教育を考える 2019.10.11

東大生の親の9割が実践している「子どもの話を聞く」習慣。あなたは本当にできてますか?

編集部
東大生の親の9割が実践している「子どもの話を聞く」習慣。あなたは本当にできてますか?

雑誌『プレジデントFamily』が東大生を対象に行なった調査によると、東大生の親の9割が「子どもの話を聞く」のを習慣にしていたことが明らかになりました。みなさんのなかにも、同じことを心がけている人はいることでしょう。

しかし、「うちはちゃんと話を聞いているから大丈夫」と思っている人も、もしかすると「聞いているつもり」になっているだけかもしれませんよ。今回は、親が子どもの話を聞くことの効果に迫るとともに、話の聞き方のコツをご紹介します。

子どもの心が安定し、学習意欲が高まる

大人でも、自分の話をしっかり聞いてもらえると、認めてもらえた、受け止めてもらえたと感じられて、嬉しくなりますよね。それは、子どもも同じです。日本精神療法学会理事長 松本文男氏によると、親と心ゆくまで会話を楽しんだ子どもは、精神的に満たされ、自然とやる気が湧いてくるのだそう。そのため、自主的に学習するようにもなります。つまり、親に話を聞いてもらい、心が安定している子どもは、必然的に学力向上が期待できるということです。

東北大学加齢医学研究所所長の川島隆太さんは、自身の研究結果を踏まえ、親が子どもの話を聞く習慣と子どもの学力向上には因果関係があると明言し、下記のように説明しています。

「『話をしっかり聞いてもらえている』と子供が答えたということは、家族のコミュニケーションがきちんと取れているということです。私は別の研究でコミュニケーションが親子関係にどんな変化をもたらすのかも調べました。すると、当然のことですが、親子の愛着関係が高まり、子供の精神状態が安定しました。こうした親子関係にある子供は、家で安心して暮らしているから、落ち着いて勉強に取り組めるのです」

(引用元:プレジデントオンライン|“ながらスマホ”で子の芽を摘む気の毒な親

東大生の親の9割が実践している「子どもの話を聞く」習慣2

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「スマートフォンを見ながら」はもちろんNG!

一方で、「いつも子どもの話を聞いているつもりだけど、なんの教育効果も見られない」という親御さんもいるはず。であれば、「話を聞いているつもり」になっているだけかもしれません。「しっかり話を聞いている」と「話を聞いているつもり」は、似ているようでまったく違うのです。

たとえば、子どもが話しかけてきたとき、きちんと子どもの方に体を向け、子どもの目を見て話を聞いているでしょうか。スマートフォンを触りながら、あるいはテレビを観ながら、適当に相槌をうったり、生返事をしたりしてはいませんか? あるいは、話の途中で口を出したり、自分の聞きたい話題にシフトチェンジしたりしていませんか?

親が「話を聞いているつもり」になっているだけでは、子どもは「しっかり話を聞いてもらった」という満足感を得られません。そればかりか、「どうせちゃんと聞いてくれない」と、子どもが心を閉ざしたり、無気力になったりしてしまう恐れもあります。

特に近年、親がスマートフォンを見ながら子どもの話を聞いていることについて、深刻な問題となっています。南カリフォルニア大学と日本のNPOが行なった調査では、調査対象となった子どもの5人に1人が、「親が自分よりスマートフォンを大事にしていると感じる」と答えたそう。心の痛くなる結果ですが、子どもは親の些細な行動から、親が自分を大事にしてくれているかどうかを敏感に感じ取っているということがわかります。

東大生の親の9割が実践している「子どもの話を聞く」習慣3

親が心がけるべき、話の聞き方のコツ

では、具体的にどのようにして子どもの話を聞けばいいのでしょうか。親が心がけるべき、話の聞き方のコツを3つご紹介します。

「あいうえお」で反応する

フリーアナウンサーであり株式会社スマイルボイス代表取締役の倉島麻帆氏は、傾聴に大切なポイントの頭文字を「あいうえお」に並べて、以下のように提示しています。

あい:アイコンタクト&相槌
う:うなずき
え:笑顔
お:おうむ返し&オーバーリアクション

 
子どもの話を聞くときは、子どもの目を見て(=アイコンタクト)、「そうなんだ」「へえ!」などの合いの手を打ったり(=相槌)、首を縦に振って理解や承諾を示したり(=うなずき)します。大切なのは、基本的に明るい表情(=笑顔)で話を聞き、子どもをリラックスさせること。

