子どもが描く絵は、乗り物よりも人間の方が大きかったり、蝶々よりも家が小さかったりして純粋で可愛らしい印象です。この子どもらしさあふれる表現方法は、見た人を笑顔にさせる力がありますよね。
子どもたちの絵は成長とともに少しずつ変化していきますが、絵の印象が大きく変わるポイントには、「遠近法」という技法が関係しています。
小学生くらいから、遠くのものは小さく、近くのものは大きく描ける子が増えてきますよね。そして、そんな「遠近感のある絵」は、なんだか上手に見えるのではないでしょうか? 我が子にも早くそんな絵が描けるようになってほしい……と考える親御さまは少なくないかもしれません。
そこで今回は、「遠近法」と「観察力」について、お伝えしたいと思います。
空と地面の間にある「ナゾの空間」の正体は!?
「遠近法」は平面の紙の中で奥行を表現する技法です。遠くの物は小さいく見えて、近くの物は大きく見えるという自然のルールがあります。
そんな遠近法のポイントとなるのは「空」と「地面」の描き方。
幼稚園や小学校低学年の子どもたちの絵に見られる特徴として、画用紙の上部に空があって下部に地面があって……なぜか、その空と地面の間に何もない「ナゾの空間」があります。
このナゾの空間――それは子どもたちにとっては空気であり「何もない」という表現方法です。そのときに描かれている物は重なりあうことがありません。つまり空間的な認識がないのです。ですから、これらの絵には、奥行きがありません。
ですが、小学校3、4年生くらいになってくると、空と地面の間にあった「何もない」空間はなくなり、空と地面がくっついた描写をします。
地面の上に人や物が描かれてくるような絵ですね。このあたりで初めて空間認識ができるようになり、「遠くの物は小さく、近くの物は大きい」という遠近法が理解できるようになります。
遠近法を学ぶうえでの一番のポイントは、まず子ども自身が奥行に興味を持つことです。これは絵の技法に限ったことではありませんが、子どもがまだ興味すら持っていないのに、親が先回りして無理に教えたり、この時期よりも早く描かせたりすることはあまりおすすめできません。
遠近法を用いた表現を子どもが真似したがるまでじっくり待ちましょう。それまでは、ぜひ、そのときにしか描けない平面的な表現を一緒に楽しんでください。
遠近法をしっかり理解するには時間がかかる
そして、子どもが空間認識を理解し始めると、絵の描き方について悩むことが多くなってきます。
山の向こうから川が流れてくる様子を描きたい、立体的なお家が描きたい、こっちにボールが飛んできているところを描きたい、駅のホームにたくさん電車が停まっている様子を描きたい――。子どもたちは試行錯誤をしながら、イメージした物を描写しようとするでしょう。
本人的には、「思ったように絵が描けない!」ということが増えるかもしれません。しかし、遠近法をしっかり理解していく過程の子どもたちの表現は、とてもおもしろく、それらは子どもたちが大きく成長した後は見られない表現ばかりです。
例えば、滝のように見えるものが実は川だったり、ジュースの缶の上の部分と底の部分が両方とも描かれていて、缶が潰れているように見えたりします。大人から見て間違った描き方に見える表現は、ウラをかえすと、子どもが自分で考えて描いてみた表現です。そして、自分で新しい表現を取り入れてみるような子は、「あれ、何かが違う!?」と思ったときに違和感を感じます。そして、周りの人に描き方を聞いたりするでしょう。その試行錯誤を繰り返しながら、遠近法を理解していくのです。
遠近法を意識し始めてからしっかりと理解するまでの数ヶ月間の作品は、時間がたってから見返してみると感慨深いものがありますよ。平面的な絵とともに、大事にとっておくことをおすすめします。
「五感」を使って観察する力を磨こう!
子どもが観察してものを描くことができるのは、小学校3年生くらいからと言われています。それは、小さい子どもたちは目で見て絵を描いておらず、感じたものを表現しているからだと言われています。実際に、視力の弱い子(弱視)と視力が良い子の観察画はほとんど同じという実験結果もあるのです。
小さい子どもが観察画をする場合は、描写力よりも、「五感を使って観察する力を磨く」ことをテーマにすることをお勧めします。簡単にやり方をご説明しましょう。
<草花を描く>
- あらゆる角度から観察してみる(上から、横から、近くから、ちょっと離れたところから)
- 花や葉っぱのにおいを嗅いでみる
- 花びらや葉っぱ、茎を実際に触ってみる
- 花や葉っぱ、茎について、気がついたことを話す
茎にある産毛を発見したり、葉っぱのギザギザに気がついたり――。子どもたちの観察眼の鋭さに、親御さまはびっくりするでしょうね。このとき、子どもの発見をたくさん褒めてあげてください。そうすることで、子どもはもっと注意深く観察するはずですよ。
そしてじっくり観察したら、さあ、絵を描いてみましょう! 子どもたちは、自分が見つけた大きな(小さな?)発見を、画用紙いっぱいに描いてくれるでしょう。果物を描く場合は「どんな味がするのか」想像してもらったり、実際に食べて「味わって」から描いてみてもおもしろいですね。
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五感をたくさん刺激してあげることで、観察力だけでなく、その子の感性をぐんぐん伸ばすことになります。子どもたちには、見て、触って、匂いを嗅いで、食べて、ときには音を聴いて、いろいろなことを感じ取ってほしいものです。
■芸術による教育の会ホームページ
「芸術による教育の会」は、5つの事業と60年以上の実績をもとに、美術を通して子どもたちの成長に寄り添います。東京、神奈川、埼玉、千葉、インターネット上に約100教室の美術教室を運営。在籍生徒数約3800人。
「世界の子どもたちとアートを通してつながりたい!」を将来のビジョンとし、言葉の壁をアートで乗り越えた未来を目指しています。
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「びじゅつでつながろう どこでもアートきっず」
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