教育を考える 2020.10.12

元開成中学校長が提案する、子どもの論理力を伸ばす “5W1H” の質問。ポイントは「2:1」

編集部
元開成中学校長が提案する、子どもの論理力を伸ばす “5W1H” の質問。ポイントは「2:1」

ビジネスシーンではよく耳にするロジカルシンキング」。いわゆる論理的思考のことですが、この力が必要とされるのは、なにも働く大人だけではありません。むしろ子どもたちこそ、早い段階で身につけることができれば、近い将来必ず役に立つはずです。

今回は、すぐに実践できる「論理力の鍛え方」について解説していきます。

これからの時代に必要不可欠な「論理力」

論理的思考力とは、簡単に言うと筋道を立てて考えたり、説明したりできる力です。会話をしていると、「話がまとまっていないから内容が理解できない」と感じたことや、逆に「難しい内容をわかりやすく説明してくれて助かった」などと感じた経験があるでしょう。このように、論理力は社会で求められる能力であり、身につけておくと人生において大きなメリットをもたらします。

特にこれからの時代は、いまよりもっと論理力を問われる機会が増えてきます。2020年度から大学入試センター試験が「大学入学共通テスト」に変わることで、詰め込んだ知識よりも思考力・判断力・表現力が評価されるようになります。

すでに新しい学習指導要領にも「主体的・対話的で深い学び」を重視することが明記され、授業では生徒たちが互いに課題を考えて発表し合ったり、活発な議論を交わしたりと、自分の考えを論理的に伝える必要性が増しているのです。また、受験や就職などの面接においても、自分の考えをよりわかりやすく論理立てて伝えることができれば武器になるでしょう。

論理的思考力が身についていると、ビジネス面でも大きな強みになります。どんな仕事でも求められるのは、問題解決能力コミュニケーション能力ですが、まさにこれらは論理的思考力を土台とすることで向上していくのです。

問題解決能力を向上させるには、失敗の原因はなにか、現状改善のためにはどうすればいいか、などを論理的思考をもとに追究する必要があります。また、一貫性のある論理的な主張ができれば、伝えたいことがより相手に伝わりやすくなり、説得力も高まるでしょう。その結果、スムーズなコミュニケーションを促すことができるのです。

あとひとつ、今後社会人が絶対に身につけておかなければならないスキルとして情報の取捨選択能力があります。あらゆる情報があふれる現代社会では、根拠のないうわさ話やフェイクニュースに惑わされないためにも、物事の真偽を見抜く目を養わなければなりません。玉石混交の情報のなかから、信頼できるものを選び抜き、その情報に基づいて筋道を立てて思考するスキルは、まさしく「論理的思考力」であると言えるでしょう。

子どもたちが将来困らないために、いまのうちから「論理的思考力」を身につけておきたいと思いませんか?

子どもの論理力を鍛える02

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論理的な会話で親子げんかが減る!?

論理力を鍛えるために、特別な努力は必要ありません。「『論理力』はそんなに難しいスキルではない」と話すのは、『論理力は小学6年間の国語で強くなる』(かんき出版)の著者・小川大介さんです。

小川さんによると、私たちは小学校6年間の国語で、「論理力を鍛えるために必要な3つの力」である「把握する力」「思考する力」「伝達する力」を学んでいるのだそう。物事を論理的に考えるためには、あらゆる面からの「情報」を集めることが重要です。それは自分の論理を明確にするための根拠となります。ほかに客観的視点も、論理的思考には欠かせません。

「自分にとっては○○だけど、相手にとっては△△かもしれない」
「○○だけど、別の角度から見たら△△ということもある。もしかしたら、●●ということもあるかも」
小川さんは、このような論理的な思考を育むためには、学校の勉強よりも家庭での日常会話で鍛えるほうがずっと簡単だと話します。

たとえば、母親が子どもに「ちゃんと掃除しなさい」とだけ伝えたとします。しばらくして見てみると、“ちゃんと” 掃除したようには見えない……。そこでカッとなって「どうしてちゃんと掃除しないの!」と怒る母親に対して、子どもは「 “ちゃんと” 掃除したよ!」と反発する。この行き違いは、親子であっても “ちゃんと” の認識がずれていることから起こります。

人は誰でも主観で物事を判断し、自分の考えや思い込みを相手に押しつけがちです。その結果、けんかや対人トラブルが発生するのです。日頃の親子のなにげない会話でも、論理的に話すことを心がければ、ぶつかり合うこともグンと減るはず。そして、そのような会話を繰り返すことで、自然と論理的思考力は身についていきます。

子どもの論理力を鍛える03

子どもの論理力を鍛える会話術

子どもの論理力を鍛えるには、次の方法がおすすめです。

子どもへの質問は「5W1H」をひとつずつ

かつて開成中学・高校の校長を務めた柳沢幸雄先生によると、「言語能力を伸ばすために親ができるのは、子どもの話をきちんと聞くこと」だそう。子どもがしゃべる時間を2、親がしゃべる時間を1として、子どもにたくさん話をさせるといいそうです。

そして、子どもの話が一段落したら、質問を “ひとつだけ” します。その際は「5W1H」の疑問詞を使いましょう。たとえば、次のような聞き方をすると子どもは答えやすくなります。

「今日は楽しかった!」
「なにがあったの?」
「いっぱい遊んだの」
「誰と?」
「お友だちの◯◯ちゃんと」
「どんなことをして遊んだの?」

そして、このことを繰り返すうちに、子どもは自然に「5W1H」についてきちんと整理したうえで話をすることができるようになっていきます。この力は、論理的表現力そのものであり、読解力にもつながるものです。文章を読んで内容を理解することは、その文章のなかに「5W1H」の要素がどのように詰まっているかを理解することに他なりません。

(引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|生きる力をつくる「10歳までの幅広い経験」。子どもに勉強は教えるな!?

日常会話に取り入れたいマジックワード

教育評論家の石田勝紀さんは、親子の日常会話のなかに次の言葉を積極的に取り入れることをすすめています。これらの言葉を会話のなかに入れると、考える力と構成力が身につくそう。

「要するにどういうこと?」
子どもは、見たまま・経験したままを話す傾向があります。そのため話がまとまっておらず、相手が理解できないことも。「要するに?」とたずねて簡単に内容をまとめる練習を繰り返せば、国語の要約問題でも役立ちます。

「たとえばどういうこと?」
子どもの話は漠然としていてわかりにくいと感じますよね。相手にわかりやすく伝えるために、抽象的な内容を具体的に説明できるよう練習しましょう。

「ほかにはどんなことがあるの?」
「◯◯が△△した」のように単純な話し方ばかりだと、論理的思考力は身につきません。「ほかには?」と問いかけることで、話題を水平展開させて、語彙を増やしたり発想力を高めたりすることが期待できるでしょう。

***
「論理的思考力」「ロジカルシンキング」と聞くと、難しいことのように感じますが、親子の日常会話でも簡単に鍛えることができます。お子さんとの会話をもっと充実させるためにも、論理力を育む会話術を参考にしてみてくださいね。

(参考)
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「論理的思考」は家庭で身につけられる! これからの時代に必須の能力を手軽に伸ばす方法
MY FUTURE CAMPUS|論理的思考 自分の思考を整理し、筋道立てて表現する力
日経DUAL|読書好きなのに国語で高得点を取れない子の弱点
東洋経済オンライン|効果的!子の論理力を育てる「5つの言葉」
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|生きる力をつくる「10歳までの幅広い経験」。子どもに勉強は教えるな!?