ビジネスの世界ではおなじみの論理的思考(ロジカルシンキング)ですが、じつは、これからの時代を生き抜く子どもたちにも必要不可欠なスキルなんです。論理的思考ができると、どんなメリットがあるのでしょうか? また、家庭で論理的思考を身につけさせるには、何をすればいいのでしょうか? 詳しくご紹介します。
子どもに「論理的思考って何?」と聞かれたら
「小さいときから論理的思考を身につけたほうがいいんだって」と私たち大人が言えば、おそらく子どもたちは「論理的思考って?」と聞いてくるでしょう。そのとき、答えに困ってしまう人も多いのではないでしょうか。論理的思考がどのようなものか把握していても、子どもにその意味をわかりやすく伝えるのは案外難しいものですよね。
公立中高一貫校適性検査の分析を専門とし、論理的思考力や日本語読解力、記述表現力の養成に力を入れている若泉敏氏は、「論理的思考力」についてこのように説明しています。
小学生に対してより平易に説明するならば、【同じものや違いに着目して物事を区別し、あれとこれの関係やつながりがわかるように考えて判断し、さらに判断した根拠を明らかに示したうえで、相手にわかりやすく説明する力】だといえます。
(引用元:ベネッセ教育情報サイト|第9回 「論理的思考力」とは何か)
つまり、物事の「同じところ」や「違うところ」に気づいたら、どうしてそう感じたのか「理由」を考え、それを人にわかりやすく伝えることが論理的思考だと言えそうですね。
論理的思考は、学校の授業でも重視されている
算数や理科といった理数系の授業では、問題に対して仮説を立て、それが本当に正しいかどうかを検証し、結果を導き出します。これは論理的思考そのものと言っていいでしょう。
また、国語の授業では文学作品を題材とし、物語の登場人物になったつもりで、想像力をはたらかせて気持ちを読み解く単元があります。たとえば「ごんぎつね」であれば、いたずらばかりしていたキツネのごんが、なぜ兵十にまつたけを届けるようになったのか。兵十はどのような気持ちで「ごん、おまえだったのか」と言ったのか。本文には書かれていませんが、それぞれが情景を思い浮かべ、今までの自分の記憶や経験、あるいは知識をフルに使って自分の意見を組み立てていくプロセスには論理的思考が必要です。
近年、学校の授業では子どもたちが互いに学び合って理解を深める手法が採られ、新しい学習指導要領にも「主体的・対話的で深い学び」として重視されています。今後、論理的思考が子どもたちにますます求められていくのは明らかでしょう。
論理的思考のメリット
さらに、論理的思考には次のようなメリットがあります。
●説得力が身につく
皆さんの身の回りには、取り留めのない話を延々と続けたり、何が言いたいのかわからない話をしたりする人はいませんか? このような人たちは、「論理的思考ができていない」と言えるでしょう。論理的思考を身につけると、自分の考えを話す際にも、その判断に至った経緯や根拠を筋道を立ててわかりやすく説明できるため、説得力のある話ができるようになります。都留文科大学特任教授 石田勝紀氏は次のように述べています。
論理的であれば、説明が体系立てられ、話がわかりやすくなります。ですからプレゼンテーションや論文などのアウトプットでは、論理的であることが重要です。
(引用元:東洋経済オンライン|頭のいい子はみな「直感力」を鍛えている)
ただ、同氏は論理性だけに気を取られてアウトプットの中身がおろそかになることも少なくないと言います。論理性だけに視点が行かないよう注意したいところですね。
●問題解決能力が身につく
論理的思考が身につくと、問題が発生しても、どのように解決すれば良いのか筋道立てて考えられるようになります。この問題解決能力、じつは、2016年に世界経済フォーラムが発表した「2020年に必要なビジネススキル」のランキング第1位でした。AI技術が発展し、簡単な問題は全てAIが解決してくれる時代となりつつある今、AIやロボットに処理しきれない複雑な問題を解決する能力は、未来を生きる子どもたちにとって必須なのです。
家庭で論理的思考を身につけさせる方法3つ
子どもへ論理的思考を身につけさせたいと思っても、書籍で理解を深めたりセミナーへ参加したりといった大人のような方法では難しいですよね。子どもに合った「家庭でできる方法」をいくつか紹介します。
●読書
自分の考えを相手により正確に伝えるためには、語彙は多ければ多いほど有利になります。語彙力をアップさせる一番の方法は、本をたくさん読むこと。幅広いジャンルの本を読んで語彙を増やし、それを使いこなすことで思考力が増します。国立青少年教育振興機構の調査によると、読書量が多い人ほど論理的思考能力が高いのだそう。
一橋大学大学院教授 楠木建氏は、次のように述べています。
論理的な思考を磨く道具としても、ネットの時代における本の重要性はむしろ高まっていると僕は思います。
(引用元:東洋経済オンライン|ネット時代に、なぜ「読書」が大事なのか?)
