あたまを使う 2019.11.11

「理系脳」は育てられる。子どもに「あなたは文系」と言ってはいけない理由

編集部
「理系脳」は育てられる。子どもに「あなたは文系」と言ってはいけない理由

AIの発達がめざましい昨今、10年、20年のうちに、今ある仕事の半分ほどは消えてしまうという説もあります。そんな先行きの分からない将来で、子どもが自信をもって自分の進路を決めるためには、「理系脳」を鍛えておくといいようです。

そもそも「理系脳」とはどんな能力なのか、文系両親のもとで理系脳の子どもを育てることができるのか、家庭でできる理系脳の育て方について一緒に考えてみましょう。

これからますます必要とされる「理系脳」

「子どもたちが就職するころには、現在ある職業は半分ほどに減っているだろう」という話をよく見聞きするようになりました。

今までにない大きな労働環境の変化によって、なくなっていく仕事もあれば、この先も残る仕事、あるいは今後有望な仕事もあります。どのような仕事が当てはまるのか、「10年~20年後まで残る仕事トップ15」「2030年までに人々がつく将来有望な職業のトップ10」に挙がったなかから、それぞれのトップ5を見てみましょう。

10年~20年後まで残る仕事トップ5
1位 レクリエーション療法士
2位 整備・設置・修理の第一線監督者
3位 危機管理責任者
4位 メンタルヘルス・薬物関連ソーシャルワーカー
5位 聴覚訓練士

(※プレジデントオンライン|文章が読めない「新聞読まない人」の末路より抜粋)

2030年までに人々がつく将来有望な職業トップ5
1位 ボットロビイスト
2位 未来貨幣投機家
3位 生涯カウンセラー
4位 微生物バランサー
5位 ミーム(文化的遺伝子)エージェント

(※経済界|未来の職業―2030年に有望な仕事とは?より抜粋)

これらの仕事をざっと見て、文系・理系で分けてみると、圧倒的に理系の職業のほうが多くランクインしていることがわかりますね。

ところで、「理系脳」は、決して算数や理科が得意な子どもを育てるということではありません。本記事では理系脳について、学習塾の経営や学校教育コンサルタントなど幅広く活躍する諸葛正弥氏の著書「理系脳―理系に強い子どもに育てる技術」(マイコミ新書)から定義をご紹介します。

本書では、一般的に理系が得意であるとされている「発想力」「論理力」「推理力」「検証力」「問題解決力」という能力を総合したものが「理系脳」だと考えています。(中略)また、理系脳とは理系と文系の両方に必要な「専門性を超えた能力」であると考えています。

(引用元:諸葛正弥(2010),『理系脳―理系に強い子どもに育てる技術』, マイコミ新書.)

つまり、「理系脳」は、算数や理科といった理系科目に特化している能力というわけではなく、理系と文系の両方に必要な能力なのです。

新しい職業が増え、かつてあった職業がなくなっていく激動の社会を生き抜いていくためには、自分の頭で論理的に考え、問題を解決する能力が必要不可欠です。やはり、これからの時代は、「理系脳」を鍛えておく必要があると言えるでしょう。

子どもに「あなたは文系」と言ってはいけない理由2

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「理系脳」の能力は、「国語」にも欠かせない

「『理系脳』だと国語が不得意になってしまうのでは?」と不安に思う方もいるかもしれませんが、そうではありません。前述のように、「理系脳」は、理系・文系を問わずどの教科にも必要とされるもの。

登場人物の気持ちを考える(発想力推理力)、作者の言いたいことを要約する(論理力検証力)、自分の考えを文章にまとめる(発想力論理力問題解決力)など、国語の学習でも理系脳が必要です。

理数系専門塾「エルカミノ」代表の村上綾一先生は、以下のように述べています。

国語という科目は、世の中を知ったり、読書量だったり、心の成熟も必要なので、どうしても伸びるのに時間がかかるんですね。ただ、算数で鍛えた論理性があれば、後から必ず国語も追いついてきます。

(引用元:日経DUAL|小学生 算数で理系脳を鍛えれば、国語も付いてくる

漢字の読み書きにおいても「へん」や「つくり」を学んでからは、推理力・論理力を使えば新出漢字の習得が楽にできるようになりますね。

また、社会や理科でも、植物や動物を育てる経験を通して生きものの生態を学ぶ(推理力・検証力)、身近な人々や環境、社会との関わりから見方や考え方を学ぶ(発想力・論理力)など、理系脳は必須です。

子どもに「あなたは文系」と言ってはいけない理由3

家庭では「理系脳」をこんなふうに育てよう

理系脳を育てるために必要なのは、計算問題やパズルをたくさん解くことではありません。理系・文系といった先入観を取り払い、子どもが身の回りのことに興味関心を高められるよう促すことが大切です。ここでは、前掲の諸葛正弥氏の著書に記されたステップのうちの3つに沿って、理系脳を育てるコツについてご紹介します。

