「脱・ありきたり」で作文に余韻を残す
前回(第9回)お届けした「“書き出しのパターン”12選」では、「書き出し」に工夫を凝らすだけで、ひと味違った作文になることに気づいてもらえたのではないでしょうか。
さて、連載最終回となる今回は、作文の「締めくくり」のパターンを紹介します。多くの子どもが「書き出し」同様、「締めくくり」にも、工夫を凝らしていません。いえ、そもそも、子どもは、「締めくくり」の重要性に気づいていません。書くことに精一杯という子どももいるでしょう。
しかし、作文の「締めくくり」は、単に「文章の終わり」ではありません。読む人の読後感(余韻)を左右する極めて重要なパートです。多種多様な「締めくくり」を子どもの目に触れさせて、その重要性や魅力に気づかせてあげることは、お父さんお母さんの役目ともいえます。もちろん、本記事でも、多種多様な「締めくくり」の例を紹介していきます。ぜひお子さんと一緒に読み上げるなどしてみてください。
【「平凡な締めくくり」の例】
お題:遠足
平凡な締めくくり:とても楽しい1日でした。
平凡な締めくくり:またいつかあそびに行きたいと思います。
お題:お母さん
平凡な締めくくり:というわけで、わたしのお母さんは、とてもやさしいです。
平凡な締めくくり:しょうらい、わたしもママのようになりたいです。
お題:好きな食べ物
平凡な締めくくり:これからもオムライスをたくさん食べたいです。
平凡な締めくくり:やっぱりわたしはオムライスが好きです。
お題:学校
平凡な締めくくり:だから、ぼくはこのがっこうが大好きです。
平凡な締めくくり:これからも、お友だちといっしょに、たくさんあそびたいです。
お題:読書感想文
平凡な締めくくり:もういちどよみたいと思います。
平凡な締めくくり:友だちにも、おすすめしたいです。
「平凡な締めくくり」と書きましたが、決してこれらの締めくくりがいけないわけではありません。いずれも作文をていねいに終わらせています。そもそも「締めくくり」の良し悪しは、作文の内容との関係性によって決まるものなので、「締めくくり」の例だけをお見せして「平凡」といってしまうのは乱暴でもあります(全文をお見せできずすみません!)。
とはいえ、上記の例文が、平凡な雰囲気を漂わせる「締めくくり」であることには多くの方が同意するのではないでしょうか。読みやすく理解しやすい作文かもしれませんが、“その子らしさ”が光っている印象を受けません。
作文の「締めくくり」に使えるパターン22選
では、「平凡」とは一線を画す「締めくくり」のパターンを紹介しましょう。
【1】「自分が叫んで」締める
ぼくはさいごに、こうさけびたいです。
「くそー、次のしあいでは、かならずオレが得点を決めてやる!」
はずかしいけど、もう一度言わせて。
「だれか〜、わたしのことを助けに来て〜!」
【2】「誰かの言葉」で締める
コーチがわたしのかたをたたいて言いました。
「よくがんばったな」
コウタくんが目をキラキラさせてぼくに言ったのです。
「オレにまかせておけ!」
【3】「ため息」で締める
やれやれ、じごくのような1日が、ようやくおわりました。
ふ〜う、校門を出たら、どっとつかれました。
【4】「自分をホメて」締める
あれっ、わたしって、もしかしたら天才かも?
自分で自分にハナマルをつけてあげたいと思います!
【5】「反省して」締める
もう、二度とウソはつきません。
はい、そうじはサボらないと、ここで約束します。
【6】「決意」で締める
よし、あしたから早おきして、ランニングをするぞ。
次のテストでは、ぜったいに100点をとってやる!
【7】「質問・疑問」で締める
わたしのこの考え方が、まちがっているのだろうか?
先生、くやしいときに泣くことって、いけないのでしょうか?
