「子どもの自己肯定感が低い」と悩んでいる親御さんは少なくないでしょう。ここ10年ほどで「自己肯定感」という言葉はよく聞かれるようになりました。
この記事は、「自己肯定感とは」「自己肯定感が高い子・低い子の特徴」「子どもの自己肯定感と親の自己肯定感の関係」「子どもの自己肯定感を上げる親の声かけ」などについて詳しく説明しています。
子どもの自己肯定感、低い原因は親?
「自己肯定感」という言葉の生みの親は、臨床心理学者の高垣忠一郎氏だと言われています。高垣氏によると、「自己肯定感とは『自分が自分であって大丈夫』という感覚のこと」だそう。自己肯定感があれば、〇〇ができない自分や、だめなところも含めて、「自分は大切な人間だ」「自分には生きている価値がある」「自分は必要とされている」と思えるのです。
しかし、自己肯定感が低いと、いつも自分に自信がもてないため、失敗を恐れ、挑戦することができません。また、「できない自分」を認められないので、コンプレックスや嫉妬にとらわれやすくなってしまうのです。もしお子さまが、自己肯定感をもてないまま成長してしまったら……? 満たされない気持ちを抱えたまま人生を送ることになるかもしれません。
2018年に内閣府が行なった調査によると、日本の子どもはほかの先進国(*)の子どもに比べて、自己肯定感が低いことがわかっています。なぜ日本の子どもの自己肯定感は低いのか――その原因は、ずばり「親」です。幸せのメカニズムを研究している、「幸福学」の第一人者・前野隆司氏(慶應義塾大学大学院教授)は、親の言葉や態度が子どもの自己肯定感を下げていると言っています。子どもの自己肯定感の高低は、親の言動にかかっているのです。
*…韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン
親から見た「自己肯定感が高い子・低い子」
わが子の自己肯定感が高いのか低いのかよくわからないという親御さんも多いかもしれません。【自己肯定感が高い子の特徴】と【自己肯定感が低い子の特徴】をまとめましたので、お子さまの普段の行動に照らし合わせてみてください。
【自己肯定感が高い子の特徴】
- 失敗を恐れずに挑戦することができる
- 失敗から立ち上がることができる
- 簡単に諦めない
- 踏ん張る力がある
- 人の成功を一緒に喜ぶことができる
- 学校生活でのストレスが少ない
- 積極的に友だちに関わる
【自己肯定感が低い子の特徴】
- 言い訳が多い
- すぐに諦める
- 失敗を怖がる
- 挑戦しない
- 逆境に置かれたときに踏ん張れない
- 自分より弱い相手をいじめることがある
- いつも気持ちが満たされていないようだ
「うちの子は自己肯定感が低いようだ……」と、親として感じるようであれば、次項からのアドバイスをぜひ参考にしてみてくださいね。
子どもの自己肯定感を下げる「〇〇な親」
「子どもの自己肯定感は親(特に母親)の影響が強い」と強調するのは、児童精神科医の古荘純一氏(青山学院大学教授)。子どもたちは、「親が自分をどう見ているのか」という判断基準で、自分自身の価値を決めているのだそう。
ですから、親の言動次第で、子どもの自己肯定感は高くもなるし低くもなるのです。子どもの自己肯定感を下げてしまう親の行動を見てみましょう。
■叱ってばかりいる