誰もが理系脳の才能を持っていると信じる

「個別指導教室 SS-1」代表で、中学受験や家庭学習に関する本を数多く執筆している小川大介先生いわく、子どもは、8〜10歳の頃に「自分はこうだ」と強く思い始める傾向にあるそう。その時期に、「あなたは本当に○○が苦手だね」「ママは算数が苦手だったから、きっとあなたも文系だよ」などと言われると、子どもの中でセルフイメージが出来上がり、脳の使い方が固定されてしまうのだとか。悪意なく発してしまいがちですが、このように子どもを決めつける発言は控えましょう。前述のように、理系脳は、理系科目に特化した能力というわけではありません。誰にでもその才能はあるという点を理解し、子どもの成長を信じることが大切です。そして、努力の結果がすぐに現れなくても、プロセスを認めてあげることも必須です。

 

子どもの興味を活かし、一緒に調べ、考える

子どもに「これは何?」や「なんで?」と質問攻めにされた経験がある方は多いことでしょう。このように、子どもが興味や関心をもったときには、一緒に考えたり調べたりすることで理系脳が育まれます。元筑波大学附属小学校の副校長でカリスマ教師として名高い田中博史先生によると、子どもの知的好奇心、学習意欲が最も高まるのは、子ども自身が「説明したい」と感じたときなのだとか。そのため、子どもの疑問について一緒に考えているときには、親が説明口調になってはNG。わざと間違えたり、勘違いしたりして、子どもを「そんなこともわからないの? じゃあ教えてあげる」という気持ちにさせ、説明させてあげるのがよいのだそう。また、小学生になって文字が読めるようになった段階では、図鑑や科学に関する本を活用するのもよいでしょう。おすすめの本については後述します。

 

語り合い、思考をアウトプットさせる

インプット以上に重要なのがアウトプットです。会話をすることで、思考が整理され、論理的に相手へ伝えるトレーニングになります。立教大学特任教授の黒澤俊二氏いわく、たとえば「このステンドグラスは右と左の四角の形が同じ形だから、きれいに見えるね」のような、「○○だから××」「理由のある見解を示す」ことは、「筋道を立てて考える力」すなわち「論理的思考力」に直結するのだそう。子どもと語り合い、思考を共有するときには、「何を根拠としているのか」を掘り下げましょう。学んだことを親子の会話で発信することで、思考が整理され、論理的に相手へ伝えるトレーニングになります。

 

子どもに「あなたは文系」と言ってはいけない理由4

「理系脳」にオススメの本

前述の「子どもの興味を生かす」ことのアプローチとして、図鑑や科学に関する本からお子さんの興味を引き出すのもおすすめです。

■『Why?まいにちの科学』 NPO法人ガリレオ工房/監修(世界文化社)

Why?まいにちの科学
『Why?まいにちの科学』をはじめ『Why?マジックの科学』『Why?サバイバルの科学』など、韓国で大ヒットし世界中で読まれている科学学習マンガ。「自動販売機はどうやってお金を識別する?」「危険信号はどうして赤?」など、大人でも答えに詰まってしまいそうな疑問をキャラクターたちが漫画でわかりやすく解説してくれます。対象年齢は小学校低学年以上ですが、中高生〜大人でも楽しめる内容なので、愛読書として長く手元に置いておけるシリーズです。

■『理系アタマがぐんぐん育つ 科学の実験大図鑑』 ロバート・ウィンストン/著(新星出版社)

理系アタマがぐんぐん育つ 科学の実験大図鑑
世界12カ国で翻訳され、米村でんじろう先生も推薦する科学図鑑。ネバネバのスライムや、ペットボトルと風船で作る肺の模型、小麦粉を使った火山の噴火など、子どもがワクワクする28の実験が、写真つきで掲載されています。実験方法は安全で、材料は簡単に手に入るものばかり。お子さんの「なぜ?」にこたえるための科学のしくみもきちんと説明されており、楽しく理系脳を育てられる一冊です。

***
理系脳を鍛えておくと、将来の仕事選びの幅がぐんと広がります。子どもの可能性を広げるために、身の回りのあらゆるものや体験を活かして、親子で理系脳のトレーニングを楽しんでみてはいかがでしょう?

(参考)
ヒューマンアカデミー こども教育総合研究所|こどもを理系脳にするために
PR TIMES|世界46カ国で累計7600万部突破!日常のなぜ?に答える科学まんが「Why?シリーズ」日本上陸
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「文系・理系」どっちがいい? 将来 “稼げる” のはやっぱり○○だけど……。
諸葛正弥(2010),『理系脳―理系に強い子どもに育てる技術』, マイコミ新書.
NPO法人ガリレオ工房 監修(2019),『Why?まいにちの科学』, 世界文化社.
ロバート・ウィンストン著(2017),『理系アタマがぐんぐん育つ 科学の実験大図鑑』, 新星出版社.
朝倉仁監修(2015),『さわって学べる算数図鑑』, 学研プラス.
プレジデントオンライン|文章が読めない「新聞読まない人」の末路
経済界|未来の職業―2030年に有望な仕事とは?
日経DUAL|小学生 算数で理系脳を鍛えれば、国語も付いてくる
マイナビニュース|子どもの理系脳、文系脳って本当にあるの? その分かれ道はいつ??
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|“考える力”を伸ばす、子どもの「どうして?」と親の「どうして?」
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