教育を考える/体験 2019.8.1

文化施設に行くと学力が上がる!「博物館・科学館」での調べ学習を成功させる秘訣【小学生の自由研究】

編集部
文化施設に行くと学力が上がる!「博物館・科学館」での調べ学習を成功させる秘訣【小学生の自由研究】

いま、博物館や科学館が改めて注目を集めていることをご存じですか? 話題の展示にたくさんの人が詰めかけて長い列ができている光景は、ここ数年、テレビ番組でもよく見かけるようになりました。夏休み中の博物館や科学館は、子ども向けの特別企画が催されていることが多いので、自由研究のテーマに迷っている方にもおすすめのスポットです。

今回は、博物館や科学館が注目されている理由や、実際に訪れるときに必要な準備自由研究のまとめ方についてご紹介しましょう。この夏は、お子さんと一緒に博物館や科学館で楽しく学べる自由研究に取り組んでみませんか?

博物館は子どもの興味を掘り下げるきっかけになる

かつて「学校の社会見学で訪れるところ」といったイメージの強かった博物館は、いまや幅広い年代がこぞって楽しむお出かけスポットとなりました。

博物館や科学館が注目されるようになった背景には、スタンダードな総合博物館が特別企画展示に力を入れていることや、鉄道・宇宙・恐竜・おもちゃ・アニメ・ラーメンといった子どもにも親しみのあるジャンルに特化した専門博物館が増えていることなどが挙げられます。また、最近では、展示されているものも、古い資料や模型のみならず、動画やバーチャル体験なども充実してきています。知識を深めるためのアプローチが多彩な点も、人気の理由のひとつだと言えるでしょう。

平成29年度に実施された学力調査の結果と、その対象となった小学6年生および中学3年生の子どもたちの保護者に対する調査の結果を関連づける調査報告書によると、親が子どもを、美術館・博物館・科学館・劇場・図書館といった文化施設に連れて行っている場合ほど、子どもの学力が高いという結果が出ているのだそう。MP人間科学研究所代表であり心理学博士の榎本博明氏は、この結果について、小さい頃から親に連れられて文化施設に出かけることで知的好奇心が刺激され、のちの学習意欲につながるからだと推測しています。

特に博物館や科学館は、興味をもったテーマについて深く知識を掘り下げることができるので、子どもの興味を掘り下げる良いきっかけになります。夏休みの自由研究で取り上げる題材としてもぴったりですよね。自由研究を、博物館や科学館に通う入り口にしてみてはいかがでしょうか。

「博物館・科学館」での調べ学習を成功させる秘訣【小学生の自由研究】2

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博物館や科学館へ行く自由研究は「準備」がキモ

実際に、博物館や科学館をテーマにした自由研究を進めるには、大まかな手順として準備・見学・まとめの3つに分けられます。そして、この3つの中で自由研究の出来栄えを最も大きく左右するのが「準備」です。見学するまでの流れについて例をご紹介しましょう。

●テーマを決める

どんなテーマについて調べるか、親子で話し合います。博物館や科学館によって、取り扱っているテーマはさまざまです。日本博物館協会のサイトでは、加盟している施設を分類や地域で検索できるようになっています。日本博物館協会のサイトはこちら

サイト内の博物館の分類を見ると「総合・郷土・美術・歴史・自然史・理工・動物園・水族館・植物園・動水植」と、とても幅広いことがわかります。ここでお気づきになったかもしれませんが、じつは動物園や水族館も博物館の仲間です。まずはお子さんが「何が好きか」「どんなことを知りたいか」を聞いてテーマを絞りましょう。お住まいの地域によっては、希望のテーマを取り扱う施設が近くにない場合もありますので、第3希望くらいまでリストアップするのがよさそうですね。

●見学する博物館・科学館を決める

テーマが決まったら、行き先を決めます。たとえば「動物」をテーマに調べるなら、「太古の昔に生きていた動物」か、「絶滅しそうな動物」か、はたまた「動物の育て方」かによって、博物館か動物園か、適した行き先が異なりますよね。テーマと行き先がマッチするよう、情報を収集しましょう。また、夏休みの旅行を計画している場合は、旅先で見学できそうか考えてみるのもいいですね。

●行き先の下調べをする

見学先が決まったら、下調べをします。どんな展示があるのかだけでなく、開館時間入館料施設までのアクセス方法などもお子さんと一緒に調べることで、学びが広がりますよ。

●知りたいこと、聞いてみたいことをまとめる

たとえば、先ほどの「動物」がテーマであれば「どんな一生を送るのか」「仲間の動物にはどんな種類があるか」「どのあたりに生息しているのか」など、知りたいことをノートにリストアップしていきます。大まかにまとめてあるだけでも、目的をもった見学をすることができて効率的です。