また、子どもが「〜だから、悲しかった」と言ったら、「そっか、それは悲しかったね」と同じ言葉を返したり(=おうむ返し)、「えー!? ママまで悲しくなっちゃうよー!」と感情を大げさに表現したり(=オーバーリアクション)して、きちんと話を聞いていることが子どもに伝わりやすいような反応をすることも大切です。

「それで?」「どうしてだと思う?」で返す

「それで?」「どうしてだと思う?」——これらは、東進ハイスクール・東進衛生予備校国語科専任講師の林修さんが、自身の幼少期に祖父母からよくかけられていた言葉だそう。

林さんが祖父母に話をすると、祖父母は話が途切れたところで「それで?」続きを促したそうです。また、会話の途中で、林さんが祖父母に「なんで?」と質問すると、祖父母はすぐには答えなかったと言います。逆に、「なんでだと思う?」と質問で返し、林さん自身に答えを考えさせたのだとか。

このように、自分の話に対して質問されたり、一緒に考えたりしてもらえると、相手が自分の話に興味を持ってくれていると感じ、もっと話したくなるはずです。子どもに、「もっと話したい!」と思わせることができたなら、話の聞き手として「満点」と言えるのではないでしょうか。

親が言いたいことは、後回し

たとえば、子どもが「習い事に行きたくない」と駄々をこねたら「そんなワガママでどうするの。もっと頑張ってごらん」と言ったり、「学校が嫌だ」と愚痴をこぼしたら「嫌でも行かないとダメでしょ」と言ったりーーー子どもの話を聞いていると、つい否定や反論をしたくなってしまうかもしれません。でも、それでは逆効果。子どもは、「どうせ言っても無駄だ」と、話をしてくれなくなってしまいます。

大切なのは、自分が言いたいことは後回しにして、とにかく共感すること。子どもが愚痴をこぼしたとしたら、まずは「行きたくないんだね」「嫌なんだね」「オウム返し」で共感してあげましょう。教育評論家の親野智可等さんは次のように述べています。

親も先生も、子どもにいろいろ言いたいことはあると思いますが、それは後回しにして、とにかくまずは共感的に聞いてあげてください。

そうすれば、子どもは話しやすくなります。

たっぷり話すことができれば、気持ちもスッキリします。

すると、「もう少しがんばってみよう」と思う場合もあります。

そうならない場合もたくさんありますが、そういう場合も問題点が明確になります。

(引用元:Schola|子どもの話にはまず共感。励ましやアドバイスは共感の後に

子どもの話をしっかりと聞けば、「なぜ習い事に行きたくないのか」「なぜ学校が嫌なのか」自然と問題点が明確になります。また、大人も同じですが、共感がないまま一方的にアドバイスをされても受け入れる気にはならないでしょう。助言やアドバイスをするにしても、まずはお子さんの目線に立って「大変だったね」「嫌な思いをしたね」と共感することが大切です。

***
忙しいなかでも、ちょっと手を休め、子どもの話をしっかり聞いてあげてみてください。大きな教育効果が得られるだけでなく、親子の大切なコミュニケーションの時間になるはずです。

また、親は子どもの鏡です。親がしっかり話を聞く姿勢を見せれば、子どもも話を聞くことの大切さに気づけます。親子で会話を楽しみながら、ともに最高の「聞き上手」を目指してみてはいかがでしょうか。

(参考)
プレジデントオンライン|“ながらスマホ”で子の芽を摘む気の毒な親
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かもめの本棚|「自分から動ける子」にする親の傾聴力
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StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「聞く力」は「話す力」よりも重要だった! “聞ける子” の親がしている5つのこと
朝日新聞デジタル|日本の子どもの2割「親は自分よりスマホ」 米大調査
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Schola|子どもの話にはまず共感。励ましやアドバイスは共感の後に
Schola|反抗期の子どもへの話の聞き方~上手な話の聞き方で、反抗期の子どもでも話したくなる