からだを動かす/スイミング 2018.7.20

「泳げないとかわいそう」って本当? 小学3年生で泳げない子の割合が急に減少する理由

編集部
「泳げないとかわいそう」って本当? 小学3年生で泳げない子の割合が急に減少する理由

スイミングが子どもの習い事で高い人気をキープする理由のひとつに、「小学校へ入学してからプールの授業で泳げないとかわいそうだから」という、我が子を心配に思う親心があるようです。

日本トイザらスの調査によれば、小学校入学前に泳げるようになった割合は、親世代が29.6%に対して、今の子どもは56.1%なのだそう。早めに水泳対策をしている家庭が多いことを裏付けています。

でも実際のところ、小学生ってどれくらい泳げるのでしょうか。また、泳げない子はいないのでしょうか。

今回は、小学校体育の「プール」の授業では、どのような内容で指導しているのかを解説します

小学1年生で泳げない子は7割弱

まずは、小学生で泳げない子がどのくらいいるのか調べてみました。ベネッセ教育情報サイトが2013年5月に小学生の保護者1,346人へ行なったアンケート調査によると、5m未満しか泳げない子は小学1年生で33.8%、2年生で36.6%という結果が出ています(図1)。

お子さまは何メートルくらい泳げますか?
図1 お子さまは何メートルくらい泳げますか?(学年別)

アンケート期間:2013/05/22~2013/05/28 回答者数:1346名
アンケート対象:小学生の保護者
※百分比(%)は小数点第2位を四捨五入して表示した。四捨五入の結果、各々の項目の数値の和が100%とならない場合がある

(引用元:ベネッセ教育情報サイト|水泳の授業が楽しみ! けれど気配りしてあげたい、こんなこと

しかし、小学3年生になると5m未満の子どもは17.6%に急減し、小学4年生以降では10%以下となります。また、小学6年生になると半数以上が50m以上泳げるようになっていることが分かります。

どうやら、小学校の低学年のうちはそれほど泳げなくても目立つことはなさそうですが、小学3年生になると泳げる子が増えてきて、子ども自身が泳げないことが体育のプールの時間を苦手に思う一因となる可能性がうかがえます。

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低学年は「水遊び」、中学年は「浮く・泳ぐ運動」、高学年は「水泳」

では、どうして小学3年生の時点で泳げない子の割合が急に減少するのでしょうか。それには、体育の授業での教え方が関係しているようです。小学校学習指導要領解説から体育のプールの授業に関する領域構成を確認してみます。

エ 水泳系
水泳系の領域として、低学年を「水遊び」、中学年を「浮く・泳ぐ運動」、高学年を「水泳」で構成している。
(中略)
水遊び及び浮く・泳ぐ運動の学習指導では、仲間との競争やいろいろな課題に取り組むことで学習を進めながら、水に慣れ親しむことや浮いたり泳いだりすることの楽しさや心地よさを味わうことができるようにすることが大切である。そうした指導を通して、技能面では、水にもぐることや浮くこと、泳ぐための手や足の動きを身に付けることが重要な課題となる。
水泳は、「クロール」、「平泳ぎ」で内容を構成している。

このように、小学校低学年のうちは泳げない子がほとんどいるという前提で授業は組み立てられます。幼いころからスイミングスクールへ通って泳げる子どももいますが、プールに顔を付けるどころか顔に水がかかるのも怖がる子ども一緒に指導するため、最初は水に慣れる、水で遊ぶことから始まります。

そして、学年が上がるとともにクロールや平泳ぎの泳法を身に付けられるように構成されていることから、アンケート結果のように、半数以上の子どもが50mを泳げるようになっていくのです。

泳げない子の割合が小3で急減する理由2

子どもはどうしてプールが怖いのか?

家のお風呂と違い、冷たい水が張ってある大きくて深いプールに対して、子どもは恐怖心を持つそうです。それに、地域によっては「地獄シャワー」と呼ばれる、かなり冷たい水のシャワーも、プールが苦手となる一因でしょう。スイミングに通っていない子どもであれば、「プールが怖い!」と思ってしまうのもしかたのないことかもしれません。

しかし、お友だちが楽しそうに遊んでいる姿を見たり、気温が上がってきて水温も高くなってくると、プールの授業を楽しめるようになる子が多いそうですよ。

また目に水が入ることを嫌がる子どもも多いと思います。そんなときはゴーグルを使ってみてください。水の中でも視界がクリアになり、目も痛くないので、ゴーグルをつけるだけで、水に潜ることができるようになる子が多いのだとか。ただし、ゴーグルの着用については学校によっても判断が違いますので、担任の先生に相談してみましょう。

また、体調管理も気に掛けてあげてください。水遊びとはいえ、水の中では意外に体力を消耗します。水に慣れさせなければと少しの体調不良を見逃して授業に参加させることは望ましくありません。風邪が治ったばかり、下痢気味といった少しの体調不良はもちろん、虫刺されの掻きこわしや転んだ擦り傷で肌がジクジクしているときも感染症を予防するためプールには入れないようにします。

小学校へ入学する時点では泳げなくても体育の授業で困ることはありませんから、泳げないことを心配する必要はなさそうです。まずは水の中で怖い思いやつらい思いをしないよう、プールの授業が楽しいと思えるように配慮してあげましょう。

***
小学校によっては、3年生ごろになると夏休みに水泳教室を実施するところもあります。15mや25mなど規定の距離まで泳げない子を対象に、学校の先生やボランティア指導員などから指導を受けます。こうした補習があるかどうか、小学校に確認しておくのも良いですね。

(参考)
時事ドットコムニュース|水遊びの季節到来!「夏の水遊びに関する意識調査」結果発表【新事実発覚】小学校入学までに泳げるようになる子供、昔と比べるとなんと約2倍に!さらに、20歳以上の日本人の6人に1人が泳ぐことができない。
ベネッセ教育情報サイト|水泳の授業が楽しみ! けれど気配りしてあげたい、こんなこと
ママノート|連載「現役先生に聞く、学校ってこんなところ!」第5回 1年生のプール授業は、水遊びで水に慣れることが中心です