インターネットの発展した今だからこそ、改めて読書の重要性について考えてみましょう。自分から本を読みたがらないお子さんには、少しでもお子さんが興味を抱きそうな本を読み聞かせてあげてくださいね。
●日常会話に5つの質問
毎日の生活で、子どもと論理的にしゃべろうというのはなかなか難しいもの。石田勝紀氏は、次の5つのポイントをおさえた質問で子どもとコミュニケーションを図ることを提案しています。
- 「要するに、どういうこと?」
- 「たとえば、どういうこと?」
- 「ほかにはどんなことがあるの?」
- 「なぜなの?」
- 「どうすればいい?」
これらは順に、「具体的な内容をまとめる」「抽象的なことを具体的にする」「ひとつの話題を水平展開する」「理由や背景を考える」「方法を考える」ことの練習になり、この積み重ねが論理的思考の基礎を作るのだそう。何気ない日常会話に質問を取り入れるだけで、論理的思考が磨かれていきますよ。
●ゲームで楽しくトレーニング
論理的思考は、遊びを通してトレーニングすることもできます。オススメのおもちゃ・ゲームをご紹介しましょう。
キュボロ
キュボロとは、上・下・中に道のある一辺5cmの立方体の積み木のこと。積み木を組み合わせて道を作り、ビー玉を転がして遊ぶというものです。藤井聡太さんが幼少期から遊んでいたことで一躍話題となりました。おもちゃ屋さんで見かけたことのある方も多いかもしれませんね。
実際に遊んでみたことのある方はわかるかもしれませんが、キュボロを組み立てるのは大人でも困難なので、子どもに組み立てさせるのは不向きです。日本知育玩具協会認定講師の中村桃子氏いわく、キュボロは、大人が組み立てるところを見せることに意味があるのだそう。
キュボロで何段もの積木の道を作るには、下から上へと順番にパーツを組み合わせていく必要があります。組み合わせ方を間違えてしまえば、当然、ビー玉はうまく転がっていってくれません。大人が試行錯誤しながら積木を組み立てていく過程を見ることを通して、子どもたちは「うまくいくことにも理由があり、うまくいかないことにも理由がある」という論理性を学ぶことができるのです。
(引用元:こどもまなび☆ラボ|論理的思考力を上手に育てる! いま大人気の立体パズル「キュボロ」の遊び方)
親子で楽しみながら、論理的な思考を磨いてみてはいかがでしょう。
仲間はずれゲーム
仲間はずれゲームは、並んだものの中から文字通り「仲間はずれ」を探すシンプルなゲームです。相違点を探すことで、遊びながら論理的思考力を育てることができます。親御さんが絵を描いて問題を出してもいいですし、イラストや写真などを見ながら、服装、持ち物などの仲間はずれを探させても良いでしょう。
また、アプリを購入すればスマホでも手軽に遊べます。たとえば「Fiete Choice」は、船乗りのFieteと一緒に仲間外れを探すというシンプルな論理ゲーム。「何が違うのか、何が同じなのか」を見比べて楽しく遊んでいるうちに、論理的思考をトレーニングできますよ。
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論理的思考を身につけるのは、親子で楽しく遊びながらできることです。特におすすめするのは、仲間外れゲーム。私たち大人が思いもしない観点から仲間外れを探し出すこともあり、子どもたちの柔軟な発想力に驚かされることも多いですよ。
(参考)
ベネッセ 教育情報サイト|第9回 「論理的思考力」とは何か
日本経済新聞|「認定絵本士」大学で養成 子供のうちに読書習慣を
東洋経済オンライン|効果的!子の論理力を育てる「5つの言葉」
東洋経済オンライン|頭のいい子はみな「直感力」を鍛えている
プレジデントFamily|子供の「なぜだろう」を「なぜなら」に変える教室
プレジデントFamily|低学年にピッタリ 「仲間はずれ」ゲームで論理的思考力UP
BRAVE ANSWER|世界経済フォーラムとは?|2020年に必要なビジネススキルトップ10
東洋経済オンライン|ネット時代に、なぜ「読書」が大事なのか?
こどもまなび☆ラボ|論理的思考力の始まりを見逃すな! 「理由を挙げる姿勢」は、大切にしたい “タカラモノ”
こどもまなび☆ラボ|論理的思考力を上手に育てる! いま大人気の立体パズル「キュボロ」の遊び方