「まだ〇〇してないの!?」「早くして」「何度同じこと言わせるの」など、子どもを叱ってばかりいる親御さんは要注意です。親が否定的な言葉をかけ続けると、「私はだめな人間なんだ」と、子どもは自分に自信がもてなくなります。
■過保護で過干渉
失敗を回避するために、「そんなやり方ではだめだよ」「ママ(パパ)の言うとおりにやってごらん」などのアドバイスをしていませんか。親が子どもに手をかけすぎると、子どもは「自分は親に信じてもらえない」と考えるようになってしまいます。
■子どもに期待しすぎている
子どもは本来、親の期待に応えたいと思っています。しかし、親の期待が大きすぎる場合、どんなに頑張っても報われないと感じ、自分を責めるようになったり、自分に対して罪悪感をもったりしてしまうようです。
■条件つきで子どもをほめている
「100点とってすごいね」「一番ですごいね」という条件つきのほめ方はやめましょう。「〇〇ができるからすごい」という根拠のある自信は、〇〇ができなくなったとたんに消えてしまいます。親がつい言ってしまいがちな言葉が、子どもの自己肯定感を下げているのです。
子どもの自己肯定感を上げる親の声かけ
次に、子どもの自己肯定感アップのために親ができることを紹介しましょう。高垣氏、古荘氏などの専門家の意見を参考に、子どもの自己肯定感を上げる声かけをまとめました。
■命令口調をやめて、具体的な声かけをする
命令の代わりに「具体的な声かけ」をしてみましょう。そして、子どもがその行動をできたときには、「できたね」「ありがとう」と伝えてください。この小さな成功体験が自己肯定感アップにつながります。
- 「早くしなさい!」→「時計の長い針が9になるまでにズボンをはこうね」
- 「片づけなさい!」→「テーブルの上のおもちゃをこの箱に入れよう」
- 「宿題やりなさい!」→「7時からご飯だよ。宿題は何時から始めるのかな?」
■否定語を使わず、正しい行動を伝える
「〇〇しないで」という否定語を使った叱り方は、子どもに「自分は悪い子」「私には悪いところがたくさんあるから直さなければならない」というセルフイメージをもたせることになるのだそう。否定語を使わずに、正しい行動を伝えましょう。
- 「イスの上に立たないで!」→「イスに座ろうね」
- 「走り回らないで!」→「静かに歩こうか」
- 「うるさくしないで!」→「小さな声でお話ししよう」
■才能や結果ではなく、努力や過程をほめる
「運動神経がいいね」「100点とってえらいね」など、才能をほめるのではなく、努力や過程をほめましょう。努力をしたからできなかったことができるようになったという「達成経験」が子どもの自己肯定感を高めます。
- 「頑張って練習したから、なわとびが10回も跳べるようになったね」
- 「『わ』が上手に書けたね。たくさん練習したもんね」
- 「〇〇ちゃん(妹)のこと、待っていてくれてありがとう」
親の声かけで子どもの自己肯定感がアップするのであれば、イライラしているときであってもプラスの声かけを心がけたいものですね。
親の自己肯定感を上げる方法
親の自己肯定感が低いほど、その子どもの自己肯定感も低いことがわかっています。自己肯定感の低い親は、不安やストレスを抱えながら子どもに接することが多いため、その親のもとで育った子どもも不安やストレスを感じやすくなるのです。特に、幼児期や学童期の子どもは、親の影響を強く受けやすいので、親の自己肯定感が上がれば、子どもの自己肯定感も上がりますよ。
では、どうすれば親自身の自己肯定感は上がるのでしょう?
