皆さんは、ボーディングスクールをご存知ですか? 日本ではあまり聞き慣れない言葉ですが、いま注目を浴びつつあるのです。
ボーディングスクールとは、“生徒と教師が同じキャンパス内で寝食を共にする全寮制の学校”のこと。その歴史は古く、イギリス、スイス、アメリカ、オーストラリアなど世界数か国にあります。
なかでも、英国王室のウィリアム王子やヘンリー王子も在籍していた「イートン・カレッジ」(イギリス・1440年創設)や、世界一学費が高いとも言われる「ル・ロゼ」(スイス・1880年創設)などは世界中の王族や貴族、セレブが集まる“超名門”として特に有名です。
今回は、そのボーディングスクールの特徴をくわしくご説明しましょう。
ボーディングスクールで学べること
ボーディングスクールは、学業をメインとする一般的な学校とは大きく異なり、主に以下を目的としています。
- 集団生活を通し、学業はもちろん、規則、礼儀、自立心、コミュニケーション能力を培う
- 文武両道に秀でた次世代の社会のリーダーの育成
- 人生のどのような局面でも自ら道を切り開いてゆけるだけの自信と能力を培う
生徒は世界中から集まるため、世界各国の文化や言語、考え方の違いなどを肌で感じながら、グローバルな感覚を自然と身に付けていくこともできます。また、1クラス平均12名程度と少人数制。先生やスタッフも基本的には寮で生活を共にするため、放課後や夜間に至るまで24時間子どもたちと向き合い、個々に応じた学習指導はもちろん、しつけや道徳教育を施すのです。
言い換えれば、勉強・スポーツ・芸術・一流の国際常識・教養全般、それらすべてに力を注ぐ特別な学校なのです。厳しい競争が当たり前の国際社会で生き抜いていくためには、どれも必要なスキルであることは言うまでもありません。
ボーディングスクールがいま再び注目を浴びているのは、まさにそういった“世界で通用する人間を育成している”という点が大きいのでしょうね。
しかし、子どもが多感な10代に遠く離れた海外で暮らすことを考えると不安も心配も尽きないのもまた事実。富裕層研究者の第一人者として知られ、自身の娘を「ル・ロゼ」に通わせた経験を持つ臼井宥文氏は著書の中でこう書いています。
ティーンエイジャーの子どもを海外に出すことは、かなりの覚悟が必要だ。本人にもホームシックがあるだろうし、親の側にも「子離れ」しにくい心情はある。(中略)もっと早い段階での留学ともなれば、相当つらいのではないかと想像する。しかし、私は強くボーディングスクールへの留学を奨めたい。なぜなら親元を離れて寄宿舎生活を送ることによって、より親子の絆が深まるからである。(中略)海外のボーディングスクールで学ぶのは、勉強やスポーツだけではない。人間関係を学び、自立心を学び、そして親への感謝を学ぶ。」
(引用元:臼井宥文 著(2007),『超上層教育』,宝島社.)
親も子も、高い志が必要なことは間違いなさそうです。ただ、それ以上に学びはかなり大きいと言えるでしょう。
ボーディングスクールの種類・特色
ボーディングスクールの種類・特色はさまざまです。例えば、男子・女子校、共学校のほか、特定のスポーツに強い学校、芸術や音楽の分野に秀でている学校、低年齢児対象の学校、小中高生に特化したジュニアボーディングなど。
もし、入学を考えるのであれば子どもに合ったところを慎重に選びたいですね。出願にあたっては、名門校の場合などはネイティブレベルの英語力や高い学力を求められる事も。しかし、一般的には、英語力と成績だけで合否が決まるわけではありません。
出願書類として、成績証明書や英語力証明資格のほか、過去の課外活動実績や将来の抱負、ご家族の留学に対する考えをまとめた作文などを求めるところもあるようです。入学選考において面接を実施している学校も多く、生徒の資質や能力、学校が求める生徒像とマッチするか多角度から判断していきます。
そして気になる費用面ですが、やはり年間の学費は高めです。学校によって大きく異なりますが、授業料に加えて、寮の費用、その他諸費用含め、年間500万以上はかかると考えておいた方が良さそうです。高いところでは年間1000万円以上かかることも珍しくありません。
日本でも続々と開校するボーディングスクール
「遠く離れたところで子供が過ごすのはやはり心配」「費用が高すぎる」
そんな声が聞こえてきそうですが、実は日本でも同じような教育を受けられる学校があるのです。それが、2006年4月に愛知県蒲郡市に開校した「海陽学園」。
全寮制の男子中高一貫校で、トヨタ、JR東海、中部電力などが出資し、「将来の日本を牽引するリーダー」の育成を掲げ、イギリスのイートン校をモデルにして作られました。まさに、未来のグローバル・リーダーを育てるためのエリート教育を行う学校です。学費面も、海外留学に比べれば安く済みます。
また、新たに開校した学校や、今後開校予定の学校も増えています。2018年4月に開校した「国際高等専門学校」(石川県白山市 ※元「金沢工業高等専門学校が改称、新プログラムを導入)、2019年開校予定の「広島叡智学園」(広島県)、日本初の小学生を対象とした「神石インターナショナルスクール」(広島県)など。
海外のボーディングスクールと提携していたり、カリキュラムを参考にしていたりしているため、日本の一般的な学校教育とは異なる内容が期待できそうです。
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素晴らしい学びの場であるボーディングスクール。安直に選ぶことはできないですが、お子さんの将来を考える際、ひとつの選択肢として頭に入れておくと良いかもしれません。
文/鈴木里映
(参考)
株式会社海外教育研究所|世界中のあらゆる人との繋がりを ボーディングスクール
エディクム|ボーディングスクール
YUCASEE media|ボーディングスクールで伸びる子、伸びない子
The International School TImes|国内ボーディングスクールフェア
臼井宥文 著(2007),『超上層教育』,宝島社