こんにちは。日本こども音楽教育協会 代表理事の滝澤香織です。
すでにお子さまにピアノを習わせている親御さまの中には、「なかなか思っていたように〇〇してくれない」といった不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
「なかなか練習に励んでくれない……」
「なかなか集中力が続かない……」
「なかなか楽しんでピアノを弾いてくれない……」
今回は、親御さまからよくご相談いただくお悩みについて、それを解決するためのアドバイスをさせていただきます。
練習の “リズム” の作り方
お子さまにピアノを習わせている親御さまから最も多くご相談いただくのは、やはり「練習」についてのお悩みです。「なかなかピアノに打ち込んでくれない……」「長い時間は練習できない……」などなど。特に、ピアノを習わせたての時期には、こういった悩みには誰もが少なからず直面するはずです。
ピアノはどうしても “ご自宅での練習” が必要な習い事。「練習」についての悩みが生まれるのは必然ともいえるでしょう。でも考え方を変えれば、小さなうちから “継続的な努力を重ねる経験” をさせてあげられる、たいへん意義深い習い事なのです。現に、ピアノに熱心に取り組める子は、学校の勉強などでも同じように、こつこつと努力を重ねられるようです。
そこで、大切にしたいのが「リズムの作り方」です。ポイントは2つあります。
1つめは “1日の中でいつ練習するのか、時間を決める” こと。朝に登園・登校の用意ができて家を出るまでの時間帯、幼稚園・学校から帰ってきたらすぐ、おやつを食べ終わったら、夜ご飯を食べ終えたら……。1日の中で決まった時間にピアノの練習へ誘導すると、それが子どもの中での生活リズムになっていきます。ご飯を食べたら歯磨きをするのと同じような生活リズムを作ってあげると、のちのち、子どもひとりで練習する環境もつくりやすくなりますよ。
そしてこのときは、前回のコラム「「練習しなさい」は逆効果。子どもに寄り添った “優しい気持ち” を伝えよう。」でも説明した通り、「練習しなさい」ではなく「一緒に練習しよう」という言葉がけをするのがポイントです。練習するのが親にとっても楽しみであることが伝わる話し方をすると、子どもの気持ちものりやすくなりますよ。
2つめは、“練習時間の長さの設定” です。「なかなか練習してくれない……」という悩みも非常によく聞きますが、練習時間を楽しいものにするためには、子どもの「集中力持続時間」を先に考慮する必要があります。子どもたちの集中力は、大人よりも長くは続きません。それを考えずに長時間練習に取り組ませようと思っても、子どもにとってはただの苦痛な時間になってしまうおそれがあります。
1回の練習のおすすめ時間は、10~15分程度。これよりも長く取り組ませたい場合は、10分を複数セットこなすなど、時間を分けるようにしましょう。よく「レッスン前日に特訓しました!」など、1週間分を一度にまとめて練習させるケースも見受けられますが、ピアノの練習のリズム作りは、ゆくゆくは学校の勉強のリズム作りにもつながっていきます。少しずつでもよいので、ぜひ毎日の習慣にしましょう。
自立の理想は “目をかけて、手はかけない”
そうやって、毎日の練習が徐々に習慣化してきたら、今度は自分ひとりで練習するように誘導していくステップです。では、どうしたらひとりで練習できるようになるのでしょうか。そのキーワードは「目をかけて、手はかけない」です。
お子さまが幼稚園児であれば、まだ種を蒔いて水を与えてあげる時期です。練習に対する考え方を、親御さまのほうから教えてあげましょう。そして小学生になりピアノの練習にも慣れてきたら、自分で考える力を少しずつ育てていきます。次の新しい曲はどんな練習スケジュールで取り組んでいくのか、具体的な練習メニューはどうするのか、練習時間はいつにするのかなど、お子さまと一緒に考え、ぜひお子さま自身の考えを引き出してあげてください。
自分ひとりで練習に取り組んでいくために大切なことは、“自分の力で考えられるかどうか” です。そしてそれは、親御さまの「いつも見ているよ。応援しているよ」という気持ちが伝わるかどうかにかかっているのです。
他人とは比べない。“過去からの成長” を喜びに
ピアノは個々で習うもの。だからこそ、同年代のほかの子どもたちがどのような進度でお稽古を受けているのか、気になってしまうかもしれません。
しかし、子どもたちの成長には必ず個人差があり、伸びる時期もそれぞれ違います。他人との比較ではなく、一昨年、昨年からの子どもの成長に注目してあげましょう。「いつもなによりも、あなたの成長を一番の楽しみに考えているよ」という親御さまの愛情をお子さまに伝えることが、お子さまの自己肯定感を育むことにもつながっていきますよ。
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練習に関する悩みは誰もが直面するものです。ここでご紹介した方法を参考にしていただくのはもちろん、ご指導を受けている先生にもぜひご相談してみてくださいね。指導者の最大の喜びは、お預かりしているお子さまの成長をお手伝いすることですから。