■寝る前に、よかったことを3つ書き出す
教育ジャーナリストの中曽根陽子氏は、「幸せを感じること」で自己肯定感がアップすると言います。中曽根氏だけでなく、幸福学研究者の前野氏もおすすめしているのは、「寝る前に、その日にあったよかったことを3つ書き出す」という、自己肯定感を上げる習慣。
この習慣を続けるうちに、いままで見落としていた小さな幸せに気づくことが多くなり、幸せを見つけやすい「幸せ体質」になるそうです。そして幸せを感じれば感じるほど、あなたの自己肯定感はどんどんアップするでしょう。
■ポジティブ心理学を学ぶ
上述した「よかったことを3つ書き出す」という習慣は、ポジティブ心理学の考え方のひとつです。ポジティブ心理学とは、アメリカの心理学者・マーティン・E・P・セリグマン氏(ペンシルベニア大学教授)が創設した「幸せになる方法を科学的に検証する学問」のこと。
ポジティブ心理学は、マイクロソフト社やGoogle社をはじめとした企業や、教育機関でも導入されています。そして最近は家庭での応用も増えているようです。『世界に通用する子どもの育て方』の著者である、医学博士・松村亜里氏は、家庭内でポジティブ心理学を取り入れると以下のような効果があると言っています。
- 子どものストレスが軽減された
- 成績が上がった
- 親子関係が改善された
- 親自身が幸せになった
ポジティブ心理学を学べる資格はいくつかありますが、特におすすめしたいのは、ヒューマンアカデミーのポジティブ心理学資格取得講座。「月々3,000円から」「オンラインで」学びをスタートさせることができます。ポジティブな人ほど幸せを感じることができるそうです。ポジティブ心理学を学んで、自己肯定感を上げていきましょう。
■「ほめ写」で子どもをたくさんほめる
「ほめ写」とは、子どもの写真を家のなかに飾り、写真を見ながら子どもをほめることで、子どもの自己肯定感を高めようという新しい子育て習慣。しかも、ほめ写でアップするのは子どもの自己肯定感だけではありません。発達心理学者の岩立京子氏(東京家政大学教授)が行なった調査では、「ほめ写を3週間実施した結果、親の自己肯定感も向上した」という結果が出ています。これは、ほめ写を通して子どもとのコミュニケーション量が増えることで、「私は子育てをしっかりできている」と感じやすくなるからなのだそう。
また、ほめ写プロジェクトリーダーを務める教育評論家の親野智可等氏によると、飾る写真は、「家族みんなに囲まれて、にっこり笑顔の写真」や「きょうだいで仲良く一緒に遊んでいる写真」がよいとのこと。「おじいちゃん、〇〇君に会えて嬉しそうだったね」「〇〇君がいてくれて、ママはとっても幸せよ」などと、写真を見ながらほめられることで、子どもは「自分はみんなに愛されているんだ」という気持ちになり、自己肯定感がアップするのです。
親野氏は、飾る写真について、「スタジオや出張撮影など、プロに撮ってもらった写真で、家族の記念や思い出を共有するのもよい」と話しています。プロのカメラマンが撮影してくれる「Famm無料キッズ撮影会」などを利用するのもおすすめです。家中に写真を飾って、一日に何度もお子さまをほめてください。そして、親自身の自己肯定感をアップさせていきましょう。
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子どもの自己肯定感を高められるのは親だけです。わが子に初めて会った瞬間、「ああ、かわいい! 生まれてきてくれてよかった」と思いましたよね。そこに存在してくれているだけで、愛おしくて愛おしくて仕方なかったはずです。
そんなお子さまが、「自分は大切な人間だ」「自分には生きている価値がある」と感じられるような声かけを、親はしていかなければなりません。そして、親自身の自己肯定感も上げていきたいですね。
(参考)
古荘純一(2019),『「いい親」をやめるとラクになる』, 青春出版社.
古荘純一(2019),『自己肯定感で子どもが伸びる』, ダイヤモンド社.
明橋大二 著, 太田知子 イラスト(2010),『子育てハッピーアドバイス 大好き!が伝わる ほめ方・叱り方』, 1万年堂出版.
立命館産業社会論集|私の心理臨床実践と「自己肯定感」
内閣府|我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度)
朝日新聞EduA|親だからできる!子どもの自己肯定感を高める秘訣とは?
親力|やる気のスイッチが入る人と入らない人、その差はどこに?
GLOBE+|子どもの自己肯定感があまりに低い日本へ、アグネスのアドバイスは
川崎市|Ⅲ 自己肯定感の高低からみた子どもの特徴と相談・救済活動
All About|子どもの自己肯定感が低いのは親のせい?NG言動5つと高める子育て
一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会|親の自己肯定感の低さが、子どもへの過度の期待を引き起こす
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの人生を充実させる前向き思考の「自己肯定感」――体験によって養う「自信」と「立ち上がる力」
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