【8】「余韻を残して」締める
たぶん、きのうよりは、かしこくなっているはずだが……。
さてさて、明日の本番はどうなることやら……。
【9】「ギャグ」で締める
引っこしたら、次こそ、小さくてかわいい犬をかいたいワン。
オレも男だ。ゾウのように大きな心をもてるよう、がんばるゾウ。
【10】「嘆き」で締める
真冬のマラソン大会だけは、かんべんしてほしい。
さんすうのしゅくだいは、もうコリゴリだ。
【11】「キーワード+感嘆符」で締める
やき肉たべほうだい、バンザイ!
大谷せんしゅ、さいこう!
【12】「自分ツッコミ」で締める
あしたのきゅうしょくのメニューはこれで決まり。って、わたしはシェフか!
それでは、おにゃさす! って、ぼくはカジサックか!
【13】「シーン」で締める
ふりかえると、ピューっと強い風がふいて、だれものっていないブランコがユラユラとゆれていました。
声がするほうにかおを向けると、ずっと遠くのほうで、お姉ちゃんが手をふっているのが見えました。
【14】「たとえ」で締める
大きなタワーが、まるでエンピツのように見えました。
それはまるで、でっかいたいようが、空いちめんに、オレンジ色の絵の具をまきちらしたかのようでした。
【15】「ことわざ」で締める
こういうのを「たなからぼたもち」というのでしょうか。
ああ、これが「月とスッポン」ってやつか。
【16】「『もしかしたら』や『ひょっとしたら』」で締める
もしかしたら、正しいのは、ぼくではなく、弟のほうだったのかもしれない。
ひょっとしたら、しょうらい、彼は、そうりだいじんになっているかもしれないぞ。
【17】「なぜなら」で締める
なぜなら、私は学級いいんちょうだからです。
なぜなら、しょうらいぼくは、うちゅうひこうしになるからです。
【18】「けっきょく」で締める
けっきょく、ぼくらの作った作品は、選ばれませんでした。
けっきょく、わたしの願いはかないませんでした。
【19】「つまり」で締める
つまり、ぼくらは負けたのだ。
つまり、わたしたちは、生かされている、ということです。
【20】「だから」で締める
だから、歯いしゃさんはキライです。
だから、ぼくは日記を書き続けているのです。
【21】「そう」で締める
そう、これがわたしの正体なのだ。
そう、ぼくこそが、ヒーローになりそこねたザンネンなやつなのだ。
【22】「慌てて」締める
あっ、ママがかえってきた。作文はここまで。
しまった、もう書くスペースがない。おわらせてもらう。
文章の「書き出し」同様に、「締めくくり」にも、さまざまなパターンがあります。最後の「『慌てて』締める」などは、少しズルい終わり方のようにも感じます。しかし、10歳未満の子どもにしてはウィットに富んでいると思いませんか? 注意するどころか、おもいきりホメてあげたい「締めくくり」です。
もちろん、「締めくくり」のバリエーションは、子ども自身が、さまざまな「締めくくり」に出合いながら、少しずつ増やしていくものです。個性的な「締めくくり」や魅力的な「締めくくり」を目にしたら、どんどん取り入れてマネするよう伝えてあげてください。一度使った「締めくくり」は、子ども自身の“引き出し”になるはずです。その“引き出し”は、その後も長きに渡って、その子の作文を手助けしてくれることでしょう。
人と違う「締めくくり」をホメよう
作文の「締めくくり」には、漫才や落語でいうところの「オチ」の役割もあります。不思議なもので、中身がやや平凡でも、「締めくくり」がうまかったり、個性的だったり、気が利いていたり、目を引いたりすると、作文全体の印象がよくなるものなのです。
もちろん、一発で会心の「締めくくり」を書くのは、大人でも簡単にできることではありません。「書き出し」と同じく、書いた文章を読み返すときに、再検討するクセをつけましょう。「平凡な締めくくりはイヤだなあ」。子ども自身にそういう気持ちが芽生えたとき、その子の作文能力は、急激に伸びていくはずです。
たくさんのパターンで「締めくくり」を書いていくうちに、自分の得意な「締めくくり」を手にする、あるいは、作文のテーマや内容、文体の硬軟などによって、最適な「締めくくり」を選べるようにもなるでしょう。お友だちと違う「締めくくり」は、その子にとっての宝物です。親御さんは、その宝物こそを大事にしてあげてください。