにすごく重要なことだと僕は思っていますし、その好きなことをして輝く人間であってほしいと願っています。
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コロッケさんからの子どもたちへのアドバイスは3つです。ひとつは、「嫌われない人になること」で、もうひとつが「あきらめないこと」。そして、最後のひとつが「ミーハーになること」。相手のことを考えたり、工夫をしたり、観察したりすることが、好奇心を持続できる子どもになるための大切な素養なのでしょう。
■ タレント・コロッケさん インタビュー一覧
第1回:【伸びていく子ども】~嫌われない、あきらめない、ミーハーになる~
第2回:【心に残る母からの教え】~焦っていいことなんてひとつもない~
第3回:「気づくか気づかないか」「やるかやらないか」「できるかできないか」の三原則
第4回:継続は進化に繋がっていく
【プロフィール】
コロッケ(ころっけ)
1960年3月13日生まれ、熊本県出身。1980年、NTV『お笑いスター誕生』でデビュー。浅草芸能大賞新人賞、ゆうもあ大賞大賞、ゴールデンアロー賞大賞および芸能賞受賞など受賞歴多数。全国でモノマネコンサートを行うかたわら、テレビ・ラジオ、舞台等でも活躍する日本を代表するエンターテイナー。現在のモノマネのレパートリーは、300種類を超える。また、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴ、北京をはじめ、アメリカ・ラスベガスでの公演も大成功を収めた。東京『明治座』、名古屋『中日劇場』、大阪『新歌舞伎座』、福岡『博多座』などの大劇場での座長公演を定期的に努め、2013年3月には、松尾芸能賞演劇優秀賞を受賞した。2016年には、自身がプロデュースしたモノマネレストラン『CROKET MIMIC TOKYO』(東京麻布十番)がオープンし、連日多くの来場客が訪れている。著書に『母さんの『あおいくま』(新潮文庫)、『マネる技術』(講談社α新書)がある。2018年6月16日からは、本名の滝川広志で誂んだ初主演映画『ゆずりは』が公開になった。
●コロッケさん(滝川広志)初主演映画『ゆずりは』公式サイト
☆コロッケさんからのコメント☆
「死と向き合う葬儀の現場を舞台に、どう生きてきたのか、どう生きていくのかを考えさせられる、ヒューマンドラマです。初主演となる今作品は、完全にモノマネを封印し、コロッケではなく本名の滝川広志として取り組んでいます。ぜひ、劇場に足を運んでください!」
【ライタープロフィール】
洗川俊一(あらいかわ・しゅんいち)
1963年生まれ。長崎県五島市出身。株式会社リクルート~株式会社パトス~株式会社ヴィスリー~有限会社ハグラー。2012年からフリーに。現在の仕事は、主に書籍の編集・ライティング。