あたまを使う 2019.7.3

「思いっきり遊ぶ」とフロー状態に入れる!? 無敵の能力を身につける3つのコツ

「思いっきり遊ぶ」とフロー状態に入れる!? 無敵の能力を身につける3つのコツ

「子どもが何かに没頭し、こちらの呼びかけにまったく反応しなくなった」という経験がある方は多いのではないでしょうか? それは、子どもが「フロー状態(ゾーン)」に入っているからかも。今回は、子どもの成長に大きくかかわってくる「フロー状態」のメカニズムや、子どもへの影響についてご紹介します。

フロー状態(ゾーン)って何?

フローとは、アメリカの心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱した概念で、「物事に対して時間を忘れるほど集中し、最高のパフォーマンスを発揮できる状態」のこと。人はフロー状態に入ると、集中力が研ぎ澄まされて目的達成のために没頭できます。そして、目的達成後は、非常に高い満足感達成感心地良い疲労感を得ることができるのです。

大人でも、「締め切り直前に集中力が高まり、一気に仕事を片づけることができた」「スポーツ中、身体が自然と動くような感覚があり、練習ではできなかったはずの高度なプレイができた」といった体験をしたことがある方もいるのではないでしょうか? これこそが、フロー状態です。

そして、フローよりもさらに集中力が増した状態ゾーンといいます。ゾーンに入ると、これまで体感したことのない超人的な集中力が発揮されますが、その境地にたどり着くことはなかなか難しいのだそう。オリンピックで活躍する一流アスリートなど、特に集中力を求められる人々の中には、ゾーンを経験したことがある方もいるようです。

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フロー状態(ゾーン)がもたらすもの

シリコンバレーを拠点とする教育機関 シンギュラリティ・ユニバーシティのFlow Genome Projectの研究結果によると、フロー状態に入ると次のような効果がもたらされるのだそう。

  • 創造性や、課題解決能力4倍になる
  • 新しいスキルを学習するスピード2倍になる
  • 痛み疲労を感じなくなる
  • ノルアドレナリン、ドーパミン、エンドルフィン、アナンダミド、オキシトシンといった、やる気や集中力を高めたり、幸せを感じさせたりする脳内物質が放出される

 
そのため、フロー状態に入ると、疲れやストレスを感じることなく、効率的なスキルアップが可能になるのです。

無敵の能力を身につける3つのコツ3

フロー状態(ゾーン)を作るためのポイント

子どもにフロー状態を体験させるためには、以下のポイントに注意しましょう。また、フロー状態に入ることには、子どもにとってさまざまなメリットがありますので、そちらも併せてご紹介します。

思いっきり遊ばせる

発達心理学を専門とするお茶の水女子大学の内田伸子名誉教授らが、20代の子どもを持つ保護者約1,000人を対象に行なった調査によると、子どもが偏差値68以上の難関大学に合格するなどした保護者35.8%「小学校入学前の子育てで意識していたこと」について「思いっきり遊ばせること」と回答しました。一方、そうでない子どもの保護者で同じ回答をした割合は、23.1%に留まったのだそう。

大学講師や幼児教室主宰などを通して、乳幼児から青年まであらゆる年代の子どもを20年間指導してきた、子育てガイド・長岡真意子氏は、次のように述べています。

遊びを通し自発的に深く興味に没頭することで、リラックスした集中状態努力を努力と感じない「フロー状態」を身につけます。

「遊び」のすごいところとは、こうしたスキルや能力を、習い事のように大人の指導によって学ぶのではなく、自発的に楽しみながら身につけてしまえることです。またやるべき課題の間にも遊びを挟むことで、課題へ取り組む意欲や効率がより高まることも分かっています。

(引用元:All About|子供の「遊び不足」が危険!遊びの天才を取り戻す方法

前述の調査結果からもわかる通り、遊びを通してフロー状態に入るという経験は、子どもの学習能力を伸ばすことにもつながるのです。そのため、子どもが遊びに集中しているときは、親はむやみに声かけをせず、できる限り見守りましょう。

ルーティンワークを身につける

子どもが、勉強や習い事の練習の際に集中して取り組み、フロー状態に入れば、短時間で効率的に能力やスキルが身につきます。フロー状態に入りやすくなる集中力を養うためには、ルーティンワークを身につけることが有効です。ルーティンワークは「どうやったらうまくいくのか」などと試行錯誤する必要がないため、余計なことを考えることなく作業に集中しやすくなるといわれています。

メンタルトレーナーの岡本正善氏は、集中力をつける方法としてルーティンワークを身につけることを推奨しています。

例えば、勉強前には「1回深呼吸をして書棚の一番左に並べてある数学の問題集を取る」「試験開始の合図が聞こえた瞬間、筆箱を開いて使い慣れた鉛筆を取り出す」など、何でも構いません。毎回徹底することで、潜在意識は素直に目標に向かって動き出すようになります

(引用元:ベネッセ教育情報サイト|ここ一番という場面で「集中力」を発揮する方法、「ゾーン状態」へのポイント【後編】

勉強の場合は「まずは机に座って今日やることを書き出す」、ピアノの練習の場合は「指慣らしとして『猫ふんじゃった』を弾く」など、子どもにもできそうなルーティンワークを身につけさせてみましょう。

成功している姿をイメージする

メンタルトレーナーの岡本正善氏は、集中力を上げる方法として、ルーティンワークを身につけるほかに成功している姿をイメージすることも推奨しています。

潜在意識に働きかけるには、成功パターンをイメージするだけでいいのです。ただし、何度も繰り返して、潜在意識にイメージを刷り込む必要があります。そうすると、本番では潜在意識がイメージに沿って動き出し、「失敗するかもしれない」といったマイナスのメンタルに惑わされず、集中力を発揮する状態に入りやすくなります。

(引用元:ベネッセ情報教育サイト|ここ一番という場面で「集中力」を発揮する方法、「ゾーン状態」へのポイント【後編】

ただし、子どもの場合はまだイメージするのが難しい場合もあるので、親から子どもに「今日10分だけ勉強したら、新しい漢字を○個覚えられるようになって、いろんな本が読めるようになったり、国語のテストで良い点が取れたりするよ!」など、成功することによってどんなことが起こるのか、できるだけ具体的に説明してあげましょう。そうすることで、子どもが何かに集中して取り組むことのメリットを学ぶ機会にもなります。

***
何かに没頭するフロー状態は、子どもの能力を伸ばしたり、成功体験を身につけたりするのに欠かせないものです。子どもが集中しているときは、できるだけ見守る姿勢を保ち、充分にフロー状態を経験させてあげましょう。

文/田口 るい

(参考)
ベネッセ教育情報サイト|ここ一番という場面で「集中力」を発揮する方法、「ゾーン状態」って何?【前編】
ベネッセ教育情報サイト|ここ一番という場面で「集中力」を発揮する方法、「ゾーン状態」へのポイント【後編】
識学総研|ミハイ・チクセントミハイの「フロー理論」こそ、モチベーションコントロールの最適な処方箋
プレジデントオンライン|「頑張ろう」「勝とう」は集中力の邪魔だ
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