あたまを使う/サイエンス 2018.10.15

国際的にみた日本の子どもの学力レベルは高いのか? 理数系科目好きの子どもが増えている理由とは。

編集部
国際的にみた日本の子どもの学力レベルは高いのか? 理数系科目好きの子どもが増えている理由とは。

「私、文系だから」「ちょっと理系の問題は分からない」と思わず言ってしまったことはないでしょうか――。

教科の特性から科目を文系・理系に分けて、好き嫌いや得手不得手を友だちや家族と話したり、進路を決めるときの指標にしたりすることもありますね。実は、20年ほど前から、日本の子どもたちは全体的に「理科離れ」が止まらないと言われてきました。

最近は「リケジョ」「リケダン」というネーミングが話題になったこともあり、理系への興味関心は高くなっているようですが、こうした情勢に伴って子どもたちの学習意欲や習熟度も向上しているのでしょうか

今回は、文部科学省が発表している調査報告から、日本の子どもたちがどれくらい「算数・理科」が好きなのか、理数系科目に対する意欲を探ってみます。また、理数系科目を好きになるメリットもご紹介します!

理数系科目、成績は上でも意欲は最低レベル!?

1990年代後半ごろから、子どもの学力、特に理数系科目の学力について問題視されるようになりました。そのきっかけは、国際的な学力比較調査。理数系科目に関する日本の子どもたちのありのままの姿が映し出されました。

子どもたちの理系離れ――

国際教育到達度評価学会(IEA)が行った、中学生の数学と理科に関する国際学力比較調査(第3回1995年)では、数学・理科ともに、日本の学力は3位だったのですが……。

「数学や理科が好きか」という項目に関しては、「好き」と答えた生徒の割合が、先進国21カ国の中で最下位という結果に。このほかにも、「理科は生活の中で大切と考える生徒の割合」と「科学を使う仕事をしたいと考えている生徒の割合」も最下位でした。

数学や理科の学力は国際レベルで見ても引けを取らない一方、学習への興味関心は先進国の中で最下位という低さという結果を受け、文部科学省は以下のような対策を打ち、子どもたちの「理科離れ」の解消に乗り出しました。

  • 学校教育で観察や実験を含む体験的・問題解決的な学習を重視
  • 子どもたちへ分かりやすく理科を教えることができるようなデジタル教材や教師用指導資料を作成
  • 大学や研究機関、地域の科学館、博物館などと連携して、科学技術に親しむ学習の実践とそこで働く人たちにフォーカスし、理工系人材が社会で活躍している姿を示す

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最近の子どもたちも「理科離れ」が続いているのか

確かに、思い返せば子ども向けのサイエンス番組が増え、科学館や博物館で子ども向けの特別展が各地で開催されるようになったのはこの時期ではないでしょうか。学校の授業でも観察や実験を通して子どもたちの興味関心を刺激し、国を挙げての「理科離れ」対策が進められてきました

こうした努力が実を結んだのか、IEAが2015年に実施した国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)を含む時系列の分析には子どもたちの興味関心が向上している結果が出ています

理数系科目好きの子どもが増えている理由2
(画像引用元:文部科学省|国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)のポイント

小学生の理科は、国際平均を上回る結果となり、算数と数学、中学生の理科も、「楽しい」と答えた子どもの割合は国際平均より下回るものの、その差は縮まっています

理数系科目を好きでいるとオトクな理由

最後に文系・理系問わず、理数系科目を好きになることのメリットを紹介します。その前に、「文系」「理系」のように教科を2つに分ける意味を考えてみましょう。

実はこれ、高校の文理選択が関係するだけであり、本来の学習内容は明確に二分することはできません。むしろ、「自分は文系」と感じている人ほど、理数系科目が好きでいることがオトクになることもあるようです。

●ロジカルシンキングを鍛えられる

数学は「論理力」という点で、国語の力に直結してきます。目の前にある「問題」に対して解決策を考えていく科目ですから、一つひとつの事実を整理し、順序立てて論理的に解決へ導いていく力が求められます。これは、国語の作文へダイレクトに作用する力となり、読解力を問われる問題にも応用が利く能力です。

ある事象を観察して、分析し、客観的に考え、その結果を論理的にまとめて誰もが納得する方法で伝えることができる――これは、理数系科目で鍛えられる能力であり、文系・理系に関係なく、また学校を卒業して社会人になっても「武器」になるスキルです。

●大学入試や入社試験でもオトクな「数学」

これは「自分は文系」というお子さんが、試験にパスするためのテクニックのひとつですが、高校へ進学して大学入試が視野に入ったとき、「数学」に親しんでいるとオトクを感じることが多いようです。

というのも、大学の文系学部の入試では、国語と英語のほかに社会か数学を試験科目にしていることが多く、日本史や世界史など膨大な情報を記憶しなければならない社会に比べて数学で記憶すべき情報量は少なく、さらに数学の問題は理系学部に比べて難易度は圧倒的に低いのです。

さらに就職試験の代名詞とも言われる知能検査「SPI」には、算数や数学に関連する問題がたくさん出題されます。また、公務員試験にも数学的な問題が出るため、理数科目が苦手な人よりも有利になります。

学校での勉強に留まらず、理数系科目は私たちの生活と切っても切れない関係があり、より豊かで社会的な生活を営むために必要な基礎を身につけるのに役立つといえるでしょう。

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世界のキタノこと北野武氏は、自身の映画撮影で因数分解を使い、凄惨な銃撃戦のシーンを詳細に描き出さず、共通の要素をまとめしまい、敢えて見せないことで“観客のイメージの中”で表現したというエピソードがあります。数学はエンターテイメントの世界にも応用されていると考えると、何だか親しみが湧いてきますね。

(参考)
ベネッセ教育情報サイト|理科離れ対策に科学者立ち上がる 小・中・高校を訪問
文部科学省|国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)のポイント
文部科学省|平成13年度 文部科学白書、第1 21世紀の教育改革 教育改革Q&A Q4
コエテコ|次世代の科学技術系人材をはぐくむ「SSH(スーパーサイエンスハイスクール)」
AERA.dot|「9歳のころがカギ」 自分の子どもを「理系」にする方法
MBS|「数学は人生に必要ですか?」10代の若者からの直球質問に白熱講義
国際教育政策研究所|教育課程研究センター OECD生徒の学習到達度調査(PISA)
国際教育政策研究所|教育課程研究センター IEA国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)