上野動物園教育普及係の井内岳志さんは、動物の体の部分の「細かな特徴を見比べる」ことを提案しています。動物の「目の位置」や「足の形」などです。

目は動物によってついている場所が違います。草食の動物の目がついている場所は、頭の横のほう。(中略)逆に、肉食の動物の目は前の方についています。

(中略)指が何本あるかなど、足の形もさまざまです。馬は1本指、ウシやキリン、シカは2本指(さらに小さな2本の指をもつことも)、バクの後ろ足やサイは3本指です。鳥の場合は、前に向いている3本の指のほかに、後ろに向かって親指が1本ついているものがあります。

(引用元:Study Hackerこどもまなび☆ラボ|「夏休みの自由研究」は動物園で。上野動物園おすすめの“調べ学習”のテーマとポイント

また、井内さんによると、家であらかじめ親子で本や図鑑を読んでおくと、動物や動物園について興味が深まるそうです。そして、園内を回るときには小さな図鑑を持って歩くと、実際に動物を見ながらいろいろと考えることができるのですって。

「博物館・科学館」での調べ学習を成功させる秘訣【小学生の自由研究】3

博物館や科学館の見学で注意したいポイント

●当日の持ち物は早めに準備

行き先や日程が決まったら、下調べをしながら持ち物リストを作ります。特に必需品なのは、これらです。

  • 筆記用具、ノート
  • 飲み物
  • カメラ、ビデオカメラ(撮影が許可されている場合に限る)
  • 水分補給用の飲みもの

 
筆記用具は、ペンのインクやシャープペンシルの芯で展示物を汚さないよう鉛筆をもっていきましょう。ノートは下調べしたことや聞きたいことを先に書いておくと、現地でポイントを押さえながら見学できてスムーズです。

●写真は撮影できるかどうか常に確認する

写真撮影NGの会場が多いですが、最近は撮影OKのエリアやSNS用のフォトスペースなどを用意している会場も増えてきています。撮影可能なスペースを逃さないよう、写真が撮影できるかどうか常に確認しながら見学しましょう。また、撮影ができずレポートに貼れる写真がない場合には、会場で配られるパンフレットを切り貼りして活用するのもおすすめです。

●水分補給は入館するまえに済ませる

水分補給のための飲みものは、持参することをおすすめします。ただし、館内は飲食禁止というところがほとんどなので、入館前にしっかり水分補給しておきましょう。

●大人はあまり口出ししない

大人の視点から、つい「ほら、あれ見てごらん」「これも見ておくといいよ」と声をかけてしまいがち。しかし、「スーパー保育士」として子育てに関する研究・執筆・講演活動を行なっている原坂一郎氏は、ぐっと我慢することを勧めています。大人と子どもの視点は違いますし、子どもは子どもなりに関心を抱いたものを見て、感動や発見を覚えているのです。子どもがどんなことに興味をもって、何を見ているのかを優先してあげましょう。

「博物館・科学館」での調べ学習を成功させる秘訣【小学生の自由研究】4

見学してわかったことをまとめるときのポイント

博物館や科学館の見学内容は、次のようにまとめるとわかりやすくなります。

  • 調べようと思ったきっかけ
  • どんなテーマで見学したか
  • 見学する前の予想(テーマに対する仮説)
  • 博物館や科学館で調べて分かったこと
  • この研究をしてみた感想
  • 見学先の施設情報(名称、場所など)

 
特に「博物館や科学館で調べてわかったこと」は、メインの内容でボリュームが大きくなるので、まとめるのも大変です。お子さんが途中で飽きてしまわないよう、写真やパンフレットを使って見てきたものを振り返ってみるなどのサポートをしてあげましょう。

「自由研究がきっかけで博物館にハマった!」というお子さんは、「博物館の達人」を目指してみてはいかがでしょうか。全国の博物館を10回利用し、学んだことの記録と感想文を国立科学博物館へ提出すると、認定証をもらえる企画です。夏休みならではの楽しい思い出にもなりますね。「博物館の達人」について、詳しくはこちら

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博物館や科学館は、子どもの学びを深める最良の教材とも言えます。もし、アニメやマンガを調べたいとお子さんが言い出したとしても、「もっと研究にふさわしいものに」とテーマを変えさせないことが大切です。好きなことで調べ方を学ぶほうが意欲も高まりますし、仕上がりもきっと満足いくものになるでしょう。

(参考)
ベネッセ教育情報サイト|おもしろくて、ためになる! 博物館の歩き方【前編】見学編
ベネッセ教育情報サイト|おもしろくて、ためになる! 博物館の歩き方【後編】自由研究活用編
国立科学博物館|博物館の達人について
SHINGA FARM|4歳児から楽しめる! 子どもと国立科学博物館をまわる5つのポイント
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