教育を考える 2019.7.16

IQが高い子どもはすぐに諦める!? 社会的な成功に「非認知能力」が必須なワケ

IQが高い子どもはすぐに諦める!? 社会的な成功に「非認知能力」が必須なワケ

昨今、EQ(心の知能指数)やSQ(社会的指数)など、さまざまな能力について取りざたされていますよね。しかし、「やっぱり “頭の良さ” として馴染み深い、IQ(知能指数)が気になる」「子どもの将来のためにIQを高めてあげたい」と考えている親御さんも多いことでしょう。

そこで今回は、「IQが高い子どもの特徴」や、「子どもの社会的な成功とIQとの関係」についてご紹介します。

そもそもIQって何?

そもそもIQとは、「人間が知能を使って物事を処理する能力を表す数値」のこと。知能検査によって測定された精神年齢を実年齢で割り、100倍にした数値です。85~115が平均といわれています。日本でトップクラスの学力を誇る東大生のIQは、平均120ともいわれていますが、IQが高いからといって、必ずしも学力が高いとは限りません。また、IQの高さは遺伝や環境の影響も大きいといわれています。

慶應義塾大学(行動遺伝学)の安藤寿康教授いわく、IQはおよそ5割が遺伝の影響を受け、残りの5割のうち3割は家庭環境が影響するのだそう。安藤教授は、親からどんな遺伝子を受け継いだとしても、学習をすれば必ず能力は伸びるといいます。

社会的な成功に「非認知能力」が必須なワケ2

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IQが高い子どもの特徴

IQが高い子どもには、どのような特徴があるのでしょうか? 詳しくみていきましょう。

頭が良くて賢い

IQの高い子どもは、頭が良くて賢いといわれています。勉強ができるという学習能力としての賢さだけでなく、大人びた物言いや考え方をするなど、精神的に賢い場合もあるのが特徴です。IQの高さについて、医学博士の青木聡氏は次のように述べています。

IQテストにおける「正答率の低い問題」とは、共通ルール(共通点)を見つけるのが難しい問題のことです。つまり、テストの結果がいい人(IQが高い人)は、「共通点を見つける能力」に優れていることになります。(中略)「共通点を見つける能力」とは、簡単に言うとパターン認識能力のことです。たとえば、友だちの妹とすれ違ったときに、「あ、似ている」と、友だちの顔が脳裏に浮かぶことがあるかと思います。どこか似ていると感じるのは、共通する特徴(共通点)を無意識に読みとっているからです。

(引用元:ダイヤモンド・オンライン|「考える」「悩む」「時間がかかる」問題に対して、IQの高い天才はなぜ迷わず瞬時に答えを出せるのか?

IQが高い子どもの賢さには、パターン認識能力によって物事の共通点を読み取っていることが影響しているといえるでしょう。

言葉を覚えるのが早い

IQの高い子どもは、会話や字の読み書きができるようになるのが、ほかの子どもに比べて早いといわれています。小児精神科医のクラウディア・ヤンケッチ氏いわく、IQの高い子どもは、脳の柔軟性が高く、ふたつの脳半球(中脳と大脳半球)を結ぶ間脳が発達しているのだそう。そのため、脳を最大限に利用することができるのだといいます。IQの高さには脳の発達も関係しているようです。

困難を乗り越える力が弱い

IQの高い子どもは、賢さが目立つ反面、苦手な分野に対して向き合う力が弱い場合があります。前出のクラウディア氏いわく、IQの高い子どもは、完璧主義であるせいで、間違えることよりも諦めることを選択してしまうのだそう。そのため、困難に直面したらすぐに諦めてしまう傾向にあると言います。

IQの高い子どもには、失敗は成功の源だということをしっかりと伝えてあげるべきですね。

社会的な成功に「非認知能力」が必須なワケ3

IQが高いと社会的に成功する?

IQの高い子どもは学習能力が高いケースもよくみられるため、「IQが高ければ社会的に成功できるのでは?」と考える人も少なくありません。しかし、それは間違いです。

東京大学名誉教授で白梅学園大学学長、日本保育学会会長の汐見稔幸氏は、次のように述べています。

私たちは「文字が読める、うまくブロックを積み上げられる、三角形と四角形と五角形を区別できる」といった、目に見えて知的に賢くなったと感じる認知的な能力を重視しがちです。
しかし、幼児期に認知的な能力を高めることが、その後の人生の成功や安定につながっているのか、いろいろ調べた結果、あまり関係がないことがわかってきました。

大事なことは、うまくいかないときに諦めず「どうしてかな」「こうやってみよう」「これがだめなら、ああやってみよう」など、あくまで目標の達成まで頑張る姿勢を身につけることです。我慢できること、感情をコントロールする力なども大事です。

(引用元:すくコム NHKエデュケーショナル|世界で注目される非認知的能力って?

IQなどで測ることのできる能力は、「認知的能力」と呼ぶのだそう。一方で、引用内で述べられているような「目標に向かって頑張る」「我慢する」「感情をコントロールする」などの能力は「非認知的能力」と呼ばれています。AI技術が発達し、グローバル化が進みゆく昨今。先の見えない社会を生き抜いていかなければならない子どもたちが伸ばすべきなのは、「やり抜く力」「自制心」といった「非認知的能力」ではないでしょうか。

***
子どものIQが高いと、つい「頭が良いなら、将来レベルの高い大学にいけるかも?」「エリートになれるかも?」と期待してしまうこともあるかもしれません。しかし、育児や教育においては、IQや学校の成績といった目に見えるものばかりを気にするのではなく、「この先、子どもが生きていくために必要な力は何なのか」という目線を持つことが重要ですね。

文/田口 るい

(参考)
こどもまなび☆ラボ|感情を書き出すとEQが伸びる! IQよりも大切な「心の知能指数」を高めよう
こどもまなび☆ラボ|「SQ」って知ってる? 今を生きる子どもたちに「社会的指数」が重要なワケ
進路のミカタ|ずば抜けたIQの天才児!? クラスにもいるかもしれない「ギフテッド」ってどんな人?
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すくコム NHKエデュケーショナル|世界で注目される非認知的能力って?
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